pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

急性腰痛に対するアセトアミノフェン vs ロキソプロフェン

素朴な疑問
NSAIDsと違ってアセトアミノフェンは抗炎症作用がほとんどないので~…という話。
抗炎症作用が弱いから、鎮痛効果も微妙なのでしょうか?

日本でよく使われているNSAIDsといえばロキソプロフェンですが、いつのまにかアセトアミノフェンとロキソプロフェンのガチンコ対決をやっていたみたいです。

Randomized open-labbel non-inferiority trial of acetaminophen or loxoprofen for patients with acute low back pain. - PubMed - NCBI
J Orthop Sci. 2018 May;23(3):483-487.PMID:29503036

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非劣性試験です。
てことで、ITTではなく、PP解析

アセトアミノフェンは1回600mgで1日4回ですから、けっこうガッツリ入ってます。
ロキソプロフェンは60mg×3
盲検化はされていません。

鎮痛補助薬は処方されず、外用鎮痛薬も許可されてません。

脱落がけっこう多いですね。

プライマリアウトカム(一次評価項目)はNumerical Rating Scale(NRS)。0~10点、高いほうが痛みが強い。
NRSのベースラインは5弱といったところで、さあ、どのくらい改善したのかというと…、
「あ、あれ…?見当たらない…。」
治療2週後、4週後の各群のNRSの数値がどこにも見当たらず…。見落としてたらすみませんm(_)m
どの程度改善したのか見つけられなかったのですが、各群の平均差は書いてありました。
信頼区間の幅は0をまたいでおり、ロキソプロフェンのほうがNRSの減少の度合いは若干大きい模様。
ただし、信頼区間の上限が、非劣性マージンの0.84を下回っているので、非劣性は達成されたということになります。
そして、それを踏まえて、鎮痛効果analgesic effectsはcomparable(同等・同程度)だという結語です。

PDASというのは、どの程度、慢性疼痛により日常生活が妨げられたかを評価したスコアで、0~60点。高いほうが強く妨げられているということに。
これもロキソプロフェンのほうが若干点数が低い傾向。

有害事象は症例数が少なくてなんともいえませんが、胃障害はアセトアミノフェン1名、ロキソプロフェン3名でした。
もっと症例数増やしたら胃腸障害がどうなったかが気になるところです。


未治療という群が設定されていないので、自然経過での改善がどの程度だったのかわかりませんが、アセトアミノフェン1日2400mgつかっても、ロキソプロフェン180mgを上回らないんだなぁというのが率直な感想です。
若干、ロキソプロフェン有利な傾向ですもんね。
まあ、そんなに歴然とした差はないので、NSAIDsを使えない症例では試してみてもいいのかなぁ…?


ところで、ロキソプロフェンって日本では大人気ですが、あまりデータがないので、このような研究結果が発表されると参考になりますね。
ほんとありがたいことです。


余談ですが、
この論文に関するコメントがおもしろいですね。
レターっていうのでしょうか。
フルテキストのリンクから見られるので参考までに。
アセトアミノフェンのSR&MAのPMID27271789とかPMID25828856 を引用してコメントが書かれています。


余談 第二弾
Comparison of the effects of treatment with celecoxib, loxoprofen, and acetaminophen on postoperative acute pain after arthroscopic knee surgery: A... - PubMed - NCBI
J Orthop Sci. 2016 Mar;21(2):172-7.PMID:26888227
こんなのもあります。
膝の術後の痛みに、セレコキシブ200mg(初回400mg)、ロキソプロフェン60mg、アセトアミノフェン600mgの比較試験。
こちらは、celecoxib and loxoprofen treatments were superior to acetaminophen in pain-relief
とのこと。

ねこでも読める医学論文 第6話「薬で不整脈を治療したらどうなった?」 地域医療ジャーナル2019年2月号 vol.5

cmj.publishers.fm

地域医療ジャーナル2月号です。

ねこ読めの第6話を掲載させていただきました。
今回は古典的な論文を取り上げています。
有名なCAST試験です。

今回も一緒に論文を確認しながら、ねこ薬剤師たちの会話にお付き合いいただければと思います。


他の記者さんの記事もご紹介しますね!

"看護職のEBM"さんの連載「看護の視点」です。
君たちはどう防ぐか〜転倒にまつわるエビデンス〜 / 地域医療ジャーナル
転倒にまつわるエビデンスがたくさん紹介されており、連載タイトルのとおり看護師の先生ならではの視点を学ぶことができます。

転倒防止というと多因子的な介入が功を奏しそうな印象がありますがどうなんでしょうね!?

ご興味がおありでしたら、地域医療ジャーナルをご覧ください。
(※読者登録が必要です)

ねこでも読める医学論文 スピンオフ企画 エピソードゼロ第2話「それは何の数値?」

ねこでも読める医学論文(ねこ読め)エピソードゼロ第2話です。

第1話をご覧になっていない場合は、こちら。
ph-minimal.hatenablog.com
詳細な設定が書いてあります。

では、さっそく第2話スタート!
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※オボエラレールというのは架空の商品であり、モチーフとなった商品も実在しません。
また、オボエレルン、ワスレラレンというのも架空のモノです。脳内ANKIスケールという謎の評価スケールももちろん存在しません。私が笑いながらテキトーに解説文を書きました。文章そのものがめちゃくちゃかもしれませんがご了承ください。


さて、今回はアウトカムについて書きました。
真のアウトカム・代用のアウトカムってやつですね。
(アウトカムというのは成果とか結果ってやつです)

たとえば、

代用のアウトカム:コレステロール値、血糖値、ADAS-COG(認知機能評価のツール)など
真のアウトカム:心筋梗塞脳卒中、死亡など

患者さんの命や生活に直結するのが真のアウトカムって感じでしょうか。
ざっくり言えば、患者さんが満足を得られるのが真って感じですね。

血糖値がちょっと基準値よりも高くなっても患者さんは痛くもかゆくもないと思いますが、
がっつり治療して基準範囲とされていた数値に厳しくコントロールした結果、低血糖が増えて死亡が増えたという研究もありましたよね(ACCORD試験)。

代用のアウトカムについてはいろいろ考え方がありますが、自分はどうでもよいアウトカムだとは思っていません。それがあきらかに患者さんの生命にかかわる可能性があるなら、無視はできません。
血糖値が高くなっても痛くもかゆくもないから放っておいていいわけではないですよね。
ただ、代用のアウトカムだけでいろいろ評価してしまうと先ほどのACCORD試験みたいなことがあるので要注意って感じです。血糖値に関しては、個々の患者さんに適した数値にコントロールする必要があるということですね(この適切にってのが難しいのですが…)

一方、今回とりあげた脳内ANKIスケール(←そんなものはないが…)はどうでしょう。
この場合、
真のアウトカムは「ネコバード大学に受かる、成績が上がる、暗記力があがる」などでしょうか。
(いい大学にいっても幸せになれるかどうかはわからないけれど…)

脳内ANKIスケールはあきらかに代用のアウトカムです。
脳内ANKIスケールがあがったよ!と言われても、利用者としては効果を実感できずにキョトンですよね。

この問題点は、脳内ANKIスケールと、成績向上/暗記力向上との関連性が示されていないことです。
血糖値や認知症のスコアは、関連性がありますよね。
血糖値が高すぎるまま放置すれば合併症が進行するのは自明のことですし、
ADAS-COGは認知機能にかかわるテストをして算出されるスコアなので、認知機能との関連が示されています(何点改善すれば意義があるのか、と言われると悩ましいところではありますが…。)

これを飲むと、○○が改善する!という宣伝を見たら、
その○○が自分にとって何を意味するのか考えて欲しいです。

・ナントカの体内濃度が高くなる!→その濃度が改善したら本当に真のアウトカムに直結するのか?また、そのようなデータはあるのか?

・ナントカスコアが改善する!→そのスコアの評価方法をチェックする。

これを意識して欲しいところです。


さて、第3話は未定ですが、なにかネタが思いつけば続く…かも…?