pharmacist's record

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ニコチンやタールが含有されている一般用医薬品(OTC)が販売されている件について

みなさま、「ネオシーダー」ってご存知ですか?

PMDAに添付文書が載っています。
https://www.info.pmda.go.jp/ogo/J0601012334_01_01

喫煙者向けの鎮咳去痰薬なんですが、飲み薬ではなく、なんと吸煙タイプなんです。
用法は「先端に点火し煙を吸入する。1回1又は2本,1日10本まで。」

なんか、タバコみたいですよね

「ご使用の際,本品を口にくわえフィルターの吸い口を舌先で湿らせてから吸煙して下さい。」と書いてあって、まさにタバコみたいな製品。しかし、一応、薬です。第2類医薬品です。

成分は1本中
塩化アンモニウム:0.003g
安息香酸:0.006g
ハッカ油:微量
カンゾウエキス:微量

そして、驚くなかれ。
その他の注意に
煙中に,ニコチンとタールをわずかに含みます。使用上の注意を守ってご使用ください。
■禁煙目的に使用しないでください。
と書いてあります。

ニコチンとタールが含まれる医薬品…。
禁煙のために使用する禁煙補助薬(ニコチネルなど)にはたしかにニコチンが含まれますが、この製品は禁煙目的ではないようです…。

これはいったい"何者"なのか…。


文献をさがしてみると、
まず、2002年にこんな報告が…
ネオシーダーのニコチン含有状況から見た医薬品としての妥当性の検討
日本公衆衛生雑誌/49 巻 (2002) 9 号p. 929-933
「非麻薬性で習慣性がみられないと説明されているものの,ニコチンを含有していること,使用により本剤に含有するニコチンが体内に移行することがわかった。また,本剤の使用によってニコチンへの依存性が生じ,長期連用を引き起こしていたとみられる 2 例を報告した。」



2014年にはこちら
薬用吸煙剤ネオシーダーの葉中及び主流煙中の有害化学成分と変異原活性の測定
日本衛生学雑誌/69 巻 (2014) 1 号p. 31-38
ニコチン、タール、たばこ特異的ニトロソアミン(TNSA)が検出されたそうです(詳細は上記文献をご覧ください)。
ニトロソアミンって発がん性物質でしたよね。
えー、繰り返しになりますが、これは第2類医薬品です。
2014年の論文の著者は、
「今後,ネオシーダー使用者には,紙巻たばこ製品と同様の有害化学物質の曝露が起こることに留意して欲しい。特に,有害ガス成分は,紙巻たばこ製品の 2 倍近くの曝露量になる可能性があった。また,ネオシーダーを取り扱う薬局等の販売店では,吸い方による医薬品としての効果の変動と共に有害化学物質の曝露の影響についても充分考慮した上で販売に努めて欲しい。」
と述べています。
「最終的に厚生労働省においても本ネオシーダー製品の販売継続を認可する場合,使用の際には,紙巻たばこ製品と同等または,ガス成分に関してはそれ以上の有害化学物質の曝露があることを周知することを要望したい。」
とも…。

玉石混交のOTCワールドのなかで、いちばん気になっていた商品について調べてみました。
何度でも繰り返しますが、これは医薬品という扱いになっています。
有効性についての根拠はちょっと時間がなくて調べていませんが、安全性についてはちょっとどうなの?と思います…。


咳止め薬「ネオシーダー」の製造販売中止および健康被害調査の緊急要請 日本禁煙学会
日本禁煙学会が製造販売中止を求める要請を出したようなのですが、その後、どうなったんでしょうね。詳しい方おられますか???
ネットで検索すると、通販の購入ページがヒットするので、販売中止になってはいないようなのですが…。