D2遮断作用のある抗精神病薬はプロラクチン(PRL)の上昇をきたすことがあります。
Using aripiprazole to reduce antipsychotic-induced hyperprolactinemia: meta-analysis of currently available randomized controlled trials. - PubMed - NCBI
Shanghai Arch Psychiatry. 2015 Feb
抗精神病薬誘発性高PRL血症のアリピプラゾール補助療法の有効性と安全性を検討したRCTのメタ解析
プライマリアウトカム:PRL値の正常化
アブストラクトより
21試験のうち8RCT(n=604)の解析
PRL回復:RR19.2(95%CI 11.0-33.5)
有害事象:両群間で有意な差はなし
眠気;RR2.76(95%CI 1.34-5.69)
頭痛:RR2.31(95%CI 1.08-4.92)
アリピプラゾールの用量5mg以上:RR30.0(95%CI 10.2-120.7)
アリピプラゾールの用量5mg未満:RR15.1(95%CI 8.1-28.1)
5mg以上と5mg未満において、統計的な有意差は無し
table1 各試験の研究デザインなどの記載あり
プライマリアウトカムを検討した8RCTはすべて盲検化されている(二重盲検or単盲検)
使用されている主な抗精神病薬は、リスペリドン、スルピリド、ハロペリドールなど。
アリピプラゾールの用量は5~30mg(ほとんどが5~10mg)
試験期間:ほとんどが6~12週程度
figure2 フォレストプロット
リグスペリドン群、アリピプラゾールの用量別のサブグループにおいても有意に改善している
table3
有害事象の詳細の記載あり
頭痛:増加(アリピプラゾール高用量>低用量。リスペリドン以外の抗精神病薬でとくに増加傾向)
眠気:増加(特にリスペリドン群。アリピプラゾールの用量には依存していない)
口渇:統計的有意ではないが増加傾向
不眠:統計的有意ではないが減少傾向、アリピプラゾール高用量では上昇傾向
疲労:統計的有意ではないが増加傾向(とくにアリピプラゾール高用量)
精神症状の改善:ほぼ不変
結語として、抗精神病薬によって誘発される高PRL血症に対するアリピプラゾール補助療法は有効かつ安全だとわかったが、研究の質やフォローアップ期間など結果の妥当性について多少疑問ありとしています。
ちなみに上記メタ解析のアウトカム解析の8RCTに含まれていないもっとも参加者数の多い研究はこちら
A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, 16-week study of adjunctive aripiprazole for schizophrenia or schizoaffective disorder... - PubMed - NCBI
DB-RCT n=252
使用している抗精神病薬は、クエチアピン、リスペリドン
アリピプラゾール10mg補助投与
<結果>
アリピプラゾール | プラセボ | p | |
血清PRL値 | -12.6ng/mL | -2.2ng/mL | P<0.001 |
血清PRL値(リスペリドン群) | -18.7ng/mL | -1.9ng/mL | P<0.001 |
血清PRL値(クエチアピン群) | -3.01ng/mL | +0.15ng/mL | P=0.104 |
そもそもクエチアピンはPRL値を上昇させにくいので、差が少ないのではないかと思います。
高PRL血症は、男性ではED・女性化乳房(胸が張って痛い)、女性では乳汁漏出・無月経などをきたしますので、これらの症状が問題となる場合にアリピプラゾールの追加投与にてPRL値低下が期待できます。
ただし、多剤併用療法は長期投与の安全性など不明な点もあるため、高PRL血症の原因となっている抗精神病薬の投与中止/他剤への変更ができない場合に検討するのが良いのではないかと思います。