リスク比(risk ratio)とレート比(rate ratio)の違いについて
コホート研究で追跡期間がバラバラだったりすると、リスク比で評価することが適当とは言えなくなるようです。
仮想研究)
ある違法なドラッグの使用の有無と死亡リスクを検討した前向きコホート研究
違法ドラッグ使用あり:E群(n=10)
使用なし:C群(n=10)
E群
3名:追跡期間10年で死亡なし
5名:追跡期間3年で死亡なし
1名:追跡1年で死亡
1名:追跡2年で死亡
C群
7名:追跡期間10年で死亡なし
1名:追跡期間6年で死亡なし
2名:追跡10年で死亡
(追跡期間にこんなに大きなバラつきのある極端な研究は無さそうですが…)
<リスク比risk ratio>
(E群の死亡数/E群の人数)/(C群の死亡数/C群の人数)
E群は10名中2名死亡、C群は10名中2名死亡ですから、
リスク比は1となります。
<レート比incidence-rate ratio>
(E群の死亡数/E群全員の追跡期間の合計)/(C群の死亡数/C群全員の追跡期間の合計)
(2/48)/(2/96)=2
レート比は2となります。
リスク比は1で両群に差はないのですが、レート比は2となり、年間死亡率はE群のほうが高いといえそうです。
たとえば、寿命が長い集団と、寿命が短い集団では、認知症になる人数の割合は寿命が長い集団のほうが多くなりそうです。ただそれは寿命が長い集団は追跡期間が長くなる分、イベントが増えるのであって、必ずしも発症率が高いかどうかはわかりません(寿命が短い集団は認知症発症する前に死亡してしまうケースが増える)。
疫学研究を読み解く上で、追跡期間に差がないかどうかについてもきちんとチェックする必要があると思いました。