pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

逆流性食道炎維持慮法 ラベプラゾール分2 vs 分1

まずはラベプラゾールの添付文書
<治療>
逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与するが、病状により1回20mgを1日1回経口投与することができる。なお、通常、8週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、1回10mg又は1回20mgを1日2回、さらに8週間経口投与することができる。ただし、1回20mg1日2回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。
<維持療法>
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与することができる。


むむぅ…。
みなさん、これ、丸暗記してるの?
自分は無理。

今回とりあげる論文はまさにこの添付文書の用法じゃないか!っていうややこしい研究デザイン。
これが承認のベースとなった試験なのかなぁ…?
発表されたの今年だけど…。

Efficacy and safety of twice-daily rabeprazole maintenance therapy for patients with reflux esophagitis refractory to standard once-daily proton pu... - PubMed - NCBI
J Gastroenterol. 2018 Jul;53(7):834-844.PMID:29188387
f:id:ph_minimal:20180810001343j:plain

はい。ややこしいですね。
Phaseが2つに分かれてます。

まずは、PPI標準治療で改善しない人たちを集めてます(ここでいうPPIはラベプラに限らず)

除外基準は上部消化管出血、バレット食道(3センチ以上)、 Zollinger–Ellison、胃・十二指腸潰瘍、ピロリ除菌6ヶ月以内など


治療Phaseとして、オープンラベルでラベプラゾールを。
用量は10mg×2、もしくは20mg×2なのですが、各患者のロサンゼルス分類のグレードにより決定。
ざっくりいうと、軽度には10mg×2で、重度には20mg×2
で、寛解したひとたちが維持期(二重盲検)へと移行。

じつはバレットでした、みたいな人(組み入れ基準外)は脱落。オープンラベルPhaseで寛解達成しなかった人もここで脱落
寛解達成したかどうかは、endoscopically confirmed てことなので、自覚症状で評価したわけではない模様。

で、寛解した人たちをランダム化して、盲検化。
半数以上が65歳越えなので、意外と年齢層高め。
胸焼けHeartburnを訴えてる割合が15%くらい。
★疑問1:ロサンゼルス分類でグレードC/Dの人が少しいるのはどういうこと???内視鏡で評価して寛解達成しなかった人たちは維持期へ移行せずに脱落したんではないの??

禁止薬は以下のとおり
Concomitant use of drugs possibly affecting the efficacy assessment, as well as contraindicated drugs, including PPIs, potassium-competitive acid blockers, H2 receptor antagonists, gastrointestinal prokinetic agents, protease inhibitors, sodium alginate, atazanavir sulfate, and rilpivirine hydrochloride, were prohibited throughout the trial.
(これらの薬が必要になってしまった人は二重盲検Phaseから脱落してます)

解析はFASです。
よって、脱落者のうちの一部は解析へまわされています。
解析されてない人もいますが、結果がかなり差がついているので、これはITTだったとしても結果はくつがえらなそう。

で、肝心の"非再発"っていう定義はなんだんだろう?
based on endoscopic findings ってことなので、内視鏡の所見に基づいた評価だと思います。
ということはプライマリは代用のアウトカムということになってしまうのか…???


一方、症状についてはこちら
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6006226/figure/Fig5/?report=objectonly
Fig5にsymptom-free の割合がのってますね。
こちらはセカンダリだった模様


安全性はどうでしょう
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6006226/table/Tab2/?report=objectonly
これは気になりますね
ポリープの発生が分2の方が多いってこと???

ただこれは慎重に評価したほうがいいのかも。
内視鏡で再発が確認した時点で研究中止してるのだとしたら、分1のほうが早期中止が多くなり、有害事象については過小評価となる可能性もあるのか??つまり分2だとリスク増とは限らない??
でもでもなんか気になる~。という感じ。



さて、疲れてきたのでこのへんで終わりにします。

ではまとめ。
プライマリアウトカムは内視鏡評価ってことで代用なのかもって気もしましたが、まあほぼ症状に直結していそうなアウトカムかなと。
セカンダリの症状評価のほうもやはり差がついている。
分2のほうが効いてるとみて良いでしょう。

ただ、これについてはそりゃそうでしょって気もします。
そこが外的妥当性の話につながるのですが、PPI標準治療で改善しない人たちがそもそもの組み入れ基準なのです。そんな彼らを治療Phaseで分2投与で寛解させて、さあ維持期へもっていくぞとなれば、そりゃ分1じゃあ再発するのは目に見えているんじゃないかと。

なんでもかんでも分2投与で!とはならないと思いますのでその点は注意が必要かと思います。
分1の標準治療で改善しない人たちの試験だということを忘れずにね、という感じです。

治療期間は52週なので、長期の安全性は不明。
ポリープの件がちょっと気になる。ディスカッションで述べられているように分1投与群は過小評価となってしまっている可能性はあるものの、PPI分2投与がなんか悪さをしているのでは?って。まあこのあたりは背景知識がなさすぎるので評価できず。関連文献を調べる必要がありそうです。