DPP4iとGLP1アナログを併用する治療法をお目にかかったことがないのですが、ちょっと調べてみたいと思います。
DPP4iとの併用適応 | 詳細 | |
エキセナチド(バイエッタ) | × | 効能に記載無し、重要な基本的注意に「DPP4iとの併用は未検討」 |
持続性エキセナチド(ビデュリオン) | × | 効能に記載無し、重要な基本的注意に「DPP4iとの併用は未検討」 |
リキシセナチド(リキスミア) | × | 効能に記載無し、重要な基本的注意に「DPP4iとの併用は未検討」 |
リラグルチド(ビクトーザ) | ? | 効能は「2型糖尿病」とのみ記載(併用制限の記載なし)、重要な基本的注意に「本剤とDPP-4阻害剤はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない」 |
DIはこんな感じです(H27.10時点)。
この情報だけでは、併用の可否について評価できないので、文献検索です。
A randomized non-inferiority study comparing the addition of exenatide twice daily to sitagliptin or switching from sitagliptin to exenatide twice ... - PubMed - NCBI
Diabet Med. 2012 Nov;29(11):e417-24
ランダム化非劣勢試験
P:シタグリプチンとメトホルミンで血糖コントロール不十分なT2DM
E:メトホルミンはそのまま継続で、シタグリプチンをプラセボに切り替え、エクセナチド追加(SWITCH) (n=127)
C:メトホルミンとシタグリプチンはそのまま継続で、エクセナチド追加(ADD) (n=128)
O:プライマリアウトカムとの記述は抄録にないが、HbA1cを評価している。代用のアウトカム。
試験期間:20週
非劣勢マージン:0.4%(信頼区間の上限が0.4%を超えなければ非劣勢)
SWITCH | ADD | |
---|---|---|
HbA1cベースラインからの変化 | -0.38% | -0.68% |
HbA1c<7% 達成率 | 26.6% | 41.7% |
HbA1cのベースラインからの変化値(SWITCH vs ADD):+0.3%(95%CI 0.07-0.53)
ADDに対してSWITCHの非劣勢は示されず。
(HbA1cの減少の度合いは、ADD>SWITCH、上限が非劣勢マージンの0.4%をこえている)
抄録に有害事象についての比較データは記載なし。
というわけですが、代用のアウトカムであるHbA1cを評価して、非劣勢が示されなかっただけなので、GLP1とDPP4iの併用を推奨するというのは早計です。安全性が不透明な併用療法をあえて行って、HbA1cを約0.3%下げることにどれだけの意味があるのかを考えなくてはいけないと思います。
Combination exenatide-sitagliptin therapy used with glipizide in a patient with type 2 diabetes mellitus. - PubMed - NCBI
Am J Health Syst Pharm. 2012 Jun 15;69(12):1044-8.
エクセナチド・シタグリプチン・グリピジドの投与を受けたT2DM患者のケースレポート
患者:55歳女性、204ポンド(約90kg)
主訴:口渇polydipsia
血糖値:450 mg/dL
HbA1c:13.4%
T2DMと診断、メトホルミン500mg錠を1日2回投与(1000mg/d)
→肝機能数値上昇によりメトホルミン中止
→シタグリプチン100mg1日1回投与
→グリピジド追加、投与量調整
半年後
HbA1c9.3%に低下、体重が14ポンド(6.3kg)増量
→エクセナチド10μg1日2回 追加
→2か月後、10ポンド減量、血糖値低下にてグリピジドの投与量減少
→7か月後、HbA1c7.4%
こちらはケースレポート
シタグリプチン、グリピジド(SU剤)にエクセナチド追加でうまくコントロールができた症例です。
上記のようにDPP4iとGLP1の併用がうまくいくケースもあるかもしれませんが、プライマリケアで行う治療法としてはデータ不十分といったところでしょうか。コントロール不良のT2DMは専門医に診て頂いたほうが良いのではないかと思います。
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