pharmacist's record

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SU剤と死亡リスク(PLoS Med 2016)

The Association between Sulfonylurea Use and All-Cause and Cardiovascular Mortality: A Meta-Analysis with Trial Sequential Analysis of Randomized C... - PubMed - NCBI
PLoS Med. 2016 Apr 12;13(4):e1001992.
背景:SU剤はT2DMの安価かつ効果的な治療法だが、死亡リスクや心血管イベントに関して相反するデータが報告されている。
目的:SU剤の安全性を評価

研究デザイン:RCTのメタアナリシス(52週以上の試験期間が対象)
P:T2DM
E:SU剤(glibenclamide, glimepiride, glipizide, and gliclazide)
C:食事療法、プラセボ、他の血糖降下薬
O:全死亡、心血管死

評価者バイアス:"Two investigators independently evaluated"

出版バイアス:言語制限[英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、日本語、ポルトガル語]。未発表の研究も検索したと記載あり。Funnel plotで評価。

元論文バイアス:コクランのツールで評価[①random sequence generation ②allocation concealment ③blinding ④incomplete outcome data ⑤selective reporting ⑥other bias(メーカーの資金提供を受けたか、など)]


<結果>
47試験を解析( 37,650 patients (16,037 randomized to sulfonylureas and 21,613 to comparators). There were 890 all-cause deaths, 354 cardiovascular deaths, 589 myocardial infarctions, and 275 strokes)

各スタディの試験期間は12~133ヶ月
平均年齢57歳
平均HbA1c7.2%(6.8-12.2%)

SU vs Control(全データ) 2年以上フォローアップ
全死亡 OR1.12(95%CI 0.96 to 1.30) I2=0% OR1.05(95%CI 0.89 to 1.24])
心血管死 OR1.12(95%CI 0.87 to 1.42) I2=12% OR1.07(95%CI 0.83 to 1.39)
心筋梗塞(MI;myocardial infarction) OR0.92(95%CI 0.76 to 1.12) -
脳卒中 OR1.16(95%CI 0.81 to 1.66) -

SU vs (placebo or diet) SU vs active comparators
全死亡 OR0.97(95%CI 0.71 to 1.33) I2=70% OR1.16(95%CI 0.98 to 1.38) I2=0%
心血管死 OR1.01(95%CI 0.68 to 1.51) I2=67% OR1.18(95%CI 0.87 to 1.61) I2=0%

   

<感想>
Placebo/Dietとの比較試験はほとんど無いんですね。Fig3,Fig4を見ると3試験のみで、90年代後半の古い試験。UKPDSの結果が大きなweightを占めています。他の2つはリスク上昇傾向ですが、イベント数が少なすぎるといったところでしょうか。

他の血糖降下薬と統計的有意差はついてないとしても、微増傾向にはあるようです。明らかなリスク上昇はなさそうだということはわかりましたが(心血管死を減らせないという言い方もできますが)、結論の" Current evidence supports the safety of sulfonylureas"という記載はどうでしょう。安全と言い切っていいものなのかどうか…。
とくに高齢者に使用する場合、低血糖リスクが問題となることも多いかと思います。高齢者のデータだけを抽出したらどうだったのか気になるところですね。