pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

ピッキング時のヒヤリハット!

薬の種類が増えてきて、ややこしくてもうついていけない!と思う今日この頃(ただの老いという説もある)


突然ですが処方せんがきました!(唐突)


ジャディアンス10mg 1錠
テネリア20mg 1錠
1日1回 朝食後 30日分

メトグルコ500mg 2錠
1日2回 朝夕食後 30日分

ランタスXR注ソロスター450単位 1キット(30日分相当)
1日1回 寝る前 13単位

ヒューマログ注ミリオペンHD300単位 3キット(30日分相当)
1日3回 朝昼夕食直前 (8-8-8)

(架空の処方で、用法とかもテキトーに書きました)


で、調剤カゴに拾い集めてきた薬がこちら!

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じゃあ、鑑査しましょう。




違う薬がありますね
(まあ、こんな書き方をしたら身構えるので、そりゃみんな気づくでしょうけど…)

間違いは1つ…、と見せかけて、2つ違う薬がピッキングされてます。

1つはランタス
ランタス注ソロスターランタスXR注ソロスターの2種類がありますが、これらは別の薬剤です。
成分はインスリングラルギンですが、XR注は濃度を濃くして吸収が緩やかとなり、従来のランタスよりも安定した血中濃度を維持するということで2015年に登場した薬です。
5年も経っていますし、使用量も多い印象なので皆さんご存知かと思います。
(XR注は他の基礎インスリンとの切り替え時のインスリン単位の互換性がややこしいので添付文書をチェック!)

あと、XR注は空打ち3単位となるため(ほかのインスリン製剤は基本2単位だと思う)、1キットだと微妙に30日分に満たなくなりますね。
(空打ち2単位だとどうなのか?ついては、2019年の医療薬学「ランタスXR注ソロスターの空打ちは3単位でないといけないのか?」をご参照ください)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/45/11/45_610/_article/-char/ja



もう1つはヒューマログ
これも地味に別物ですね。
処方されたのはヒューマログ注ミリオペン"HD"です。
これ、知らない人はうっかり見落とす可能性があるんじゃないでしょうか…?ヒューマログ注ミリオペンしか在庫がない薬局で、はじめてヒューマログ注ミリオペンHDの処方箋を受け付けたら…、HDの文字を見落として「あー、ハイハイ、ヒューマログ注ね、在庫あるで!」って間違えちゃいそう…。
日本中でヒヤリハットが多発してんじゃないの?って同僚と話してました。


ちなみにHDとは、High Doseではなく、Half Doseです。
そっちかい!

HDは0.5単位刻みで使用できるということですね。
用法が(8.5-7.5-8.5)とかだったら、「おや?」って気づけますけど、架空の処方例のように整数だったら取り違えてしまいそうですね汗
(取り違えたところで健康被害につながらないかもしれませんが過誤は過誤…)

ていうか、0.5単位刻みでの製剤を作ったのであれば、ヒューマログ注ミリオペンは製造中止してHD製剤に一本化したほうがピッキングミスは減らせそうな気がします。まあ、自分には思いつかない何らかの理由があるのでしょうけど…。

ちなみに、自分は発売から2年以上経ってから、はじめてHDの実物を拝みました。
そして、HDの存在を知っいてたにもかかわらず、つい先日、処方はHDなのに、うっかりふつうのヒューマログ注ミリオペンをピッキングしそうになりました。
こうやって、ブログに例題として提示すると、ふつうに気づくんでしょうけど、調剤業務におぼれて疲弊した薬剤師の目の前に、処方せん2枚組みの重い処方の中にヒューマログ注ミリオペンHDが紛れてくると、うっかりHDの文字を見落としそうになるんですよね。
気をつけなくては…。


というわけで、ヒューマログ注ミリオペンHDの処方にお気をつけくださいm(._.)m