pharmacist's record

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術後患者のオピオイドによる便秘に対するルビプロストンvsセンナ

Lubiprostone vs Senna in postoperative orthopedic surgery patients with opioid-induced constipation: a double-blind, active-comparator trial. - PubMed - NCBI
World J Gastroenterol. 2014 Nov 21;20(43):16323-33.

研究デザイン:DB-RCT(ダブルダミー)、ITT解析(と記載があるがfull analysis set??)
P:整形外科術後の疼痛管理に使用されたオピオイドで便秘をきたした患者
E:ルビプロストン24μg 2cap/日 分2
C:センナ(Sennasides 8.6 mg each tab)2錠/日
O:
①Change in Patient Assessment of Constipation (PAC) - Symptoms
②Change in Patient Assessment of Constipation - Quality of Life
服用期間:6日間
資金提供:武田

Full analysis set:ランダム化が行われた全被験者から、除くべき理由のある最低限の被験者を除外した集団

[PAC]
PAC Symptoms:便秘症状・臨床経過を評価する有効かつ信頼性が高い方法(valid and reliable way)。
12 items with score range 0-4 with lower scores indicating improvement(スコアが低い方が改善)
Abdominal symptoms (4 items), rectal symptoms (3 items) and stool symptoms (5 items).
(↑腹部症状と直腸(?)、便の性状(?)の3つの分類からなる12項目を0~4点で評価した模様)

PAC QOL:0-4 scale with higher scores indicating better QOL
(↑QOLにつてはスコアが高いほうが改善)

<患者選定基準>
7日以上のリハビリ入院を予定している患者
妊娠していないこと
以下の症状のうち1つ以上
[lumpy or hard stools(塊の多い、または硬い便), feeling of incomplete evacuation of bowels(出し切れない?), abdominal cramping(腹部痙攣) or pain straining with movement of bowels or painful bowel movement effort and/or need for manual assistance to have a bowel movement.]
(翻訳に自信がないですが、ゴロゴロした硬い便や、排便時に出し切れない、腸の動きに伴う痛み、痛みを伴う努力排便…といった感じでしょうか。)

<除外基準>
試験登録時の下痢、妊娠、試験薬のアレルギー歴、入院中のCDI(Clostridium difficile infection)、クローン病IBSなどのbowel dysfunction

<Statistical analysis>
constipation symptoms score 0.5unitの差を検出するサンプルサイズは各群29名(α0.05、power80%)

constipation symptoms score:rated (as over the past 24 h) on a 5 point scale from 0 (never) to 4 (always)
(0~4点中の0.5点の差を検出ということでしょうか)


72名登録
ランダム化されたのが64名
ルビプロストン32名→最終解析28名(結局投与されなかった1名、少なくとも1回以上投与されたあとの脱落3名は最終解析されていない)、試験完遂は21名
センナ32名→最終解析28名(結局投与されなかった3名、少なくとも1回以上投与されたあとの脱落1名は最終解析されていない)、試験完遂は22名

患者背景
平均年齢:約70歳
平均体重:80~90kg

<結果>
there were no significant differences between the lubiprostone and Senna groups in mean change in the PAC-SYM (-0.20 ± 0.60 vs -0.36 ± 0.61, P = 0.61 respectively) or the PAC-QOL (0.29 ± 0.76 vs 0.37 ± 0.87, P = 0.61 respectively).

reduction of abdominal pain, favoring Senna (-0.14 ± 0.73 vs -0.73 ± 1.08, P = 0.04).

本文にはいろいろ載ってますが、ごちゃごちゃして見難いのでアブストに載ってる結果だけ抜粋。

自分の読解力不足でわかりにくいです…。
症状もQOLもややセンナ有利という感じでしょうか。腹痛もセンナのほうが少ないという利点が。


<感想>
えー、実はこれは昨日ツイキャスで開催された居酒屋抄読会(6/18(土) 居酒屋抄読会配信のご案内 - pharm-niiyan’s diary)でとりあげられた論文です。

Limitationとしても述べられていますが、とても小規模の研究です。結果をくつがえすことはなさそうですが、厳密なITTではなく、服用者全員解析には回っていない模様。
あとは評価項目がわかりにくいなぁなんて思いながら拝聴していたのですが、この論文でとても気になったのは、本文にセンナの投与量が見当たらないこと。

TRIAL REGISTRATION(Lubiprostone (Amitiza®) Vs. Standard Care in Opioid-induced Constipation After Surgery in Inpatient Rehabilitation - Full Text View - ClinicalTrials.gov)
↑それはこちらに記載されていることを教えていただきました。
Sennasides 8.6mg錠を2錠/日ですね

昨日の抄読会のときは1錠と勘違いして、8.6mgか、少ないな、なんて思ったのですが、2錠でした汗
DailyMed - SENNA-LAX- sennosides tablet
成人の標準量が2錠となっています。

刺激性下剤のセンナと同等の効果ならアリかなという気もしますが、腹痛が多いのは嫌ですね。
この試験では群間差はみられてないようですが、ルビプロストンは吐き気が出やすいとされているので、その点に関してはオピオイドと相性悪いかなという気もします(オピオイドも吐き気が引き起こすので)。

センナのような刺激性下剤の連用は大腸メラノーシス(下剤の連用で便秘が悪化? 大腸メラノーシスについて - pharmacist's record)のような懸念もありますし、あまり漫然と長期使用しないほうがよいとは思いますが、術後のオピオイド使用による便秘であれば、一時的なものなのでしょうから刺激性下剤を使っても良いのでは?という気もします。

薬価の問題もありますし、この試験の患者集団だったら、刺激性下剤で対応できないんですかね…。術後患者さんのマネージメントなんてまったく知らない自分が言うのもなんですが、一時的なオピオイド使用時の便秘であれば、ルビプロストンはファーストラインになりにくい印象。まあそもそも国内では海外と比べてオピオイド使用頻度は少ないと思いますが。

ルビプロストンの出番はもっと他にあるような気がするので、なんでこんな試験を行ったんだろうなぁと思ってしまいました

ちなみに国内においては、「薬剤性及び症候性の便秘に対する使用経験はなく,有効性及び安全性は確立されていない(添付文書)」ということなので、そもそも積極的な適応はありません。