抗てんかん薬による薬疹というとカルバマゼピンやフェノバルビタールが有名ですが、ラモトリギンについても薬疹が報告されており、先日、適正使用について注意喚起がありました(2015.1.13インフォメーション参照)。
ラモトリギンは気分安定化作用により双極性障害にも適応をもつ抗てんかん薬で、てんかんに対しては2歳以上の小児でも使用可能。肝代謝(グルクロン酸抱合)で、併用薬剤により用法用量が異なります。2014年8月29日には、成人てんかんにおける単剤療法の適応追加となりました。
錠剤は、噛み砕いて服用したり水に懸濁して服用することもできるチュアブル・ディスパーシブル錠となっています。
注意すべきは用法用量です。ラモトリギンは併用薬によって用法用量が異なりますが、ラミクタールによる皮膚障害の発現率は、「初期用量」や「漸増用量」の増加に伴って上昇することが報告されています
バルプロ酸併用時の皮膚障害発現率は、
承認用量より高用量:10.4%(18例/173例)
承認用量:2.9%(3例/102例)
(2012年1月の医療機器等安全性情報No.287より)
薬疹が薬剤へのアレルギーであるなら、用量依存的にリスクが高まる理由がわからないのですが、メーカーさんによると、低用量からの漸増により免疫寛容が起こる可能性が示唆されているようです。
発症時期は投与8週以内に多いとされていますが、それ以降は発症例がゼロというわけではありません。
※厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルによると、SJS,TENは2週以内に多い(数ヵ月後のことも)、DIHSは2~6週以内に多い(数年後のことも)とされています。
特定の抗てんかん薬との交差反応は認められなかったようですが、抗てんかん薬を含めて何らかの薬剤に対して薬疹の既往があると発現リスクが高くなります
ラモトリギンによる皮膚障害の初期症状は、
発疹、高熱(38度以上)、口唇、口腔内のただれ 、目の充血 、全身の倦怠感 、咽頭痛、リンパ節腫脹 など
適正な用法用量設定と、副作用の初期症状の説明が大事な薬剤だと思います。
H28.2追記
連名ステートメントが出ました。
http://www.asas.or.jp/jsnp/img/csrinfo/20160120.pdf
ラモトリギンは日本うつ病学会のガイドラインにて、双極性障害の維持期においてはリチウムの次に推奨、双極性障害の大うつ病エピソードにおいては適応外であるものの、オランザピンと並んで、クエチアピン・リチウムの次に推奨されている。
皮膚障害のリスクファクターは、
①用法用量の非遵守
②バルプロ酸併用例
③他の抗てんかん薬での薬疹の既往
④13歳以下の小児
⑤投与8週以内
グルクロン酸抱合に影響を及ぼさない薬剤:オランザピン、アリピプラゾール、ゾニサミド、ガバペンチン、シメチジン、トピラマート、プレガバリン、リチウム、レベチラセタム
グルクロン酸抱合を誘導する薬剤:フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン、リファンピシン、ロピナビル・リトナビル配合剤、アタザナビル/リトナビル、エチニルエストラジオール・レボノルゲストレル配合剤
グルクロン酸抱合を阻害する薬剤:バルプロ酸、ジアゼパム、ロラゼパム、フルニトラゼパム、クロナゼパム、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、クロミプラミン、アミトリプチリン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、アセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、タクロリムス、シクロスポリン、エチニルエストラジオール、テストステロン、プロベネシド、クロラムフェニコール、ナロキソン、モルヒネ、メサドン、フロセミド、シメチジン、ラニチジン、フルコナゾール、アトバコン、プロプラノロール、プロメタジン、ジアフェニルスルフォン
ということですが、シメチジンがおかしいですね。「影響を及ぼさない」、「阻害作用がある」の両方に記載されています。シメチジンは最近処方が減っているのであまり併用例はなさそうですが…。
グルクロン酸抱合に関する元文献は、アブストしか確認できないのが残念。