pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

ガイドラインだけチェックすればOK?(小児の片頭痛予防薬)

「小児の片頭痛の予防薬でなんかいいのない?」

と尋ねられたらどうしましょう?
うわー、わかんねー!ってなりますよね(なにもかも頭に入っているスーパー薬剤師なら別ですが…)

とりあえず「○○の治療薬」とかを見てみますかね?
たしかあの本は適応外使用についても触れられていた気がします(適応外の薬を勧めるわけにはいきませんが…)。

小児適応のある薬というもの自体、かなり限られてきてしまいますし、正式に片頭痛に適応が通っている薬は国内にはなかったような気もします。

では、ガイドラインを探してみよう!て感じでしょうか?
ガイドラインはシステマティックレビューみたいなものですからね。
薬局薬剤師としてはかなり重宝する医療情報ではないかと思います。


では、ガイドラインを調べてみましょう。

「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」がネット上で閲覧できます。
なんと、そこには小児の頭痛という項目もあるじゃないですかッ!

読んでみましょう。

ななななんと、小児の片頭痛治療薬についての項目があり、急性期治療と予防治療について述べられた項目があります。

シプロヘプタジンやアミトリプチリン、トピラマート、バルプロ酸などが紹介されていますね。

・アミトリプチリンはRCTで評価されていないが、もっとも広く使用されている。
・トピラマートはRCTでよい結果が得られている。

といった感じです(保険適用はないとされています)。

やっぱガイドラインは便利だなぁ~。
調べ物終了!!

となってしまいそうですが、念のため、トピラマートの引用文献を3つチラ見しておきましょう。

Topiramate for migraine prevention in adolescents: a pooled analysis of efficacy and safety. - PubMed - NCBI
Headache. 2006 Nov-Dec;46(10):1503-10.

pooled analysis?
なんでしょうね、これは。
3つのDB-RCTを事後解析したって感じでしょうか…。

片頭痛の小児51名(12~17歳)、topiramate 50, 100, and 200 mg for 26 weeks
1ヶ月の片頭痛頻度、ベースラインからの変化が以下のとおり減少
トピラマート50mg46%(P=.07), 100mg63%(P=.02),200mg65%(P=.04),placebo(16%).

この手の試験の割にはプラセボの効き目がいまいちという印象ですけど、こんなもんですかねぇ。
3つの試験を統合しているみたいですけど、片頭痛の診断基準がブレていないか、など気になる点もあります。アブストだけではよくわかりませんね。


つぎ、
Topiramate in the prophylaxis of pediatric migraine: a double-blind placebo-controlled trial. - PubMed - NCBI
J Child Neurol. 2007 Jul;22(7):829-35.
こちらは単施設のDB-RCTです
P:children with migraine
E:topiramate (n = 22) titrated weekly in 25-mg increments to 100 mg/d
C:placebo (n = 22).
O:the reduction in the mean migraine frequency and severity of headache
試験期間4ヶ月

Pediatric Migraine Disability Assessment Scaleで評価し、プラセボより有意に改善したとのこと。


Randomized, double-blind, placebo-controlled study to evaluate the efficacy and safety of topiramate for migraine prevention in pediatric subjects ... - PubMed - NCBI
Pediatrics. 2009 Mar;123(3):924-34.
P:Adolescents (12-17歳) with a >/=6-month history of migraine
E:topiramate (50 or 100 mg/day)
C:placebo
O:percent reduction in monthly migraine attacks, with the use of the 48-hour rule, from the prospective baseline period to the last 12 weeks of the double-blind phase.
試験期間:12週

これもn数が少ないですね。各群30名程度で、試験完遂できたのはその8割程度です。
100mg/日ではプラセボと有意差がついたが、50mg/日では統計的な差はみられなかったようです。


どうもパッとしない印象ではありますが、これらのRCTを根拠として、トピラマートがガイドラインにも載っております。

まあ、有意差もついてるし、アリっちゃアリなのかなぁって気もしますが肝心なことを忘れていますね。

このガイドラインが発表された2013年以降、新しいエビデンスはでていないのか。
これを確認せずにガイドラインだけで完結してしまうのはちょっと危ないですね。


なんとつい最近、NEJMにこんなDB-RCTの論文がでています。
Trial of Amitriptyline, Topiramate, and Placebo for Pediatric Migraine. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2016 Oct 27.

PECOは、
P:片頭痛の小児 8~17歳(前兆の有無にこだわらない、頻度は28日間で4日以上;Migraine frequency based upon prospective headache diary of 28 days must be ≥ 4)
E1:アミトリプチリンamitriptyline (1 mg/kg/day)
E2:トピラマートtopiramate (2 mg/kg/day)
C:プラセボ 
O:relative reduction of 50% or more in the number of headache days in the comparison of the 28-day baseline period with the last 28 days of a 24-week trial

ガイドラインに載っていたアミトリプチリンとトピラマートの介入試験です。

論文の詳細は割愛しますが、なんと有意差無しです。
プライマリアウトカム:アミトリプチリン52%、トピラマート55%、プラセボ61%

無益だってことで、この試験は早期終了となっています…。
最終解析人数は328名。
lost to follow-upも解析されているので、per protocol解析ではないです。
early trial closureにより解析に含まれていないのが30名ほど。うーん、FASですかねぇ。

有効性は差がないのに、
アミトリプチリンは疲労や口渇が多いですし、
トピラマートはparesthesia(異常感覚)、体重減少が有意に多いという結果。


おやおやおや?
トピラマートやアミトリプチリンはいまいちおすすめできない印象…。
このRCTの結果を踏まえると、ガイドラインがかわってくるのでは?という気もしてきます。

やはり最新の情報を日々アップデートしていくことが大事ですね。