熱中症発症のピークは過ぎたと思いますが、あいかわらず暑いです。。。
熱中症
熱放散と熱産生のバランスが崩れて体温が上昇。
Ⅰ度(日射病・熱けいれん) | めまい、立ちくらみ、大量発汗、四肢の痛み、こむらがえり、生あくび、通常38℃以下 |
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Ⅱ度(熱疲労) | 倦怠感、頭痛、嘔吐、判断力低下、通常40℃をこえない |
Ⅲ度(熱射病) | けいれん、昏睡、意識障害、横紋筋融解症、腎障害、肝障害、DIC、40℃をこえることあり |
発症時期:梅雨明け~8月上旬に多い
発症時間:正午~15時ごろ
「気温・湿度が高い」「風が弱い」「日射が強い」→身体からの熱放散を妨げ、熱中症リスクとなる。
気温、湿度、風、日射・輻射などの気象条件を組み合わせた暑さ指数(WBGT)が推奨されている。
年代別の典型例としては、
若年者 | スポーツ(屋外で多い) |
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中年 | 労働(屋外の肉体労働で多い) |
高齢者 | 日常生活の中で非労作的に起こる |
発症までの経過が2つに分類
労作性熱中症 | 高温多湿下での過度な運動や労作で発症する。若年~中年の健康な人が短時間で発症、治療反応性良好 |
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非労作性熱中症 | 日常生活の中で徐々に進行(数日かけて進行することも)。精神疾患、高血圧、糖尿病、認知症などの基礎疾患を有する高齢者に多い |
熱中症のリスクについての文献。
Heat-related illness. - PubMed - NCBI
Am Fam Physician. 2011 Jun
Table2,3にリスクファクターが記載されています。
身体・疾患 | 15歳未満、65歳以上、認知機能障害、心疾患、呼吸器疾患、精神疾患、肥満、身体・運動障害 |
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環境 | エアコンの制限、熱い日中の屋外活動、都市部や上層階に居住 |
薬剤 | アルコール、α作動薬、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、BZ系、β遮断薬、CCB、利尿薬、TCA、フェノチアジン、下剤など |
高齢者→発汗機能の低下や皮膚血流低下により体温調節機能が低下(皮膚の血流を増やすことで熱放散を高めることができにくくなる)
肥満→皮下脂肪により効率的な熱放散が妨害
抗コリン作用→発汗抑制
アルコール、利尿剤→利尿作用による脱水
…といったところでしょうか
こちらはオッズ比についても記載あり
Prognostic factors in heat wave related deaths: a meta-analysis. - PubMed - NCBI
Arch Intern Med. 2007 Nov
熱波関連の死亡におけるリスクと防御因子の観察研究のメタ分析
ファクター | 死亡リスクOR(95%CI) |
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寝たきり | 6.44(4.5-9.2) |
毎日、家から出れない | 3.35(1.6-6.9) |
自分の世話ができない | 2.97(1.8-4.8) |
精神疾患 | 3.61(1.3-9.8) |
心血管疾患 | 2.48(1.3-4.8) |
呼吸器疾患 | 1.61(1.2-2.1) |
自宅でエアコン使用 | 0.23(0.1-0.6) |
涼しい場所を訪問 | 0.34(0.2-0.5) |
社会的な交流を増やす | 0.40(0.2-0.8) |
シャワーや入浴の回数を増やす | 0.32(0.1-1.1) |
扇風機の使用 | 0.60(0.4-1.1) |
観察研究のメタ解析ということで、交絡因子も考える必要があります。
精神疾患があれば、抗コリン作用のある抗精神病薬、TCA、BZ系などの発汗作用の低下を招く薬剤を服用している可能性が高く、これらの薬剤が影響している可能性もあります。
利尿薬の服用があれば、脱水をきたしやすいのでリスク因子となります。
この文献を見ると、屋外に出たほうがリスクが低いようにもとれますが、屋外に出る元気のないような方でリスクが高いと理解したほうが妥当かと思います。
やはり心配なのは独居の高齢者です。非労作性で徐々に発症するようなので、気づいたときには重症ということもありえます。熱中症の予防にはエアコンによる室温調整が有効ですが、高齢の方はエアコンを好まない人も多いように見受けられます。有効性は落ちますが、扇風機の使用も熱中症の死亡リスクを減らす傾向にあるのでエアコンを嫌がる場合は、扇風機を使ったほうが良いと思います。介助がなくても入浴が可能な場合は、シャワーを浴びたりするのも良いのではないでしょうか。