肺炎は、胸部レントゲンをとって肺に白い影(細菌感染による炎症部位)があるかを見て診断する。一般的にはそんなイメージが抱かれているかと思います。脱水があると、湿潤影が出にくいこともあるようですが、実際、画像診断が決め手となる病気だと思います。
ただし、どんな状況でもすぐにレントゲン検査ができるとは限りません(在宅患者の往診など)。
そこで、検査をしなくてもある程度、肺炎の可能性を予測できるツールとして、Diehrの肺炎予測ツールがあります(J Chronic Dis. 1984;37(3):215-25.)。
〈Diehrの肺炎予測ツール〉
咳が出ている患者さんの随伴症状
- 鼻汁 ー2点
- 咽頭痛 ー1点
- 寝汗 +1点
- 筋肉痛 +1点
- 1日中、痰が出る +1点
- 呼吸数 >25/分 +2点
- 体温 ≧37.8℃ +2点
合計点数と肺炎の可能性
- ー3点⇒0%
- ー2点⇒0.7%
- ー1点⇒1.6%
- 0点⇒2.2%
- 1点⇒8.8%
- 2点⇒10.3%
- 3点⇒25.0%
- 4点以上⇒29.4%
尤度比は、
- ー1点未満:LR0.22
- ー1点以上:LR1.5
- 1点以上:LR5.0
- 3点以上:LR14
バイタルサインによる診断(Ann Intern Med. 2001 Mar 20;134(6):521-9.)としては、
体温37.8℃未満、心拍数100未満、呼吸数30未満のすべてを満たせばLR0.18というデータもあり、バイタルが安定しているなら肺炎の可能性は下がると言えます。
肺炎は身体所見から診断する場合、この症状があれば肺炎といった決め手になるような所見はなく、さまざまな所見を組み合わせて予測することになります。
肺炎になると、発熱、咳、痰、寝汗、息苦しさなどの症状がみられますが、咳がでないから肺炎は否定できるとはなりませんし、これがなければ肺炎を除外できるという所見もありません。高齢者は発熱や咳の頻度が低いですし、マイコプラズマ肺炎は痰を伴わない場合が多いです。レジオネラ肺炎では下痢が25%程度の頻度で起こります。
肺炎は風邪のようなコモンな疾患と似た症状でありながら、見落としてはいけない病気です。症状はさまざまで身体所見で鑑別するのは難しいため、Diehlの予測ツールのような考え方は有用かと思います。