pharmacist's record

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抗真菌薬配合シャンプーはフケ症に効く?

フケ症

頭皮で作られた細胞はいずれ古くなって、角質層へと押し上げられて剥がれ落ちる(=フケ)

細胞が生まれ、剥がれ落ちるまでのサイクルは1カ月程度。この周期が短くなるとフケの量が増える。

周期が短くなる要因は、
・不規則な食生活
・睡眠不足
・ストレス
→皮脂の分泌が過剰になり、フケの原因菌が皮脂を分解して刺激物質ができて、この刺激により周期が短くなる。

パラパラ落ちる乾性タイプと、頭皮にくっついてベタベタする湿性タイプがあり、湿性タイプは皮脂分泌が多く、脂漏性皮膚炎の軽症型であることが多い。

皮脂は洗髪後1日以内には洗髪前の量に戻る。
洗髪により皮脂を除去し、皮脂がたまらないようにすることが大事。少なくとも1日おきに洗髪。低刺激のシャンプーなら毎日洗髪可。

<フケの予防>

  • 規則正しい生活
  • ビタミンBの摂取(【B2:レバー、うなぎ、ほうれん草、卵、納豆、乳製品】【B6:レバー、バナナ、まぐろ、かつお、鮭、さんま】)
  • 低刺激性のシャンプーや石鹸を使う
  • 脂っこい食事、アルコール、コーヒーを控える(皮脂の分泌を促進するのを防ぐ)

フケ原因菌とされるM.furfur(マラセチア)に抗菌活性のあるイミダゾール系抗真菌剤が有効。日本では、医薬部外品として、抗真菌剤入りのシャンプーも販売されています。

 

CiNii 論文 -  0.75%硝酸ミコナゾール配合シャンプーのフケ症に対する臨床評価―多施設共同一般臨床試験
フケ症60名(除外基準:ステロイド外用剤、抗真菌剤内服、紅斑が高度な重症例)。
硝酸ミコナゾール0.75%配合シャンプーを従来どおりの洗髪回数で使用(洗髪回数が少ない場合は、週3日以上)。
ヘアトニックや育毛剤は禁止

60名中、2名は来院無しで評価できず、6名が試験中止(本人申し出4名、妊娠1名、かゆみの副作用1名)、プロトコル逸脱3名。
有効性評価対象49例+副作用(かゆみ)で逸脱の1例
症状改善度
フケ:消失19例、軽減21例、不変9例。改善率82%。
かゆみ:消失27例、軽減8例、不変12例。改善率74%。

結果を見るとかなり有用性が高いような気もしますが、対照群がないのでなんともいえません。
洗髪回数が3~4日/週の群より、5日以上/週の群のほうが有効性がやや低かったという点も気になります。

 

A double-blind trial of 1% ketoconazole shampoo versus placebo in the treatment of dandruff. - PubMed - NCBI
こちらはDB-RCT
P:フケ症の患者176名
E:1%ケトコナゾールシャンプーを週に2回
C:プラセボ
4週間の治療にて、good or excellent result ケトコナゾール80%vsプラセボ23%。
アブストではアウトカムがはっきりわかりません(かゆみなのか、フケの量なのか)。
欧米ではフケ症を適応として、ケトコナゾールシャンプーが医療用医薬品(2%製剤)、一般用医薬品(1%製剤)として販売されているようです。

 

国内では、ケトコナゾール2%(クリーム/ローション)がフケ症の重症型とされる脂漏性皮膚炎に適応が通っており、1日2回塗布により、改善率はローション73.8%(45/61)、クリーム71.4%(45/63)となっています。

 

脂漏性皮膚炎

頭皮、髪の毛の生え際、鼻の脇、耳の後ろ、顔のTゾーン、脇の下など皮脂の分泌の盛んな部位に湿疹を生じる(軽症ではフケ症)。皮膚が赤くなったり、ボロボロとはがれたり、かゆみを生じることもある。

<治療>

  • ステロイド外用薬→抗炎症により、即効性あり。中止により再燃しやすい
  • 外用抗真菌剤→脂漏性皮膚炎の原因菌とされるマラセチアに作用。即効性はないが、中止後の寛解期間がステロイド外用薬より長く持続

 その他、ビタミンB2製剤のリボフラビン(ハイボンなど)、ビタミンB6製剤のピリドキサール(ピドキサールなど)、ビタミンH製剤のビオチンが脂漏性皮膚炎に適応が通っています。

 

Topical antifungals for seborrhoeic dermatitis. - PubMed - NCBI

Cochrane Database Syst Rev. 2015 May

脂漏性皮膚炎に対する外用抗真菌薬のレビュー。ケトコナゾールとシクロピロックスがプラセボより有効と評価。シクロピロックスというのは、日本のシャンプーに配合されてるオクトピロックスと同系統の作用でしょうか?

この系統の薬は、国内の医療用医薬品としては承認されていないようですが、もし有用な薬であるなら、最近、日本で解禁されたにきび治療薬の過酸化ベンゾイルのように、国内でも研究・開発が期待されます。