いまさらですが、オッズ比とリスク比の違いについて例をあげてまとめてみたいと思います
仮想研究)
P:○○会社の新入社員200名
E:有給取得徹底(新入社員100名)
C:現行どおり有給なし(新入社員100名)
O:年間退職率
試験期間:1年
なんで仮想研究がこんなテーマなのかは察してください(笑)
<結果>
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 25 | 50 |
退職なし | 75 | 50 |
さて、リスク比とオッズ比を計算してみます。
リスク比risk ratio:有給ありの退職率(0.25)/有給なしの退職率(0.5)=0.5
オッズ比odds ratio:(有給ありの退職者/有給ありの非退職者)/(有給なしの退職者/有給なしの非退職者)=0.33
数値が変わってきますね。
有給という介入により、退職リスクが50%減少という表現は正しいですが、67%減少という表現は誤っています。
リスク比が3ならリスクは3倍となりますが、オッズ比が3で、リスクが3倍と表現するのは誤り。
リスク比が0.5ならリスクは半減となりますが、オッズ比が0.5で、リスクが半減すると表現するのも誤り。
数値を変えて計算してみましょう
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 1 | 2 |
退職なし | 99 | 98 |
リスク比:0.5
オッズ比:0.49
退職という絶対リスクが小さい場合、オッズ比はリスク比との差が小さくなりました。
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 45 | 90 |
退職なし | 55 | 10 |
リスク比:0.5
オッズ比:0.09
退職という絶対リスクが大きい場合、オッズ比はリスク比との差が大きくなりました。
コントロール群のリスクが高いほど、リスク比に比べてオッズ比はより過剰な数値となります。
ではリスク比を使うべきかというと、意外とオッズ比にも優れた一面はあるように思います。
この仮想研究は退職(発症)をアウトカムとしました。
退職を防いだ数(予防)をアウトカムとして計算すると、リスク比とオッズ比はどうなるでしょう。
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 25 | 50 |
退職なし | 75 | 50 |
退職をアウトカムとすると、
リスク比:0.5
オッズ比:0.33
退職予防をアウトカムとすると、
リスク比:2
オッズ比:3
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 1 | 2 |
退職なし | 99 | 98 |
退職をアウトカムとすると、
リスク比:0.5
オッズ比:0.49
退職予防をアウトカムとすると、
リスク比:1.01
オッズ比:2.02
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 45 | 90 |
退職なし | 55 | 10 |
退職をアウトカムとすると、
リスク比:0.5
オッズ比:0.09
退職予防をアウトカムとすると、
リスク比:5.5
オッズ比:11
といった感じになります。
アウトカムを逆(発症⇔予防)にすると、オッズ比は逆数になりますがリスク比は数値がかわります。
うーん。複雑ですね。
もう1つ数値をかえてリスク比の限界を考えてみます。
有給あり(n=100) | 有給なし(n=100) | |
年間退職者 | 80 | 99 |
退職なし | 20 | 1 |
退職のリスク比:0.8
退職のオッズ比:0.04
このケースでは、有給取得という介入により、無事2年目に突入した人数は20倍に増えているのに、リスク比は0.8で、退職というリスクを減らせていないような印象となってしまいます。
もともとの絶対リスクが高いアウトカムの場合、その予防効果が高くても、リスク比は頭打ちになってしまうようです。
頭がこんがらがってきましたが、いろいろ数値を変えて計算してみると、オッズ比とリスク比はあきらかに別物であるということが良くわかると思います。
ミスのないよう計算し、解釈したつもりですが、もし計算ミスや解釈間違いなどございましたらご指摘いただけると幸いです。
オッズ比とリスク比はどちらが優れているというわけではなく、医学論文を正しく解釈するために、その違いをきちんと理解しておくことが大事だと思います。