pharmacist's record

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ガランタミンは食後に投与したほうが副作用を軽減できる?【添付文書ネタ】

ガランタミン(レミニール®)の添付文書を見て、「えっ?そうなん?」て思った小ネタ

「7.3 副作用を軽減するため、食後に投与することが望ましい。」
という記載がありました。

吸収の項目で、食事による影響を見てみると、
「16.2.1 食事による影響健康成人に4mg錠を空腹時又は食後に単回経口投与したとき、空腹時投与と比較して食後投与ではtmaxにわずかな遅れがみられたが、Cmax及びAUCに差は認められなかった7)。」

ふむ…、わずかに遅れる。AUCに差はない。

7.3の根拠は???

インタビューフォーム
7.3の解説
「 一般に、悪心、嘔吐等の消化器症状は、食後に投与することで軽減される可能性があるため、食後に投与すること。また、悪心、嘔吐等の消化器系副作用が発現する可能性があること及び高齢の患者が多いことから、本剤服用中は十分に水分を摂取し、脱水症状を予防すること」

ふむ…
食前投与の方が悪心や嘔吐などの副作用の発現が多かったという記述はありません。
"一般に"、"軽減される可能性" などといった文言が。。。

添付文書に明記されている以上、それなりの効力(個別指導的な…)を発揮するのでしょうか。


つぎは文献をさがしてみる
Google教授に「galantamine administration with food prevent nausea vomiting pubmed」とお伺いを立てると…

Relative tolerability of Alzheimer's disease treatments
Relative tolerability of Alzheimer's disease treatments
Alva G, Cummings JL. Relative tolerability of Alzheimer's disease treatments. Psychiatry (Edgmont). 2008 Nov;5(11):27-36. PMID: 19724715; PMCID: PMC2695725
「ガランタミンの prescribing information (PI) documentsでは、大部分は用量増量期間中に発生、食事と一緒にガランタミンを投与/制吐剤を使用/十分な水分摂取を確保することが、副作用の影響を軽減する可能性があることに言及している」
との記載あり
海外の添付文書にも同様のことが書いてあるってことですかね。

ちなみに、この文献によると、「吐き気の持続時間の中央値は 5~7 日間」
ほう、そうなのか。


http://gmmmg.nhs.uk/docs/ip/Galantamine-info-sheet-for-GPs-approved-Aug-2017.pdf
こちらは、NHSってことは英国でしょうか。
「INFORMATION FOR PRIMARY CARE」ってのは、添付文書ではなく、プライマリケア向けの文書みたいなことかな?

「ガランタミンはコリン作動性の副作用(悪心、嘔吐、下痢など)のリスクを軽減するため、食後に服用する必要があります。食物と一緒に投与すると吸収速度が遅くなるが、総吸収には影響しない。投与する際には、噛まずに丸ごと飲み込む必要があります。」
だそうです。


Cholinesterase inhibitors for the treatment of Alzheimer's disease:: getting on and staying on
Grossberg GT. Cholinesterase inhibitors for the treatment of Alzheimer's disease:: getting on and staying on. Curr Ther Res Clin Exp. 2003 Apr;64(4):216-35. doi: 10.1016/S0011-393X(03)00059-6. PMID: 24944370; PMCID: PMC4052996.
こちら2003年、かなり古い

Administration with Foodという項目があって、
「これらの薬剤を食事とともに投与すると、薬物の吸収が遅延し、血漿中ピーク濃度と脳内ピーク濃度が低下するため、患者が急性の AE を経験する可能性が低くなる。リバスチグミンおよびガランタミンについては、朝夕の食事と一緒に服用することが推奨されている」
とのこと。


うーん、吸収が遅延するといってもそんなにかわらないんだよなぁ。
添付文書にはくわしく書いてなかったので、インタビューフォームを確認。
f:id:ph_minimal:20201031205712p:plain
薬物動態的には、そんなに大差はないように見えますが…
うーむ。


結局のところはっきりとしたデータは見つけられず
(食前と食後投与での比較データが見つからない)

Cmaxがはねあがったりってこともなさそうなので、あんまり影響ないような気もしますが、みなさんは薬剤師としてどうお考えでしょうか???
添付文書に書いてあるから、○○だ!ていうのではなく、どのような根拠で記載されたのかをしっかり勉強したいですね。



ついでに、検索でみつけた論文(本件とは関係ないけど)
Post hoc comparison of daily rates of nausea and vomiting with once- and twice-daily galantamine from a double-blind, placebo-controlled, parallel-group, 6-month study
Dunbar F, Zhu Y, Brashear HR. Post hoc comparison of daily rates of nausea and vomiting with once- and twice-daily galantamine from a double-blind, placebo-controlled, parallel-group, 6-month study. Clin Ther. 2006 Mar;28(3):365-72. doi: 10.1016/j.clinthera.2006.03.002. PMID: 16750451.
海外では1日1回製剤(extended-release)があるんですね。
徐放性のほうが消化器症状が少なめみたいですが、アブストだけで判断しないほうがいいかも。
なるべく血中濃度がはねあがらない方がいいってことなのかどうか…