pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

LVFXとNSAIDsの併用によるけいれんリスク

キノロンとNSAIDsの併用はけいれんリスクが懸念されています。
キノロンの中枢神経におけるGABA受容体阻害作用が増強されるらしいのですが、実際どの程度リスクが高まるのでしょうか。

キノロンの代表ということでLVFX(levofloxacin)をとりあげます。
先発メーカーの製品情報サイトを見てみると、

・フェニル酢酸系又はプロピオン酸系の非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)との併用により痙攣が起こる可能性があるため併用注意となっている。

・100mg製剤の発売から9年間(1993年12月~2003年3月)に報告された痙攣の報告症例では、NSAIDs併用を調べた結果、NSAIDs併用の有無・種類に関係はないと推察(←ないんかい!!)

痙攣が発現しやすい傾向として
てんかん等の痙攣性疾患もしくはその既往のある患者(脳血管障害もしくはその既往のある患者も含む)
・腎障害
・高齢者(75歳以上)
・過去にキノロン薬で中枢性の副作用(めまい、不眠等)を経験したことのある患者

第2回報告 使用成績調査の中間解析結果
中枢神経系副作用(神経系障害:浮動性めまい、頭痛、痙攣等)
・NSAIDs非併用例:0.12%(14/11764例)
・フェニル酢酸・プロピオン酸系NSAIDs併用例:0.18%(4/2234例)
・その他のNSAIDs併用例:0.09%(2/2112例)
(↑微増傾向といえなくもないですが…)


こちらはメーカーさんの市販後調査部からの論文
Levofloxacinと非ステロイド性消炎鎮痛薬併用時の安全性
日本化学療法学会雑誌 Vol. 54 (2006) No. 4 P 321-329

LVFX特別調査症例8856例のうち、感染症以外の合併症・基礎疾患を有さない7597例についてNSAIDs併用時の安全性を検討

7597例中、
4890例:NSAIDs併用(そのうち2828例はフェニル酢酸・プロピオン酸系NSAIDs)

中枢神経系副作用発現率
LVFX単独 004%(1/2707)
LVFX+フェニル酢酸・プロピオン酸系NSAID 007%(2/2828)
LVFX+その他のNSAIDs 0.10%(2/2062)

中枢神経系副作用の種類はめまい2例、ふらつき、不眠、眠気が各1例
けいれんは無し

LVFX投与量ごとに4群にわけて比較したが群間差なし

LVFXに対するNSAIDsの影響はきわめて小さい

との結論ですが、合併症・基礎疾患を有さない症例を対象にしている点はおさえておく必要があります。
また、リスクの度合いを比較するにはイベント数が少なすぎるような気もしますね。


こちらも日本の市販後調査。論文著者は製薬メーカーさん。
Post-marketing surveillance of the safety of levofloxacin in Japan. - PubMed - NCBI
Chemotherapy. 2007;53(2):85-103. Epub 2007 Jan 26.
LVFXはNSAIDsの併用の有無でneurological reactions (including convulsions)の発生に差は見られず。
腎症、75歳以上、痙攣性疾患の既往などがリスクファクターとなる。


どちらも製薬メーカーさんの調査によるものですが、LVFXにおいてはNSAIDsの影響は小さい模様。
他の薬剤はどうでしょう?


こちらはマウスですが…(ヒト以外の文献をとりあげるのは初めてかも!)
Effects of anti-inflammatory drugs on convulsant activity of quinolones: a comparative study of drug interaction between quinolones and anti-inflam... - PubMed - NCBI
J Infect Chemother. 2003 Dec;9(4):314-20.
" convulsant activity of six quinolones with or without 13 anti-inflammatory drugs and 3 analgesic/antipyretic drugs in mice"
キノロン6種±NSAIDs13種のけいれん活性を検討。

キノロン:norfloxacin(NFLX), enoxacin(ENX), ciprofloxacin(CPFX), lomefloxacin (LFLX), levofloxacin(LVFX), and gatifloxacin(GFLX)
これら6種のキノロンの脳室内注射で用量依存的にマウスのけいれんを誘発

biphenylacetic acid(ビフェニル酢酸 国内未発売?):NFLX, ENX, LFLXのけいれん活性を強く増強
フルルビプロフェン:NFLX,ENXのけいれん活性を強く増強
ケトプロフェン:ENXのけいれん活性を強く増強

mefenamic acid, piroxicam, tenoxicam, meloxicam, etodolac, sulpyrine, isopropylantipyrine, and acetaminophen
これらはキノロンのけいれん活性を増強しなかった。

汎用されているイブプロフェンやロキソプロフェンがどうなのか知りたかったのですが、検討されてないのでしょうか。


こちらもマウス
マウスにおけるニューキノロン抗菌薬と非ステロイド系抗炎症薬併用による中枢興奮作用
日本薬理学雑誌 Vol. 99 (1992) No. 1 P 13-18

各NSAIDsをenoxacin100mg/kgと併用した際の痙攣誘発効果は、
fenbufen>flurbiprofen>ketoprofen=pranoprofenの順に強くibuprofenではけいれんは認められなかった
indomethacin,mefenamicacid,aspirinについては単一用量で検討したがENXとの併用でけいれんを誘発しなかった

fenbufen前処置後にキノロン投与
けいれん誘発効果の強度は、
ENX>LFLX>NFLXの順に強くofloxacin(OFLX),CPFX,tosufloxacin(TFLX)では痙攣は認められなかった(←けいれん誘発作用=ゼロというわけではないかと思いますが)


さらにマウス
Interaction of the new quinolone antibacterial agent levofloxacin with fenbufen in mice. - PubMed - NCBI
Arzneimittelforschung. 1992 Mar;43(3A):406-8.
フェンブフェンと各種キノロンを併用し、けいれん誘発の相互作用の程度を評価
わかりにくい書き方ですが、
"enoxacin greater than norfloxacin greater than ciprofloxacin greater than DR-3354 greater than ofloxacin greater than or equal to DR-3355"
DR-3354;the R-(+)-isomer of ofloxacin
DR-3355;levofloxacin

ENX>NFLX>CPFX>OFLX>LVFX
という感じでしょうか。


やはり汎用されてるLVFXはリスクが低いと言えるのかもしれません。

キノロンは単独でもけいれん誘発のリスクがあるとされているので、NSAIDs併用の有無にこだわらず、LVFXとけいれんに関する文献を探してみます。

ヒトに戻ってケースレポート。こちらはNSAIDsとの併用ではなく、キノロン単独の報告。
Seizures associated with fluoroquinolones. - PubMed - NCBI
Ann Pharmacother. 2001 Oct;35(10):1194-8.
LVFXとCPFXによるけいれんの報告

75歳白人女性
LVFX3回投与のあとけいれんあり。1ヵ月後CPFX投与にて再びけいれん発作
発作時2回ともに低Mg血症、Cr上昇。2回目のみ低Na血症あり

74歳白人女性
細菌性肺炎でLVFX投与、5回投与後けいれん発作。
痙攣性疾患の既往がなく、発作時の電解質異常なし

disccusionにて、けいれん誘発活性は、
"levofloxacin possibly having the least potential"
との記載もあり、LVFXはけいれんを起こしにくいようですが、けいれん誘発のリスクがゼロというわけではない模様。

どちらも高齢者ですね。
基礎疾患もあったかもしれませんが、詳細の記載なし。


Levofloxacin and seizures: what risk for elderly adults? - PubMed - NCBI J Am Geriatr Soc. 2014 Oct;62(10):2018-9.
Levofloxacin-induced seizures in a patient without predisposing risk factors: the impact of pharmacogenetics. - PubMed - NCBI Eur J Clin Pharmacol. 2013 Aug;69(8):1611-3.
↑この2つ、とても興味深いのですが、両方とも抄録すら読めない…。いつか読んでみたいのでメモがわりに残しておきます。


いつものことながらまとまりがなくなってきたのでこのあたりでまとめに入ります(強引ですが汗)。
・NFLXやENXといった古いキノロンと比べると、LVFXのほうがけいれんリスクは小さい(動物実験)。
・基礎疾患のない患者においては、LVFX誘発けいれんリスクのNSAIDsの影響は小さい。
・LVFXによるけいれん(NSAIDs併用の有無に関わらず)のリスクファクターは高齢者、腎障害、痙攣性疾患の既往。
・フェンブフェンやフルルビプロフェンと比べると、イブプロフェンキノロンによるけいれん誘発の影響は小さい(動物実験)。
こんなところでしょうか。
動物実感による示唆も含まれているため、確定的とは言えないかもしれないのでご注意を。。