pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

頭が痛いので、いろいろパブってみた

ググるって言葉、凄いですよね。自分はGoogleよりYahoo派なので、厳密にはググってはいないのですが、インターネットで検索する、いわゆる「ググる」という言葉はインターネットを使う人みんなに知れ渡った言葉ではないかと思います。

医学論文検索をもっとポピュラーなものにしたいという気持ちもあり、pubmedで論文を検索することを「パブる」と称して、SNSでちょくちょく使っていたのですが、流行る気配はなく、このまま廃れてしまいそうな気がしているので、論文をお読みになる方々、もしよろしかったら使って頂ければと思います。え?ダサい?じゃあ、カッコよく英語でpubるにしましょうか。まあ、どっちでもいいんですけど、論文検索することが当たり前になるための一環として広まればいいな、なんて思ったり。


さて、最近、頭が痛くなることがあります。

3~4年前にもしばしば頭痛に苛まれていたことがあって、気になって医療機関を受診したら、「肩が凝っているねぇ」とチザニジンを処方されました。
直接、Drから言われたわけではないですが、おそらく緊張型頭痛と判断されたのでしょう。
肩凝りとの関連といえば緊張型頭痛ですよね(ちなみに本人としては肩凝りの自覚はまったく無し)。

その後、しばらく調子がよかったのですが、先日、ちょっとキツめの頭痛があったんです。


痛みを自覚したのは夕方16時ごろ。

どんな頭痛か?
→締め付けられるような重~い感じ。拍動性ではない。痛みの波はほとんどなく、強度は2~3/10くらい。業務を続けられないというほどではないが、できれば休憩したい、という程度。

いつから?
→午後から。いつにまにか痛みを感じていた(←突発ではない)。時間の経過に伴う増悪はほとんどなく、夜まで続いた。21時ごろに30分ほど仮眠したあと、痛みが少し軽減した。翌朝には痛みは感じなくなっていた。

痛む場所は?
→両側のこめかみあたりを中心に全体的に痛い。後頭部にはあまり痛みを感じなかった。
(いわゆる孫悟空の頭の輪のあたり)

随伴症状は?
→無し。吐き気も発熱も無く、ただただ家に帰りたいという症状(願望)のみ。


まあざっとこんなところです。
やはり緊張型頭痛ですかねぇ。

特に薬は飲まずに放置したのですが、薬を使うとしたらどんな薬でしょう?


まず前述のチザニジン。
Tizanidine in chronic tension-type headache: a placebo controlled double-blind cross-over study. - PubMed - NCBI
Headache. 1992 Nov;32(10):509-13.
PMID:1468911
研究デザイン:randomized, double-blind and cross-over study
P:chronic tension-type headache 20~59歳の女性37名。頭痛歴7ヶ月~30年(median 5年)
E:チザニジン1日3回 開始6mg/day→治療効果に応じて、18mg/dayまで増量可
C:プラセボ
O:visual analogue scale, verbal rating scale, number of days free of headache, number of analgesics needed, and the dose of trial medication needed.
治療期間6週(wash-out2週間)

プラセボより有効だったとのことですが、アブストにはプライマリの明記がないですし、どの程度有効だったかの記載がありません。
副作用は軽度で、眠気と口渇drowsiness and dry mouth


6週間連日服用ですので、頭が痛いときに頓服的な飲み方をして効果があるのかは不明。
この研究は全員女性ですが、自分は男性。
あとチザニジンの量が国内よりはるかに多いですね。
この論文をもとに、チザニジンを飲もう!という気分にはならないかな…。


こちらも予防的投与。
Chronic daily headache prophylaxis with tizanidine: a double-blind, placebo-controlled, multicenter outcome study. - PubMed - NCBI
Headache. 2002 Jun;42(6):470-82.
PMID:12167135

P:chronic daily headache (chronic migraine, migrainous headache, or tension-type headache).
(↑緊張型頭痛だけでなく、片頭痛も含まれている。片頭痛のほうが多い)
E:チザニジン 漸増にて最大24mgまで(平均18mg 中央値20mg)
C:プラセボ
O:Overall headache index ([headache days x average intensity x duration in hours]/28 days) was the primary end point.
頭痛日数×平均強度×持続時間/28日間

アブストの結果を見ると、プラセボより優れていたとのこと
改善率を見るとまあまあ効いてますね。

有害事象は、これだけの用量を飲んでいるからか、
眠気47%、浮動性めまい24%、口渇23%、asthenia(無力症)19%
しかし、こちら、アブストには介入群とプラセボでの比較データがありません…

ほとんどが片頭痛患者さんですが、筋肉をほぐすチザニジンに予防効果があるんでしょうか…。用量が多いせいか、眠くなって仕事にならなくなりそうな気もします。そもそも自分は片頭痛ではないと思うので、この論文を元にどうこうってのはないですね。

どうも予防的投与はちょっと気が進まない感じです。


やはり頓服として使うなら鎮痛薬でしょうか
アセトアミノフェンのコクランレビューです
Paracetamol (acetaminophen) for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jun 16;(6):CD011889
PMID:27306653

P:緊張型頭痛(急性期)、18歳以上(片頭痛は除外)
E:アセトアミノフェン
C:プラセボor他の治療薬
O:有効性と安全性

アセトアミノフェン1000mg服用2時間後でpain freeのNNTが22(1時間後ではプラセボと有意差なし)
pain-free or mild painをアウトカムとすると服用2時間後のNNTが10

データが限られてるが500mg~650mgではプラセボに対して優越性を示せず(!???)

paracetamol 1000 mg was not different from either ketoprofen 25 mg or ibuprofen 400 mg (low quality evidence).
となってますが、ケトプロフェンの内服なんて日本にありましたっけ?あまり馴染みがないですね。
イブプロフェンは市販薬にもよく配合されていますが、アセトアミノフェン1000mgとイブプロフェン400mgはnot differentとのこと(ちなみに直接比較試験もあり。Nonprescription ibuprofen and acetaminophen in the treatment of tension-type headache. - PubMed - NCBIJ Clin Pharmacol. 1996 Dec;36(12):1120-5.PMID9013368 こちらではイブプロフェンのほうが有効だったとのこと)

頭痛にはアセトアミフェンというイメージがありましたが、そうでもないなぁという印象。500mg飲んでもプラセボとあまり差がないのかもしれません。びっくりですねぇ。


ではアセトアミノフェンと同じくらい国内で有名な薬、イブプロフェンをみてみましょう
Ibuprofen for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 31;(7):CD011474.
こちらも似たような感じですね。片頭痛は除外

イブプロフェン400mg服用2時間後でpain freeのNNTが14(イブプロフェンもやっぱり1時間後では有意差なし)

1回400mgってことで、やはり国内での使用より多めでしょうか。

アセトアミノフェンイブプロフェンも投与1時間後ではプラセボと差がないということで2時間くらいは効果が出るのに時間がかかるとみて良さそうですね。

一応、アスピリンのコクランレビューも貼っておきますが、データ不足でしょうか。スルーしましょう。
Aspirin for acute treatment of episodic tension-type headache in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 13;1:CD011888.


服用するならイブプロフェンアセトアミノフェンか…というところですが、2時間後の頭痛消失のNNTは10を超えてます。そこまで痛みが強くないなら飲まなくてもいいかなという気も。
実際、この日、頭が痛いなぁと思って業務のちょっとした合間にパパッとコクランレビューのアブストを見て、飲まなくてもいいか~って思いました。まあ、我慢できる程度の痛みだったとも言えますね。


ただ、このような頭痛が頻発するようだと、嫌ですよね…。
そこで、ふと思ったのが、最初に詳細を述べた頭痛が生じた日は、前日の就寝時間が5時くらいだったので寝不足がいけなかったのかもしれないなと…。仮眠にて少し軽減したわけですし。

案の定、あーだこーだ調べているうちに(このブログは何日かに分けて書いているのです)、また1~2/10くらいの頭痛が発生…。その前日も夜更かし気味でした。


では、頭痛と睡眠の関連を調べてみましょう。

とりあえず緊張型頭痛の総説を探してみますと、AAFPのレビューがありました
Tension-type headache. - PubMed - NCBI
Am Fam Physician. 2002 Sep 1;66(5):797-804.
PMID:12322770
sleepというワードは見つからず…。

参考まっでに診断に関する記述がありますね。片頭痛との鑑別って感じですが。
A
・At least 10 previous headache episodes fulfilling criteria B through D; number of days with such headaches: less than 180 per year or 15 per month
B
・Headaches lasting from 30 minutes to 7 days
C
・Pressing or tightening (nonpulsating) quality
・Mild to moderate intensity (nonprohibitive)
・Bilateral location
・No aggravation from walking stairs or similar routine activities
D
・No nausea or vomiting
・Photophobia and phonophobia absent, or only one is present
なるほど。自分の頭痛と合致してますね。

はい、脱線しましたので睡眠と頭痛についてパブりましょう。

Stress and sleep duration predict headache severity in chronic headache sufferers. - PubMed - NCBI
Pain. 2012 Dec;153(12):2432-40
PMID:23073072
観察研究の再分析
対象:patients between 18 and 70 years of age who had at least 4 headache days per month and had stable headache characteristics for 1 year or longer
(二次性頭痛は除外。片頭痛は含まれる)

アウトカム:1日4回、頭痛の重症度を0~10点で評価
Four times a day for 28 days, patients recorded headache severity on a 0 to 10 scale (0= no headache, 10=extremely painful) using a provided diary

ストレスと睡眠時間との関連について分析

むむむ。
詳細は省きますが、睡眠不足(4時間未満)が2日つづくと、頭痛の増悪との関連が強いとされています。
毎日、約8時間睡眠では、頭痛の強度は低くなるとのこと。


Sleep deprivation headache. - PubMed - NCBI
Cephalalgia. 1990 Aug;10(4):157-60.
PMID:2245462
こちらはアブストしか閲覧できない(しかも短い)古い文献ですが、
睡眠消失により引き起こされる頭痛があると…。それは心因性の緊張型頭痛であると…。
まさに自分のことじゃないか、と思いました。


こちらはもうタイトルになっちゃってます。sleep-related headacheとそのマネジメント
Sleep-related headache and its management. - PubMed - NCBI
Curr Treat Options Neurol. 2013 Dec;15(6):704-22
PMID:24132786
こちらは片頭痛についても述べられており、片頭痛は睡眠不足も睡眠過多もトリガーになると。

あとはobstructive sleep apnea(閉塞性睡眠時無呼吸。syndromeを最後につけて、OSASとか略されたりします)について述べられています。
ただ、この場合は朝の頭痛ですよねえ。自分の場合は朝に頭が痛くなることはほぼないですね。いつも午後~夕方からです。
そして、OSASってことでCPAPの話題もでてきました。巷で話題のPPAPとは別物です。

Sleep and headache. - PubMed - NCBI
Curr Treat Options Neurol. 2010 Jan;12(1):1-15.
PMID:20842485
OSASの場合、CPAPによる治療で、頭痛が改善。とのこと
慢性緊張型頭痛においては、睡眠の管理を、みたいなことが書かれています。


ふむ。
やはり、自分の頭痛は、睡眠不足がトリガーになっている可能性がありそうな気がしてきました!

自分なりにいろいろとパブってみた結果、
鎮痛薬やチザニジンの服用はちょっと置いといて、まずは睡眠時間の確保がベストな対策だという結論に至りました。


そういえば!!
ふと思ったのですが、夜更かしをした日って何をしていたかというと、たいていブログを書いているような…(もしくは論文を読んだり)。
これはもう本末転倒ですね。
はやく寝ましょう~。

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