pharmacist's record

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甲状腺ホルモンでダイエット?副作用は?

 甲状腺ホルモンは新陳代謝を促進するため、ダイエットを目的とした輸入製品に含有されていることがあります。もちろん無承認無許可の商品です。

 

「ホスピタルダイエット」などと称されるタイ製の向精神薬等を含有する無承認無許可医薬品による健康被害事例について|厚生労働省

 甲状腺ホルモン製剤は、甲状腺機能低下症の患者さんの治療に用いられる薬で、健常者が服用するものではありません。治療する際には、薬が効きすぎて、甲状腺ホルモン値が上昇しすぎていないか定期的にチェックします。効き過ぎると、甲状腺機能亢進の症状として、動悸、頻脈、下痢、イライラ、手指振戦、不眠、食欲増加、体重減少、多汗、生理不順などが起こります。

 厚労省に報告のあった商品に含有されていた乾燥甲状腺末は生理活性の強いトリヨードサイロニン(T3)と血中濃度を維持しやすいサイロキシン(T4)を含んでいます。乾燥甲状腺末を治療に用いることもありますが、一般的に甲状腺機能低下症に用いるのはホルモン量をコントロールしやすいT4製剤です。治療においては、用法用量をきちんと設定してコントロールしますが、このような無許可製品にどの程度の量が含有されているかわかりません。過剰な甲状腺ホルモン摂取により狭心症などの心疾患を誘発する恐れもあります。

 他にも向精神薬や、食欲抑制剤、抗うつ薬、利尿剤などが含有されていたようで、とても気軽に服用して良い商品とは思えません。あらゆるダイエット商法がありますが、このような何が含まれているかわからない商品に手を出すよりは、食生活を改めて毎日ジョギングしたほうが健康的にダイエットできると思います。「そんなことはわかってる!」「それができないから困ってる!」のだと思いますが…。

 医療は着実に進化していますが、ダイエットは永遠のテーマかもしれません。