Opioid rotation versus combination for cancer patients with chronic uncontrolled pain: a randomized study. - PubMed - NCBI
BMC Palliat Care. 2015 Sep 16;14:41
背景:オピオイドは中等度~重度のがん性疼痛の主な治療法。がん性疼痛は非オピオイド鎮痛薬の効果が無くなったらすぐに強力なオピオイドで治療すべきである。しかし、多くの患者は痛みが完全に治らなかったり、オピオイドの副作用に苦しむことがある。
モルヒネは重度のがん性疼痛の治療に有効な薬剤とされているが、経皮フェンタニルの使用が近年増加している。最近では、いくつかの研究において、経皮フェンタニルはオピオイド使用歴に関わらずにがん性疼痛に効果的かつ安全であることが実証されている。
オピオイドローテーションはコンロトールできない疼痛の治療法として確立しつつあるが、しばしば複数のオピオイドを併用することがある。この研究では、コントロール不良のがん性疼痛に対するオピオイドローテーションとオピオイドの併用の有効性を比較評価した。
研究デザイン:ランダム化比較試験(盲検化なし、ITT解析の記載なし)
P:経口オピオイドで慢性のコントロール不良の疼痛(※)を伴う18歳以上のがん患者(スクリーニング期間にオピオイド用量変更なし)
E1:the rotation group[to transdermal fentanyl]
E2:the combination group [oral oxycodone(every 8 to 12 h) plus transdermal fentanyl(every 3 days/half of the desired daily opioid dose)]
O:がん性疼痛(NRS;a numerical rating scale) の変化と治療成功(治療成功の定義;NRS33%減少)
[0 (no pain at all) to 10 (the worst pain you can imagine)]
治療期間:7日間
※慢性のコントロール不良の疼痛Chronic uncontrolled pain の定義
適切な用量調節adequate dose titration/経口モルヒネ換算で100mg/d以上で治療 にもかかわらず、持続性の痛みを有する。
<用量について>
オピオイド必要量/日は、持続性/短時間作用型のオピオイドの総量として算出
"According to the algorithms, the following conversion ratios were used: oral morphine 100 mg = oral oxycodone 66 mg = q72h dose of 50 mcg/h transdermal fentanyl."
[参考 デュロテップパッチ®:2.1mg(12.5μg/hr)、4.2mg(25μg/hr)、8.4mg(50μg/hr)、12.6mg(75μg/hr)]
"Because the patients were suffering uncontrolled severe pain, the first decision was made to increase the starting dose by 25 %"
疼痛コントロール不良で苦しんでいたため、初回用量は25%増量
突出痛(breakthrough pain)があれば、即時放出オキシコドン(immediate-release oxycodone)でコントロール
非オピオイド鎮痛薬とステロイドの投与は許可(研究を通じて一定の用量であることを条件とする)
<サンプルサイズ>
NRS2点以上の差を検出するためのサンプルサイズは各群21名(power90% α0.05)
<患者背景>
Rotation group | Combination group | |
---|---|---|
年齢中央値 | 67歳 | 62歳 |
男性率 | 67% | 73% |
モルヒネ換算投与量 | 120mg/d | 128mg/d |
<結果>
試験終了前の治療中断
・rotation group5名(21%)
・combination group6名(23%)
中断理由
・臨床症状悪化6名
・有害事象2名
・疼痛管理不十分3名
ベースライン→1週間後
Rotation group(n=24→20) | Combination group(n=26→19) | |
---|---|---|
フェンタニル投与量median | 50mcg/h(range 25 to 200mcg/h) | 25mcg/h(range 25 to 100mcg/h) |
オキシコドン投与量median | なし | 30 mg/d(range 20 to 80 mg/d) |
Maximal pain | 6.2→4.7 | 6.5→4.8 |
Minimal pain | 2.9→2.0 | 3.0→1.8 |
Current pain | 5.3→3.4 | 4.7→2.5 |
Relief from pain | 2名(8%)→名10(42%) | 6名(23%)→名16(62%) |
Treatment success | 11名 | 12名 |
レスキュー使用率Rescue analgesics were required | 50% | 69% |
試験期間中の投与量変更 | 29% | 38% |
薬剤関連有害事象 | 50% | 54% |
便秘constipation | 17% | 42% |
general activity, mood, walking, work, social relation, sleep and enjoyment of lifeなどについては両群で同等
ディスカッションより抜粋
・rotationとcombinationは疼痛コントロール/患者満足度において、有効性に差はないようであった
・いままでの文献によると、2つの強オピオイドの同時使用は推奨されていない。複数の強オピオイドを処方する理論的根拠(rationale)は限られており、治療の重複とされる。
・実際の臨床においては、強オピオイドを併用して用いることが一般的(common)。1つのオピオイドを増量することを不本意とされるためだと思われる
・Relief from painは併用群62%(>単独42%)だが、統計的有意差はない。本研究は2種のオピオイド併用による相乗効果(synergistic analgesic effect)を検討するための研究デザインではない。
・経皮フェンタニルおよび経口オキシコドンの併用はコントロール不良のがん性疼痛の治療法として、合理的な選択肢となることを示している。
・フェンタニルはμオピオイド受容体に結合、オキシコドンはκ受容体アゴニストであり、相乗効果の可能性がある
・オピオイド療法は、鎮痛効果と有害事象との間でバランスをとり、個別に用量設定を行う必要があり、オピオイドローテーションや併用療法はすべての患者に試みることができ、リスクとベネフィットを患者と議論するべき。
<感想>
強オピオイドを2種併用することは許容されるのか?という疑問に対する答えといえるかどうかは難しいところでしょうか。
治療期間はたった1週間。n数も少なく脱落が約2割。
これをどう解釈するか…。
フェンタニル単独群では便秘が少なくなっており、やはり経口オピオイドよりフェンタニルパッチのほうが便秘は少ないようです。
気になったのは、試験期間中の投与量変更とレスキュー薬の使用率が併用群のほうがやや多かったこと。単独より併用のほうが用量調節が難しいと言えるかもしれません。
このデータだけで併用を推奨するのはちょっと弱いかなぁ…という印象です。
ただ、コントロール不良で痛みに苦しんでいるがん患者さんを救う手段は多いにこしたことはありませんので、このような治療法の検討は評価されるべきだと思います。