pharmacist's record

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マイザー軟膏よりマイザークリームのほうがかゆみを抑えるのか?

ちょっと話題になっているジフルプレドナート製剤(マイザー®)の添加物についてです。

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(マイザーの添付文書より)

クリームにはクロタミトン(オイラックス®の有効成分)が入っているんですねッ
知りませんでした!
勉強になります!

ただし、マイザー軟膏よりマイザークリームの方が、かゆみをおさえる効果があると判断していいのかどうかはちょっと保留ですね。

添加物ってあくまで添加物であって、主要成分の有効性や安全性に影響しないものと認識していたのですが…。添加物としての記載であれば、その有効性は検証していないとみてよいでしょう。
有効性を発揮するほどの含有量なのかどうか不明です。

ためしにPMDAの添付文書検索で「組成と性状」にクロタミトンという文字が含まれる添付文書を収集してみました。
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(※この検索結果の見方に注意してください。これはあくまで添付文書のなかの文字検索です。
たとえば「マイザー軟膏0.05%/マイザークリーム0.05%」がヒットしてますが、実際に含まれるのはクリームだけです。添付文書が軟膏・クリームが一緒にまとめられているので、このような検索結果として表示されます。どの剤形に含まれているかは、添付文書をご確認ください。)

検索結果をPDFで出力できたので、画像化して載せました。
けっこうたくさんありますね。

オイラックス®については添加物としてでなく"有効成分"としての含有ですが、クロタミトンはさまざまな外用剤に"添加物"として含有されています。

インドメタシン
クロベタゾール
ケトプロフェン
デキサメタゾンプロピオン酸エステル
フェルビナク
フルルビプロフェン
ロキソプロフェン
などなど

外用ステロイドだけでなく、消炎鎮痛薬にも含まれているようです。

はて…
外用消炎鎮痛薬でかゆみが改善されるのでしょうか?

むしろ、↓クロタミトンは接触性皮膚炎の原因薬剤として知られています
消炎鎮痛外用剤中に含まれるクロタミトンによる接触皮膚炎の3例
皮膚 第40巻 第4号 1998年8月 345-350

日本皮膚科学会
一般公開ガイドライン|公益社団法人日本皮膚科学会
接触皮膚炎のガイドラインにも載っていますね。

ステロイドの添加物に含まれるクロタミトンで接触性皮膚炎をおこしたという報告は私は知りませんが…。仮にクロタミトンが合わない患者さんにクロタミトンが添加されているステロイドを塗布したらどうなるのか…。ステロイド接触性皮膚炎に効くので、症状がマスクされるんですかねぇ。

個人的には「かゆくてたまらない!」という嫌な気持ちはとてもよくわかりますから(私も頑固な皮膚疾患あり…涙)、添加物でもいいから鎮痒剤が配合されているほうがいい思ってしまう気持ちはわかります。ステロイド単剤って即効性はないですからね。
でも、自分はかゆくてたまらないってときは市販の抗ヒスタミン薬を頓用で塗布して、かゆみハリケーンが過ぎ去るのをジッと耐えしのんでいます。

皮膚の状態悪化を知らせる「かゆみセンサー」
しかし、かきこわしたら皮膚の状態が悪化する!

そんな殺生な!!!!

私はかゆくてたまらないときは頓用でかゆみどめを使用していますが、あくまで対症療法であり、ステロイド外用薬などを用いて、原疾患の治療をしっかり行うことが大事だと思います。


そんなこんなで、添加物として含有されているクロタミトンにかゆみ止めの効果があると言えるのかどうかは、正直なところランダム化比較試験(RCT)をやらないとわからないと思います。
「添加物として含有されているクロタミトンの有効性を検証するRCT」が実施されているとは思えないので、検索すらしてません。メーカーサイドとしては、どうせやるなら薬理作用を発揮する含有量を配合した上でRCTをやるでしょうね^^;


最後に添加物について調べているときにみつけた資料を備忘録としてリンクはっておきます。

添加物に関する添付文書記載要領についてはこちら
日本製薬団体連合会-自主申し合わせ
http://www.fpmaj.gr.jp/jisyu/documents/ji140711.pdf

ついてにこちらも
日本ジェネリック協会
http://www.jga.gr.jp/library/old/www.jga.gr.jp/pdf/tenkazai.pdf
ジェネリックといえば…
6ページがわかりみが深いですね。
添加物の違いを問題視する人が多いですが、普通錠→OD錠という添加物の違いを問題視している人がほとんどいないという不思議…