「この薬とこの薬、どっちのほうが強いの?」
よくある質問ですが、意外とはっきりしてないことが多いです。
外用NSAIDsのコクランレビューがこちら。
Topical NSAIDs for acute musculoskeletal pain in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jun
成人の急性筋骨格痛に対する外用NSAIDsの有効性と安全性を検討したDB-RCTのメタ解析(61試験を解析、n=5311)
外用NSAIDs:ジクロフェナク、ケトプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン
剤形:ゲル、プラスター、クリームなど
50%以上の疼痛緩和のNNTは
ジクロフェナク | ゲル(Emulgel) | NNT1.8 (95% CI 1.5 to 2.1) |
ジクロフェナク | プラスター | NNT3.2 (2.6 to 4.2) |
ケトプロフェン | ゲル | NNT2.5 (2.0 to 3.4) |
イブプロフェン | ゲル | NNT 3.9 (2.7 to 6.7) |
他の局所NSAIDsはやや有効性が低く、NNT>4
その他の個々の比較、経口NSAIDsとの比較についてはデータ不十分。
貼付部位の皮膚反応は軽度かつ一過性で、プラセボと比べて差は無し
全身の副作用や、副作用による薬の中止はとても少なかった。
※プラスター(硬膏剤):パップ剤と違って水分を含まないので冷却効果が少ない(→急性の痛みは冷却効果があったほうが有効な気もします)
主に海外のデータだと思いますが、NNT<4のほとんどがゲル製剤です。
自分の使用経験では塗り薬よりも、貼り薬のほうが痛みが軽減される印象でした。一般的にも湿布のほうが良く効くという印象かと思いますが、ジクロフェナク製剤はゲル製剤のほうがNNTが低いという結果です。
外用NSAIDsの場合、吸収の度合いが薬効に大きく影響すると思います。日本の製剤で検討したら、どのような結果になるかはわかりませんが、やはり成分としてはジクロフェナクは効果が強いという認識で良さそうです。
このレビューは“急性”の痛みを対象としているので、慢性の痛みだとまた違った結果になる可能性もあります。
慢性の痛みについてはこちら
Topical NSAIDs for chronic musculoskeletal pain in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep
成人の慢性筋骨格痛に対する外用NSAIDsの有効性と安全性を検討したDB-RCTのメタ解析
n=7688 34RCT(vsプラセボ 22RCT)
剤形:ゲル、パッチ、クリーム、液剤など
プリマリアウトカム:clinical success(「50%疼痛緩和」or「グローバルアセスメントにおけるvery good,excellent」など)
<結果>
8~12週、変形性関節症に対する50%以上の疼痛緩和のNNT
ジクロフェナク液剤 | NNT6.4 |
ジクロフェナクゲル | NNT11 |
試験期間ごとの結果(%はclinical successの割合)
試験期間 | 参加者数 | 介入群(%) | プラセボ(%) | RR(95%CI) | NNT(95%CI) | |
---|---|---|---|---|---|---|
外用NSAIDs | 2~3週間 | 917 | 37% | 19% | 1.9(1.6 to 2.4) | 5.5 (4.2 to 8.1) |
外用NSAIDs | 4~6週間 | 810 | 42% | 24% | 1.7 (1.4 to 2.1) | 5.8 (4.2 to 9.1) |
外用NSAIDs | 8~12週間 | 2440 | 60% | 50% | 1.2 (1.1 to 1.3) | 10 (7.3 to 17) |
外用ジクロフェナク | 2~3週間 | 569 | 40% | 20% | 2.0 (1.5 to 2.6) | 5.0 (3.6 to 7.8) |
外用ジクロフェナク | 4~6週間 | 375 | 48% | 28% | 1.7 (1.3 to 2.2) | 5.2 (3.5 to 11) |
外用ジクロフェナク | 8~12週間 | 2440 | 60% | 50% | 1.2 (1.1 to 1.3) | 10 (7.3 to 17) |
手や膝の変形性関節症にジクロフェナクの液剤は経口NSAIDsと同等の効果、ただ他の慢性疼痛にはエビデンスがない。
軽度の皮膚症状の有害事象はあるが、経口NSAIDsのような胃腸障害は少ない。
肝心の各種薬剤のNNTの比較については記載がありませんでした。慢性の痛みに対しては、急性の痛みと比べて効果が薄いようです。試験期間が長いほど、プラセボとの効果の差が少ないのも印象的でした。
打撲などの急性期の筋骨格系の痛みには外用NSAIDsとくにジクロフェナク製剤は有用、ただし、慢性の痛みに対しては、それほど強い効果は期待できないかもしれないと考えさせられました。何年もNSAIDsの湿布や塗り薬を継続している方も多いですが、その効果は意外とプラセボと大差がないかもしれません。もちろん経口NSAIDsを漫然と長期投与するよりは、安全性の観点から外用NSAIDsのほうが優れていますし、外用薬で痛みが落ち着くのであれば有益だと思います。ただ、たいして効かないけど気休めで湿布をもらっている、という声もちらほら…。湿布薬を保険対象外とするのはどうかという意見も出ているようですが、このような有益でない漫然投与が問題視されているということではないでしょうか。