pharmacist's record

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一万歩のウォーキングで睡眠の質が改善?

睡眠って大事ですよね。
不眠症とは無縁の自分にとっては、暇さえあれば眠ってしまうのですが、寝つきが悪い方はさぞお辛いことかと思います。

ある日本のスタディがBMJに掲載されました。

Does subjective sleep quality improve by a walking intervention? A real-world study in a Japanese workplace. - PubMed - NCBI
BMJ Open. 2016 Oct 24;6(10):e011055.

前後比較研究のようです。
490名の健康なボランティアが対象で、介入方法はというと…
毎日、1万歩のウォーキング!

歩幅にもよりますが、1万歩というと5~7kmくらいでしょうか…
自分だったら3日ともたずに脱落しそうですが、介入期間はなんと28日間
歩行速度や歩行距離に制限は設けてません。

日ごろから運動習慣のある人と、運動習慣がない人で分けて分析しています。

アウトカムは、The Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI)

結果はどうでしょう?
Fig2のとおり、ベースラインの歩数+1万歩ではないですね。
運動習慣のないグループでは結局1日1万歩に達していませんが両グループともに介入前と比べて、4000歩くらい多く歩行しているという結果。


睡眠の質についてはtable2

PSQIはやや改善

睡眠潜時(入眠するまでにかかる時間)は…
・運動習慣あり群で1分短縮(ほぼかわりなし)
・運動習慣なし群で6~7分短縮

総睡眠時間はどちらの群も介入前後で6分くらいの増加であまりかわらないですね。


運動習慣がない場合の睡眠潜時6~7分の短縮ですか…(ちなみに自発報告であり、polysomnographyによるものではない)
たいしたことないじゃん!て気もしますが、ベンゾジアゼピンBZDは20分程度の短縮(sleep diaryによる)
(polysomnographyだと10分程度の短縮)
The efficacy and safety of drug treatments for chronic insomnia in adults: a meta-analysis of RCTs. - PubMed - NCBI より



まああくまで前後比較研究なので、なんともいえないところですが、普段、運動してない人においては、どうも寝つきが悪いなって場合に、とりあえず歩こうってのはアリかなと。ただ仕事が忙しすぎて1分1秒が惜しい!という現代社会を生きる人々にはちょっと厳しいかもしれません。毎日、そんなに時間とれないですよね…。

この論文、最後に、
polysomnographyのような客観的評価にもとづいたRCTを計画している。と締めくくっています。
おお、それは楽しみですね。
「歩くだけ」という極めて簡単で安価な介入方法(それなりに過酷、かつ、多大な時間がかかるけれども…。)ですので、RCTでの追加検証も気になるところです。

まあ、自分は1万歩も歩くのはしんどいですけどね…。