pharmacist's record

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いつのまに!?バロキサビル(ゾフルーザ)のCapstone2試験(ビジアブ)

去年、期待の新薬ということで世間を騒がせたインフルエンザ治療薬のバロキサビルですが、健常者対象のCapstone1試験につづいて合併症のリスクのあるハイリスク患者を対象としたCapstone2試験も実施されています。
すでに試験は終了しており、結果が待ち遠しいところでしたが、論文化はまだですよね?インフルエンザシーズン突入前に論文が出ると思っていたのですが…。

そこで、ちょこっと調べてみたら、なんと臨床試験の結果がいつのまにかClinicaltrials.govに発表されていました。みなさん、お気づきでしたか?

さっそくビジアブにまとめました。

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(今回は結論の項目はビジアブから省いています)

研究の概要と試験結果はこちらから引用
clinicaltrials.gov


用法用量は割愛しましたが、添付文書どおりです。
プライマリアウトカムは症状緩和時間。
概ね、予想通りの結果というところでしょうか。やはり既存薬のオセルタミビルに対する優位性は示せず。
抗菌薬を必要とする気管支炎などの二次感染もオセルタミビルとあまり差がないですね。

ウイルス検出についてはどうでしょうか?(Time to Cessation of Viral Shedding Determined by Virus Titer)
バロキサビル、オセルタミビル、プラセボの順に48時間、96時間、96時間ということで、バロキサビルが消失が早い。

有害事象(Any adverse event)はバロキサビル、オセルタミビル、プラセボの順に25.1%、28.0%、29.7%(こちらは全例解析)
有害事象の著明な増加はなさそう。ちなみに吐き気は2.74%、4.72%、3.85%でした。オセルタミビルは吐き気の副作用が知られており、プラセボよりやや多い傾向。バロキサビルは増加傾向なし。

パッと見、気になったデータをピックアップしてみました。
詳細データは上記貼り付けた引用元に掲載されているので、ぜひともそちらをご覧ください。

Capstone2の結果を見ると、バロキサビルはそれほど悪くないような気もしますが、やっぱり気になるのは耐性ウイルスですよね。
今年発表された論文では、小児において耐性ウイルスが2割程度に出現し、症状緩和時間が延長(79.6時間 vs 42.8時間)なんて報告もありましたからね。。。(Baloxavir marboxil in Japanese pediatric patients with influenza: safety and clinical and virologic outcomes. - PubMed - NCBI PMID:31538644)
単回投与は魅力的かもしれませんが、耐性ウイルスは嫌ですよねぇ…。添付文書上、抗ウイルス薬の投与は必須ではないとされる健常者に対しても、この薬を使いまくったら、どうなるのでしょうか…。

さて、バロキサビルの行方が気になるところですが、気温がさがってきたので、体が冷えないようにしてしっかりと休養をとりましょうね!
私は引越しをした結果、毛布がどこかへいってしまったので、毛布を購入し、マントのように毛布をまとってリビングで生活しております。自分はとても暑がりなのですが、なぜか今日は寒く感じるし、具合がいまいちすっきりしないので、連休はまったりお休みします。