アトピー性皮膚炎
2歳までに発症することが多く、約9割が5歳までに発症。
アトピー自体は痒みの原因であり、掻き壊しにより皮膚のバリアーが破壊され皮膚炎を起こす。バリアーが壊れると、ダニなどのアレルゲンに暴露されやすい。また黄色ブドウ球菌の感染リスク増加。
<アトピー性皮膚炎の診断基準>
増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患でアトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、IgE抗体産生)を持つ
①掻痒
②皮疹:年齢ごとの特徴は、乳児(頭・顔→体幹へと広がる)、幼小児(頚部、四肢関節部)、成人(頭、頚部、体幹)
③慢性・反復性の経過:乳児2ヶ月以上、その他6ヶ月以上を慢性と定義
<リスク因子>
アレルゲン(ダニ、ハウスダスト、ペットなど)、ストレス、汗、黄色ブドウ球菌など
<治療>
ステロイド外用剤による治療が基本
1~2週間以内で寛解を目処に最低限かつ充分な強さのステロイドを使用
ステロイドの使用量目安:5gチューブ1本で手のひらサイズ20個分。1FTU(0.5g)=手のひら2枚分。
使用回数:急性期は1日2回塗布。ストロングクラス以上では、1日2回でも1回でも有意差はないとするデータもあり、急性期は1日2回、軽快してきたら1日1回としても良い(ミディアムクラスでは1日2回のほうが有効)。
乳幼児・小児:中等度~重症では原則成人より1ランク低いステロイドを使用。効果が得られなければ増強。
顔面への使用:原則ミディアム以下
塗り方:強く擦りこむ必要なし。刺激しないよう優しく塗布
副作用:適切に使用すれば全身性副作用は少ない。局所的副作用として、ステロイド瘡、皮膚萎縮、多毛、感染など。色素沈着が見られる場合があるが、皮膚炎鎮静後の色素沈着によるもの。ステロイドによる顔面の酒さ様皮膚炎には注意が必要。
急性期のかゆみ防止として、抗ヒスタミン薬内服や、皮膚を冷やすことも有効
<スキンケア>
ヘパリン類似物質含有製剤1日2回塗布が有効
ヘパリン類似物質含有保湿剤1日2回2週間塗布vs無処置→6週間後の再燃率は12.5%vs39.4%(日本皮膚科学会雑誌 117(7), 1139-1145, 2007)
入浴時の洗浄:黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎ、皮膚を清潔に保つのは大事だが、硬いナイロン製のタオルでゴシゴシこするのは皮膚のバリアー機能が低下するので不可。石鹸を泡立てておいて、優しくマッサージするように洗う。
★ステロイド外用剤の中止方法は??
急に中止せず、1日おき、2日おきと徐々に減らしていく間欠的使用が推奨。保湿剤は連日投与し、徐々に保湿剤のみへと移行。
BMJ. 2003 Jun 21
プロピオン酸フルチカゾン外用剤の週2回投与の維持療法(4週連日投与の後、16週治療。計20週)でアトピー性皮膚炎の再発を減少させることを目的としたDB-RCT
P:炎症悪化(flare)の経験のある中等度~重度のアトピー性皮膚炎の患者(12~65歳) 。人種は9割が白人。
E:プロピオン酸フルチカゾン軟膏0.005%orクリーム0.05% 分1or分2 4週間塗布し状態を安定化→プロピオン酸フルチカゾン週2回(連日・夜)塗布+連日1日2回皮膚軟化剤(セトマクロゴールベースのクリーム)
C:プロピオン酸フルチカゾン軟膏0.005%orクリーム0.05% 分1or分2 4週間塗布し状態を安定化→プラセボ週2回(連日・夜)塗布+連日1日2回皮膚軟化剤(セトマクロゴールベースのクリーム)
O:アトピー性皮膚炎の再発までの時間
結果は、
376人中295人が維持期へ(4週連日投与、使用回数1日1回or2回で改善率に有意差は無し。7~8割が寛解し、維持期へ)
【クリーム】
- フルチカゾン70人中13人再発。再発までの中央値16週以上
- プラセボ84人中54人再発。再発までの中央値6.1週
HR5.8 (95% CI 3.1 to 10.8, P<0.001)→5.8倍再発しにくい NNT:2.2
【軟膏】
- フルチカゾン68人中27人再発。再発までの中央値16週以上
- プラセボ74人中41人再発。再発までの中央値6.1週
HR1.9(95% CI 1.2 to 3.2, P=0.010)→1.9倍再発しにくい NNT:6.1
【有害事象】
両群において有意差無し
プロピオン酸フルチカゾンクリーム0.05%=ミディアム~ストロング
プロピオン酸フルチカゾン軟膏0.005%=ストロング~ベリーストロング
国内未発売なのでステロイドのランクがわからず、いろいろ調べたところメルクマニュアルの強度分類だとなぜか濃度の薄い軟膏のほうがランクが上になっていました。アメリカは軟膏は厚く塗れるので効果も強く、同じ成分でも軟膏のほうがランクが上になっていることがあるようですが、この論文ではクリームのほうがNNTが良いので、どうもしっくりこないです…。
減量・中止については、やはり急に中止するよりは、間欠的使用の方が良い印象です。上記論文やガイドライン等を参考に、徐々に減量していくのが望ましいと思います(主治医から別途指示が出ている場合はその指示に従う)。