pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

類似のメタアナリシスで、異なる結果が出ることがある?

Systematic Differences between Cochrane and Non-Cochrane Meta-Analyses on the Same Topic: A Matched Pair Analysis. - PubMed - NCBI
PLoS One. 2015 Dec 15;10(12):e0144980.

背景:コクランレビューはバイアスを最小限にするなど厳密な方法論により精度向上に努めている。コクランレビューとコクラン以外のメタアナリシスにおいて結果に違いが生じるかどうか検討されていない。

方法:心血管イベントに関するコクランと非コクランのレビューを比較。同じアウトカム/介入方法でマッチしたペアを同定。
・異なる結果となったものの頻度
・エフェクトサイズ、統計的精度の違い
・それぞれのレビューの二次引用の頻度
などを比較。

<結果>
40対のマッチしたレビューを同定
出版年数、解析した研究の数、平均サンプルサイズが類似

単一の臨床試験の総計は344試験
コクランレビューにのみ含まれたのが111試験(32%)
非コクランレビューにのみ含まれたのが104試験(30.2%)
両方のレビューに含まれたのが129試験(37.5%)
(各レビューの詳細はtable1)


マッチしたペアのレビューのうち37.5%は結果が異なっていた
7ペア:結果の有意差の有・無が異なる(コクランで有意差無しが6試験、非コクランで有意差無しが1試験)
5ペア:エフェクトサイズが20%以上異なる(エフェクトサイズは両方向へシフト;Shifts in the direction of the ES (i.e., protective to harmful/null, or vice versa))
3ペア:エフェクトサイズが2倍の差(エフェクトサイズは同じ方向にシフト;Shifts in the magnitude of ES but in same direction)
(詳細はtable2)



<感想>
興味深い知見です。
同じ介入/アウトカムの2つのメタアナリシスにおいて双方に含まれた文献は3分の1くらいしかないとは…。
分析した文献の種類/数が異なっていれば、結果もかわってしまいますよね。
そして、このような場合、どちらのレビューが有用な知見といえるのか??

メタアナリシスの解釈は難しいと感じていましたがこれは困りました…。

偏見ですが、個人的にはコクランレビューは薬の評価に厳しいという印象があります。
コクランが有効と評価しているものは、比較的そのまま受け入れてしまいたくなる一方で、コクランが無効と評価しているものは、本当かな?とちょっと疑いたくなったりと、個人的なバイアスがおもいきりかかってしまっています笑

こんな浅い読み込みではいけないと思いながらも、文献をじっくり読み込む時間もなく、どうしたものかと…。
自分の能力不足が大きな要因なので、もっと精進したいと思います!


以下追記----------------------

ネット上で行われているジャーナルクラブJJ CLIP第31回でこの文献が取り上げられました。
抄読会31「コクランとnon-コクランで結果が違う!?」 - TwitCasting

答え合わせをするような感覚で聴いてました笑。

少し追記させて頂きます。

メタアナリシスの発行年の違いは重要。2~3年の差は大きい。エビデンスの賞味期限は5年。
→自分も多少意識してましたがそんなに大きな影響はないかなぁと思ってました汗。たしかに心血管イベントがらみのエビデンスは続々と出ますしね。

・Fig3よりエフェクトサイズがコクランのメタアナリシスのほうが小さい傾向にあることがわかる(縦軸がコクランで、傾きが小さいため)。
→自分はこの図はまったく意味不明だったので勉強になりました。


あとはやはり気になったペアのメタアナリシスをそれぞれ読んでみるのがいいでしょうね。
個人的にはpair22が気になりました。
抗凝固薬の介入で1年死亡率がアウトカム、発行年が同じでコクランが有意差無し、非コクランが有意差あり
コクランのほうが組み込んだ試験が少ないことで結果がかわるということですね。
非コクランでのみ組み込んだ試験が5RCT、コクランでのみ組み込んだ試験が1RCT、共通が4RCTです。
統計的に有意かどうかの違いは起こりえるかもしれないですね。

個人的には結果が異なっていた(とくに有意差あり/なしの差)メタアナリシスのCOIがどうだったのかも検討して欲しかったかな。もしかしたら相関があったりして笑

ペーペーの自分としてはメタアナリシスの吟味は難しすぎるのですが、メタアナリシスはエビデンスを集めた集大成だからこれだけ読んでおけばOKというのではなく、さまざまな文献に目を通したほうがいいと思います。
観察研究だから読まなくていいというわけではないですしね。

なにかのテーマについて詳しく調べたいのであれば、Pubmedで検索して、引っかかった文献を読みまくるのが良いと自分は思います。そんな時間どこにあるの?という感じですけど…。

なにはともあれJJ CLIPのジャーナルクラブ、毎度のことながら勉強させていただきました!