pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

本棚紹介① (がん緩和ケアのフィジカルアセスメント、薬の比較と使い分け100、デギュスタシオン)

本を読んで勉強したい!
でも、なにを読めばいいのかわからない!

という声がしょっちゅう届きま…(記憶を辿る)…、しょっちゅうではないですね。
めったにないかも…。
ですが、そういう迷いを抱えている新人さんは多いのではないかと勝手に想像しています。

現場に出たばかりの若い薬剤師の方はどういう本を買ってるんでしょうね。
書店に行って、選んでいるのでしょうか。
それとも書店に行って勉強のための本を買おうとしたものの、別コーナーに寄り道してマンガを購入して満足し、帰路についているのでしょうか。

そこで、自分の本棚にある書籍を眺め(※1)、オススメの本を選んでみました。

※1 ほんとのところは部屋中に放り出されているというのが現実。読みたいと思ってもどこにあるのかわからずに終わる。


【がん関連】
この領域は個人的には業務上あまり関わりがない領域なのですが、がん領域に詳しい同僚が持っていて、自分も欲しいなと思って購入した本がこちら。

購入してから2~3年経つのですが、ふと気づけば発刊から5年ですか…。
ちょっと古いですけど、いまだにちょくちょく使いますね。
抗がん剤については触れられていませんが、がん関連症状について網羅してありますし、がん患者さんと関わる上で系統的に勉強するのにオススメの一品です。

ほかにもがん関連の書籍はたくさんあると思います。
ただ、自分はあまり関わらない領域なので、これ一冊で十分かなという感じ。
がん領域はガイドラインも充実してますしね。
ネット上にも有用なサイトはたくさんありますので、情報は豊富かと思います。

がんを専門で扱ってる方はこれだけでは足りないでしょうけど…。


【薬の比較関連】
薬の比較本はたくさん売ってますよね。
けっこういろいろ買いましたが、買わなきゃ良かった…というのもちらほら…。
まあ、それくらい薬の比較って難しいんでしょうね。わかりやすさと、どこまで追求するかの間で揺れ動くことになるんでしょうけど、エビデンスベースじゃない本(添付文書・薬理作用ベースオンリー)は今後購入することはないと思います。

買ってよかったなと思う比較本はこちら。

薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100

薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100

もはや説明不要の一冊。
この本はすでに持っている方が多いことでしょう。
わかりやすさを追求しつつ、物足りないと思われないよう、こぼれ話として欄外にプラスαの情報を載せるという構成。
これは新人さんにもオススメですし、ベテランの方でも「復習&エビデンスネタも拾える」ということで有用かと思います。
著者の先生は、このブログの管理人としても有名です。
www.fizz-di.jp

その優しい人柄がSNSの発信からも滲み出ておりますが、とても熱い先生です。
一般の方が、めちゃくちゃな医療情報に振り回されている現状を憂えており、日々一般向けに正確な情報を伝えようと尽力しておられます。
一般向けの情報発信はいちばん難しいですからね。悩ましい問題にチャレンジする姿勢はすばらしいです。


薬のデギュスタシオン 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために

薬のデギュスタシオン 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために

これも話題になりました。
岩田健太郎先生が監修です。
これは薬の比較本というよりは、薬の評価方法を学ぶといいますか、薬の評価に関する姿勢を改める…そんな感じの本です。まずびっくりするのが、巻末のCOI(利益相反)の詳細です。分野別に20名以上の先生が執筆しているのですが、すべての先生のCOIが金額まで載っています。

製薬メーカーのいいなりになって、特に優れていない高額な新薬を使う世の中にメスを入れようということかなと自分は思いました。
個人的には製薬メーカーさんのお話も重宝しますし、同じ医療従事者、チームの一員であり、製薬メーカー無しに医療は成立しないと思っています(←あたりまえだけど)。株式会社として、高い薬を売りたい気持ちもわかりますし、MRさん(営業担当)は本部からキツいノルマを課せられているであろうこともお察しします。
ただ、情報を鵜呑みにすることはできない。
あ、こんなことをいうと、語弊がありますね。うそをついていると思うわけではありませんよ。情報そのものを疑うことはありませんが、評価は鵜呑みにしない。
「○○というデータがあり、この新薬は△△という利点が…」
と言われた場合、○○というデータ自体を疑うことはありません。ただ、そのデータがどれだけ臨床上重要なのかを考えます。また、相反するデータが出ているということもありえます。

で、デギュスタシオンに話を戻しますが、この本は、"薬の比較本として鉄壁の情報"として取り扱ってねという本ではないと思います。20名以上の先生が執筆しており、比較評価の基準も人それぞれでしょう。

この本は、「こうやって同効薬を評価するんだよ」というお手本を大勢の執筆者から学んでくれというメッセージかと思いました。
よって、新人さんにとって使える情報といえるかは正直なところわかりません。ただ、はやいうちからこういう本に触れるのは大事です。考え方を学ぶ本ですね。



さて、長くなってしまいそうなので今回はとりあえずこのへんで。
次回は【論文関連】とか別の領域について紹介してみたいと思います。

ちなみに、今回たった3冊紹介するだけなのに、本を探すのに時間がかかりました。
そして、結局、このうちの1冊がどこにいってしまったのかわからない…。いったいどこへ…。