pharmacist's record

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ステロイド外用剤と皮膚軟化剤(保湿剤) どちらを先に塗る?

これは、個人的にも気になる話題。

Does Order of Application of Emollient and Topical Corticosteroids Make a Difference in the Severity of Atopic Eczema in Children? - PubMed - NCBI
Pediatr Dermatol. 2016 Mar-Apr;33(2):160-4.PMID;26856694
アトピー性皮膚炎のお子様に、ステロイドと皮膚軟化剤のどちらを先に塗布するのが良いのか?という研究です。
アブストの結論を見てみると、どちらを先に塗っても良いのではないかと著者は結論づけています。好きな順番で良いと。

どっちでもいいっていうのは、人によっては嫌がりますが、個人的には好きですね。どっちでもいいなら気楽だなと。こだわらなくてはいけないことが増えると大変ですから。


まあこの結論だけ見て終わり…でもいいのですが、ちょっと中身が気になる論文なのでちゃんとチェックしてみましょう。
RCTシートにまとめました。
f:id:ph_minimal:20180615231127j:plain

ふむ。。。
実はこの研究のRCTシート作成から、日にちが経っているので研究内容を忘れてしまっているのですが、このシートでまとめておくと、比較的パッと思い出しやすいですね。まあ、数日経ったらまた忘れるのでしょうけど。
一応、PECOにして介入と対照に分けているものの、この研究はどちらが対照群ってわけでもないので、介入1、介入2にしたほうがよかったかもしれませんね。
まあ、作成裏話はここまでにして、補足解説していきましょう。


研究参加者に対しては盲検化されていません(investigator blind)。
使用する薬剤は同じで、あくまで順番を変更するだけなので、オープンでもさほど治療効果に影響は与えないような気がします(個人の見解)。

ステロイドと皮膚軟化剤の塗布間隔は15分。
15分もあけたら塗るのを忘れてしまいそう…。ていうか、自分なら忘れちゃうなぁ。

かゆみ止めの飲み薬(H1RA)や経口ステロイドは試験中は禁止
点鼻ステロイドや吸入ステロイドアセトアミノフェン、経口抗菌薬は必要に応じて許可。


使用された外用ステロイドは部位にあわせて下記の2種類

顔;hydrocortisone acetate 1% cream(酢酸ヒドロコルチゾン)
今は日本で販売されていない。かつてはコルテス®という製品(ランクはweak)があったらしい。ロコイド®、キンダベート®(ランクはmediam)よりも弱いステロイド

体;Clobetasone Butyrate 0.05% cream
いわゆるキンダベート®

ともに、剤形はクリームを使用したようです。


皮膚軟化剤Emollient は、
「Aqueous cream」
Aqueous cream - Wikipedia
ウィキペディアによると、英国の薬局方に収載されている皮膚軟化剤だそうです。
一般的な成分は
liquid hydrocarbons
white soft paraffin wax
purified water
emulsifying wax containing sodium lauryl sulphate
cetostearyl alcohol
chlorocresol

乳化剤のsodium lauryl sulphateラウリル硫酸ナトリウムも入ってるみたい。
これについては、NICEのガイドラインにてアトピー性皮膚炎に対して使用するにあたっては皮膚刺激の懸念ありとしています。
Atopic eczema in under 12s | Guidance and guidelines | NICE

↓こちらも参考になります。
Aqueous cream: may cause skin irritation - GOV.UK

試験に用いた製剤を軽く調べてみたら、「そもそもアトピー性皮膚炎のお子様にAqueous creamを皮膚軟化剤として使用することに意義あり!」な様相を呈してきましたね。
これについてもっと深入りしたいところですが、戻ってこれなくなりそなのでこの話題はこのあたりで打ち止めにしておきましょう。
(こぼれ話として、NICEガイドラインでラウリル硫酸ナトリウムはアトピー性皮膚炎に積極推奨はしてないという情報を得ることができたのでよしとしましょう!)


研究のほうに戻りましょう。

一次アウトカムはEASIスコア

EASI(Eczema Area and Severity Index)
0~72点(点が高いほうが重症)
重症度分類は下記のとおり[1]

寛解(clear) 0
ほぼ寛解(almost clear) 0.1-1.0
軽症(mild) 1.1-7.0
中等症(moderate) 7.1-21.0
重症(severe) 21.1-50.0
最重症(very severe) 50.1-72.0

6.6点改善すれば、臨床的に有意な差と言える[2]

[1]
What the Eczema Area and Severity Index score tells us about the severity of atopic dermatitis: an interpretability study. - PubMed - NCBI
Br J Dermatol. 2015;172(5):1353-7. PMID;25580670

[2]
EASI, (objective) SCORAD and POEM for atopic eczema: responsiveness and minimal clinically important difference. - PubMed - NCBI
Allergy. 2012 Jan;67(1):99-106. PMID:21951293


さて、これを踏まえて参加者のベースラインのデータを見ると、中等症のアトピー性皮膚炎の患児のようですね。
結果を見ると(RCTシート参照)、有意差はついていないものの、保湿剤を先に塗ったほうがなんとなく良さげな印象…。
EASIやBSA(面積%)のベースラインが両群で少しズレてますが、これが結果に影響してしまった可能性もあるのでしょうか?ランダム化してもこの程度の症例数だと多少はズレてしまうんですかね…?

ちなみに、この研究はサンプルサイズを計算しており、80%の検出力で中程度のエフェクトサイズを達成するのに必要な症例数は154名と見積もられているものの、参加者は46名です。症例数がぜんぜん足りてないですね。試験完遂率もあまり高くないようですし、有意差がつかなかった理由が、パワー不足のためである可能性も否定できないといえるかもしれません。

どっちでもいいと断言していいのかなぁ…ともやもやする感じがしました。パワー不足でなんともいえない感じですね。保湿剤の種類も日本では違ってくると思うので、そのあたりも外的妥当性に欠けるかもしれません。

ただ、この結果を見ると、もし自分がアトピー性皮膚炎だったら、保湿剤を先に塗るかな…。


あとは…、
そんなことよりね。15分も時間をあけなきゃいけないのか!?ってことのほうが知りたいです。

自分はアトピーではないですが、このような軟膏をけっこう使っているので、患者目線でいろいろ思うところがあります。

まず、塗り薬を塗るのって超めんどくさいです。
可能な限り、一箇所に塗るのは1種類の薬だけにしてほしい!
内服の合剤って「ナニソレ、需要あるの?」って思っちゃったりするんですが(ごめんなさい、怒らないで。1錠飲むのと2錠のむの、そんなに手間はかわらないでしょ。嚥下機能が悪くて1錠でも服用錠数が少ない方が良いという方もいらっしゃると思うのでそのへんはケースバイケース)、塗り薬は一度で済むなら超ありがたいです。2種類の軟膏を15分あけて塗るとか、マジでかんべんしてほしい。そんなの無理。
この領域で合剤っていうと、乾癬に使われるステロイドビタミンD製剤の合剤くらいでしょうか?あれはすばらしい開発ですよね。患者さんたちは喜んだはずですよ。
それ以外だと処方箋で混合指示を出して、薬局で混合することになるでしょう。薬局としては軟膏・クリームの混合は配合変化が~とかいろいろあるでしょうけどね…。
でも、2種類塗るのってめっちゃ大変ですからね!患者さんを代表して言わせてもらいますッ

というわけで個人的には塗る順番よりも、「別々に時間差をあけて塗る」のと、「同時塗布(可能なら混合製剤)」の比較について検討して欲しいです。同時塗布でいいなら、順番とかあんま関係なさそうですしね。できれば混合製剤で検討して欲しいけど…。もしかしたら、すでにそのような研究が実施されているのでしょうか!?今後、調べてみよう!
(今後、調べる=二度と調べない… /今までの筆者の傾向より)