pharmacist's record

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眠気が少ない花粉症薬は?(抗ヒスタミン薬と鎮静)

添付文書上、眠気を催す薬は注意喚起が記載されます。

花粉症等で広く用いられている抗ヒスタミン薬は眠気やインペアードパフォーマンスが問題となることがあります。

第2世代の抗ヒスタミン薬の運転に関する注意

添付文書に記載なし ロラタジン、フェキソフェナジン
自動車の運転など危険を伴う機械の操作に注意 ベポタスチン、エバスチン、エピナスチン
自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意 オロパタジン、セチリジン、レボセチリジンなど

脳内のH1受容体の占拠率が小さい非鎮静性の薬剤は眠気が少ないと考えられています。

Central nervous system effects of the second-generation antihistamines marketed in Japan--review of inter-drug differences using the proportional i... - PubMed - NCBI
PLoS One. 2014 Dec 12;9(12)
Proportional Impairment Ratio (PIR)を測定し、抗ヒスタミン薬による認知精神運動機能への影響を評価

<結果>

薬剤 PIR(95%CI)客観的評価 PIR(95%CI)主観的評価
フェキソフェナジン(60~360mg) 0.00(0.00-0.49) 0.00(0.00-2.57)
エバスチン(10~30mg) 0.00(0.00-1.91) 3.9(0.00-32.97)
セチリジン(2.5~20mg) 1.31(0.46-3.76) 6.38(0.9-)
レボセチリジン5mg 0.00(0.00-4.55) 0.00(0.00-13.92)
ロラタジン(10~40mg) 3.15(1.12-8.88) 0.00(0.00-4.48)
オロパタジン(5~10mg) 2.05(0.00-14.12) 0.00(0.00-)
メキタジン(5~15mg) 7.5(2.13-26.92) 0.00(0.00-24.57)

エピナスチンやベポタスチンが気になるところですが、データがありません。
添付文書上、リスクが低いとされているロラタジンが意外と鎮静あり。ただし、40mg投与群が足を引っ張っているように思います(Figure 5より)。その点、高用量投与も検討されたフェキソフェナジンは鎮静の影響がもっとも少ないと考えて良いようです。
「CLINICAL STUDY SUPPORT, Inc., which some authors belong to, was funded by Sanofi.K.K. for data collection and analysis as well as reporting. The funder had no role in study design, data collection and analysis, decision to publish, or preparation of the manuscript.」との記載もあり、サノフィ(フェキソフェナジンのメーカー)とのCOIがあると見て良いのかなと思いますが、研究上役割はないとされています。