ピロリ菌の一次除菌でクラリスロマイシン(CAM)が用いられますが、用量は1日400mg、適宜増量で1日800mgまでとなっています。より確実に除菌するには800mgとすべきなのでしょうか??
ランサップの臨床成績(添付文書より)
レジメン | 胃潰瘍除菌率 | 十二指腸潰瘍除菌率 |
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LPZ30mg・AMPC750mg・CAM200mg/回 1日2回 | 87.5%(84/96) | 91.1%(82/90) |
LPZ30mg・AMPC750mg・CAM400mg/回 1日2回 | 89.2%(83/93) | 83.7%(82/98) |
ラベキュアの臨床成績(添付文書より)
レジメン | 胃潰瘍除菌率 | 十二指腸潰瘍除菌率 |
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RPZ10mg・AMPC750mg・CAM200mg/回 1日2回 | 87.7%(57/65) | 83.3%(45/54) |
RPZ10mg・AMPC750mg・CAM400mg/回 1日2回 | 89.7%(61/68) | 87.8%(36/41) |
上記のとおり、日本での臨床成績では、必ずしもCAM800mg/日投与のほうが除菌率が高いというわけではないようです(欧米ではCAM500mgより1000mgのほうが除菌率が優れているという報告もある)。
一方で、喫煙者に対しては800mg/日投与のほうが優れているというデータもあります。
A better cure rate with 800 mg than with 400 mg clarithromycin regimens in one-week triple therapy for Helicobacter pylori infection in cigarette-s... - PubMed - NCBI
PPI、AMPC、CAMの3剤療法におけるCAMの投与量と除菌率の関係を、喫煙の有無別に検討したスタディです。
ピロリ菌陽性患者601名を対象。レジメンLPZ30mg、AMPC750mg、CAM200 or 400mg/回 1日2回
ピロリ菌(CAM感受性菌)の除菌率
CAM用量 | 喫煙者 | 非喫煙者 |
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CAM400mg/日 | 80% | 94% |
CAM800mg/日 | 91% | 92% |
※CAM耐性菌ではCAM高用量でも除菌率の向上は認められず
喫煙者では、CAM高用量のほうが除菌率が高くなっていることから、喫煙者の場合は、CAM高用量での投与が推奨されるという日本発のデータです。
喫煙は除菌失敗の一因であると考えられています。
喫煙による胃血流減少で抗菌薬の送達減少をきたし除菌作用減弱の可能性あり。
Smoking increases the treatment failure for Helicobacter pylori eradication. - PubMed - NCBI
Am J Med. 2006 Mar こちらも日本の論文。メタ解析です。
非喫煙者と比べ、喫煙者の除菌失敗リスク比は1.95(95%CI 1.55-2.45)
除菌率の差は8.4%(95%CI 3.3-13.5%)
まとめると、ピロリ菌一次除菌は、非喫煙者であれば、クラリスロマイシンの1日量は400mgで問題なさそう。喫煙は除菌率低下の恐れがあり禁煙が望ましい。
禁煙できない場合は、クラリスロマイシンを1日800mgとした方が、除菌率が高くなる可能性がある。
こんなところでしょうか。
PPIのかわりにボノプラザン(タケキャブ)を使用すると除菌率が高かったようです。非劣性試験ではありますが、ボノプラザン20mgで92.6%(300/324例)、ランソプラゾール30mgで75.9%(243/320例)。なかなか期待できそうです。今後の使用実績に注目したいと思っています。