NHKの番組でB型肝炎について取り上げられていたのですが、クリップで主な感染源が輸血、予防接種、母子感染と紹介されていました。主に取り上げたのは母子感染についてだったで、輸血、予防接種についてはほとんど説明がなかったのですが、クリップによる視覚的なアピールは強いです。このような番組を見たら、輸血と予防接種は怖いんだと間違った認識を与えかねません。現代ではむしろ性行為感染症STDとして問題となっています。
【B型肝炎】
血液や体液を介して感染。
※米国CDCによると、
高濃度:血液、傷口滲出液
中濃度:精液、膣分泌液、唾液(性交渉、乳児への食べ物の口移しが問題となる。成人が軽くキスした程度では感染の可能性は低い)
低濃度:汗、尿、涙、母乳
感染後、ウイルスが生体から排除されて治癒する「一過性感染」とほぼ生涯にわたり感染が継続する「持続感染」(HBVキャリア化)とに大別
〈HBV感染経路〉
①垂直感染(母子感染)
HBVキャリアの母親から生まれた赤ちゃんは、出産時に産道で血液を介して感染することがある(遺伝とは違う)。乳幼児は免疫が未熟なため、感染してもウイルスを異物と認識できず、HBVが肝臓に住みつく(肝炎は起こさず無症候性キャリア化)。思春期以降に免疫が発達し、リンパ球がウイルスを排除しようと肝細胞ごと攻撃し肝炎発症。約10~20%が慢性肝炎に以降し、炎症の慢性化が線維化をきたし肝臓がんのリスクとなる。
※1986年母子感染防止策により母子感染は激減
HBVキャリアの母親から生まれた赤ちゃんに出生直後にHBsヒト免疫グロブリン(HBIG)、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種。ワクチンはさらに生後1ヶ月、生後6ヶ月で接種。
母親が、HBs抗原陽性ならB型肝炎母子感染防止対策を!
HBs抗原(+)、HBe抗原(+)⇒母子感染率ほぼ100%、キャリア化率80~90%
HBs抗原(+)、HBe抗原(-)⇒母子感染率 約10%、キャリア化率まれだが生後、劇症肝炎のおそれがあるので注意
HBVキャリアの母親の授乳について
母子感染予防対策をきちんと行えば授乳制限は不要とされている。ただし傷があったり出血している場合は感染を防御できない量のHBVが赤ちゃんの口に入るので控える。
②水平感染
性交渉、不衛生なピアスの穴あけや入れ墨、注射器の共用(麻薬・覚せい剤)、医療従事者の針刺し事故、乳幼児への食べ物の口移しなど
※性交渉については、パートナーがHBVキャリアの場合、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種をしておくことで感染を予防する手段も。(成人のHBV感染のほとんどは性交渉)
※集団予防接種での感染は、昭和33年に注射針について、昭和63年に注射筒について、被接種者ごとに取り替えるとなっており、現在の予防接種は問題ないと考えられる。
※輸血に関しては、1972年よりHBs抗原検査、1989年よりHBc抗体検査が行われ、安全性の確保に努めているが、ごくまれに年に数例程度、輸血による感染は起こっている。
〈B型肝炎の経過〉
①成人がHBVに感染した場合(一過性感染)
・70~80%⇒不顕性感染
・20~30%⇒感染後1~6ヶ月の潜伏期間を経て、急性B型肝炎を発症
急性肝炎の症状:全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、黄疸(白目が黄色くなる、尿の色が濃い(ウーロン茶様)、皮膚の黄ばみ)、皮疹、関節痛、発熱など。肝臓の腫大による右背部の鈍痛や叩打痛がみられることも。
急性B型肝炎のうち約1%が劇症肝炎をおこす⇒急性型の救命率約7割、亜急性型の救命率約3割
※最初の症状に気づいてから肝性脳症が現れるまでの期間が10日以内の場合(急性型)、11日以降の場合(亜急性型)に分類
急性B型肝炎のうち約10%がキャリア化(従来、キャリア化は稀だったが、欧米に多いジェノタイプAの感染増加によりキャリア化が増加傾向)
②HBV持続感染(乳幼児の感染や急性肝炎のキャリア化)
出生時や乳幼児にキャリアになると、10代~30代の間に肝炎を発症するが、症状が軽いため気づかないことも多い。数年のうちに自然に治まる。
・80~90%は無症候性キャリアとして慢性化はしない。
・10~20%は肝炎が持続し、慢性B型肝炎へ。放置すると自覚症状がないまま数年~数十年の経過を経て、肝硬変、肝臓がんへと進行することがある。時に慢性B型肝炎の急性憎悪により急性肝炎症状をきたすことあり。
厚生労働省としても肝炎対策として、ウイルス検査の促進も行っています。
- 不特定多数の方と性的な関係を持った方
- 家族にB型肝炎の方がいる場合
- 過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、肝炎ウイルスの検査を受けたことがない方
などなど、感染が疑われる場合はB型肝炎ウイルス検査を検討してみると良いかと思います。地域によって対象者等が異なるようですが、無料で検査を受けられるケースも多いようです。