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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

スタチンと糖尿病リスク(ネットワークメタ2016.6)

スタチンと糖尿病の関連は以前より指摘されていました。
Increased risk of diabetes with statin treatment is associated with impaired insulin sensitivity and insulin secretion: a 6 year follow-up study of... - PubMed - NCBI Diabetologia. 2015 May;58(5):1109-17. コホート研究 6年フォロー 非糖尿病スタチン服用2142名 adjusted HR1.46[95%CI 1.22-1.74] シンバスタチンとアトルバスタチンは用量依存性あり スタチンはインスリン感受性や分泌を低下させるかもしれない)
など、といった文献がでていますが、今月、ネットワークメタアナリシスが発表されました
アブストのみの閲覧となりますので、結果だけまとめておきます

Statin use and the risk of developing diabetes: a network meta-analysis. - PubMed - NCBI
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2016 Jun 9

研究デザイン:ネットワークメタアナリシス
治療介入:各種スタチン
アウトカム:糖尿病発症

2010年~2014年に発表された論文が対象。2010年以前の試験は、以前に発表されたメタアナリシスの参考文献より同定
(↑これってどうなのでしょう。本来なら2014年までの文献をすべて検索したほうがより厳密な気もしますが…。)

未発表のデータも調査している。

<結果>
29試験、163,039名(141,863名は非糖尿病)

糖尿病発症オッズ Odds Ratio(95%CI)
スタチン(18RCTs) OR1.12(1.05-1.21) I2=36%
アトルバスタチン80mg OR1.34(1.14-1.57)
アトルバスタチン OR1.13(0.94-1.34)
ロスバスタチン OR1.17(1.02-1.35)
シンバスタチン80mg OR1.21(0.99-1.49)
シンバスタチン OR1.13(0.99-1.29)
プラバスタチン OR1.04(0.93-1.16)
lovastatin OR0.98(0.69-1.38)
ピタバスタチン OR0.74(0.31-1.77)

  

<感想>
まず、スタチン全体でOR1.12ということですが、絶対リスク差がわからないので、NNHは算出できず。ベネフィットと天秤にかけるには絶対リスク差が知りたいところなのですが…。
各薬剤間の比較ですが、高用量アトルバスタチンがもっともハイリスクと書かれてますが、"用量80mg"です。国内ではそんなに使わないでしょう。用量を平均化したらロスバスタチンやシンバスタチンとほとんどかわらないので、アトルバスタチンが特別リスクが高いとは言えないように思います。

疑いたくなるくらいピタバスタチンがリスク低い結果ですね。
ピタバスタチンのメーカーのMRさんたちは、この文献は"宣伝のための武器"として使えるぞって感じでしょうか。

他にもこんなネットワークメタアナリシスがあります。こちらは全文フリー
Comparative tolerability and harms of individual statins: a study-level network meta-analysis of 246 955 participants from 135 randomized, controll... - PubMed - NCBI
Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2013 Jul;6(4):390-9.
こちらは糖尿病だけでなくあらゆる有害事象について検討されています。
糖尿病の項目を見ると、113,698名、プラセボ対照試験の結果を統合すると、OR1.09(1.02-1.16) I2=2.8%
こちらではロスバスタチンがhigher oddsとされており、OR1.16(1.02-1.31)I2=0
higherといってもわずかな差ですね。
薬剤ごとの統計的有意差はないとのこと。


薬剤間の差は認められないそうです…。
では、最初のネットワークメタに戻りますが、ピタバスタチンに限って、95%CIのrangeが大きいということは、症例数が少ないのかもしれないという気もします。アトルバスタチンやロスバスタチンと比べるとrangeが広いですよね。

あとは海外での用量の問題(各種package insertを参照)。
ピタバスタチン:1~4mg
(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2012/022363s008s009lbl.pdf)

ロスバスタチン:5~40mg
(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/021366s016lbl.pdf)

アトルバスタチン:10~80mg(10or20mgからの開始を推奨)
(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2009/020702s056lbl.pdf)

シンバスタチン:5~80mg(推奨20~40mg)
(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/019766s078lbl.pdf)

プラバスタチン:10~80mg(通常、成人40mg~)
(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2012/019898s062lbl.pdf)

(海外では15歳未満でも適応が通っているものがあるようです)

ピタバスタチンは日本の用量と同じなんですね。他は、海外のほうが多いです。
用量指定のないアトルバスタチンよりアトルバスタチン80mgのほうが高リスクとなっていることから(シンバスタチンも同様)、高用量のほうが糖尿病リスクも高まると解釈して良さそうです。
ということは日本の用量で使う分には、やはりどのスタチンも大差はないかもしれない。
むしろプラバスタチンあたりが低リスクかも?

アブストラクトだけで吟味するのも難しいところ。
ご興味のある方は、フルテキストを参照していただけるとよいと思います(有料ですが…)。