ちょっと前の話ですが、SNSかなにかでマスクで低酸素症になるんじゃないかという声があがっているとか…。N95は長時間つけると、けっこう息苦しくなるって話を聞いたことがありますが、ふつうのマスクで酸素不足になるなんてことがありえるのでしょうか?
これについては、JAMAにLetterがあがっています。
さっそくビジアブ!
Peripheral Oxygen Saturation in Older Persons Wearing Nonmedical Face Masks in Community Settings
JAMA. 2020 Oct 30:e2021905. PMID: 33125030
ビジアブに示したとおり、マスク着用前後でSpO2の平均値に差はありませんでした。
呼吸状態の管理とかに詳しいわけではないのですが、そもそも普段健康な人が知らず知らずのうちに低酸素になるっていう状況がちょっと想像しがたいです(実際にはそういうこともあり得るのかもしれませんがサーベイしてません)。SpO2が臨床上有意と言えるくらい低下してくるのだとしたら、まずは「息苦しい!」という自覚症状が出るでしょうし、「呼吸数は増加する」と思います。実際、N95マスクは長時間つけると苦しいって聞いたことがあります(私はつけたことがないのでわかりませんが)。
また、息苦しいからといって、その時点でSpO2が低下しているとも限りません。SpO2が低下しないように、呼吸数を増加させて補おうとするわけですから…
というわけで、予想どおりSpO2は低下しないという結果となりました。
とはいえ、研究にはリミテーションがつきものです。
この研究は小規模な研究です。また、対象者は健康な高齢者でしょう。酸素吸入しているようなCOPD患者さんや、自分でマスクをつけたりはずしたりできないような要介護の患者さんも含まれていません。また、検証したマスクは1種類なので、どんなマスクでも同じ結果になるとは限りません。
1時間の着用ではなく、もっと長時間だとどうなっているのかが気になる人もいるかもしれませんね。
いろんなご指摘があるかもしれませんが、この研究結果を見る限り、少なくとも健康な人たち(高齢者含む)だったら、低酸素を恐れて、人と接するときにマスクをしないというのは、感染リスクというデメリットの方が大きいんじゃないかと思います。