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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

月経前症候群に対するSSRI / 有害事象のNNH

婦人科 精神神経科 中毒・過量投与・有害事象 医療統計

SSRIのコモンな副作用のNNHってどのくらいだろう?と思って調べてみたところ、PMSに対するSSRIのメタアナリシスがありました。

Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 7;(6):CD001396
背景:PMSの特徴は月経2週間前から月経に至るまでの間にのみ症状があらわれる。SSRIはしばしばPMSのファーストラインで用いられている(the luteal phase黄体期のみ投与、もしくは連日投与)。

研究デザイン:RCTのメタアナリシス
P:women with a prospective diagnosis of PMS, PMDD(年齢の規定なし。患者による自己診断は除外)
E:SSRI
C:プラセボ
O:1. Self-rated overall premenstrual symptoms, measured using a validated prospective screening tool(e.g.Moos’MDQ,Abraham’sclassification) or by pre-defined medical diagnostic criteria
2.Adverse events(all adverse events,specific adverse effects,withdrawals for adverse effects)

※ちょっと脱線して、用語解説
PMS(Premenstrual syndrome):月経前症候群
PMDD(premenstrual dysphoric disorder):月経前不快気分障害

[PMS]

身体症状 乳房痛、腹部膨満、頭痛、手足のむくみ
精神症状 抑うつ、怒りっぽい、イライラ、不安、混乱、社会からの引きこもり

これらの症状が月経前3~10日間の黄体期に繰り返して出現。
月経開始4日以内に消失、月経周期12日までは症状出現なし。
精神症状が強いものをPMDDとする。

詳細はこちらがおすすめ
Premenstrual Syndrome and Premenstrual Dysphoric Disorder - American Family Physician


<選定基準>
RCT(ランダム化されていないものは除外)
("Types of studies"より)

<出版バイアス>
unpublishも含まれている
("Types of studies"より)

言語制限なしwithout language restriction
("Search methodsfor identificationof studies"より)

Funnel plotで検討している。"was not suggestive of publication bias"の記載あり(N=9?primary efficacy outcomeの分析対象の大規模スタディだけ?)

<評価者バイアス>
Two review authors independently~~
試験の選定やバイアスの評価は独立して行われている
意見の相違があれば、第三者による議論

<元論文バイアス>
the Cochrane risk of bias assessment toolで評価
allocation(ランダム化とその隠蔽)、blinding(盲検化)などを評価

<異質性バイアス>
I2 values
• 0% to 40%, might not be important
• 30% to 60%, may represent moderate heterogeneity
• 50% to 90%, may represent substantial heterogeneity
• 75% to 100%, considerable heterogeneity


<結果>
2009年版では28試験が選定、2013年版で6試験追加、2009年版では選定されていた3試験を除外。
計31試験(n=4372)を分析

有効性

患者数(試験数) SSRI vs placebo(The mean score for all symptoms) Quality of the evidence
Luteal or continuous administration 1276(9) SMD0.67((0.46 to 0.84)lower low
Luteal administration 457(4) SMD0.51(0.71 to 0.31)lower moderate
Continuous administration 843(7) SMD0.72(0.97 to 0.47)lower low

全項目において"The size of the effect was moderate"の記載あり。
(↑エフェクトサイズはすべて中等度ということですが、黄体期のみの投与より、継続投与のほうが症状は軽減する傾向にあるようです)

有害事象(Individual adverseevents)

患者数(試験数) OR[SSRI vs placebo](95%CI) NNH
Nausea 3385(16) OR3.43(2.63 to 4.47) NNH7
Insomnia or sleep disturbance 3388(16) OR1.84(1.36 to 2.47) NNH25
Sexual dysfunction or decreased libido 2847(14) OR2.26(1.54 to 3.31) NNH14
Fatigue or sedation 951(8) OR1.66(1.09 to 2.53) NNH14
Dizziness or vertigo 2354(11) OR1.96(1.32 to 2.89) NNH25
Tremor 1352(4) OR5.38(2.20 to 13.16) NNH20
Somnolence and decreased concentration(眠気と集中力低下?) 1797(7) OR4.94(2.82 to 8.63) NNH13
Sweating 2051(9) OR3.02(1.79 to 5.11) NNH14
Dry mouth 1474(9) OR2.70(1.656 to 4.41) NNH17
Yawning(あくび) 975(5) OR4.24(1.63 to 10.99) NNH14
Asthenia(無力症) or decreased energy 1704(7) OR3.28(2.16 to 4.98) NNH9
Diarrhoea 2402(10) OR2.21(1.35 to 3.62) NNH25
Constipation 996(6) OR2.35(1.04 to 5.29) NNH33

※異質性はすべてI2=0%、NNHの値はSSRI中等度の用量での表記
上記の結果のほとんどが、SSRIの用量依存的にリスク上昇

以下は群間差無し

患者数(試験数) OR[SSRI vs placebo](95%CI)
Gastrointestinal irritability(胃腸過敏) or dyspepsia 803(5) OR2.03(0.78 to 5.31)
Headache 2866(15) OR1.13(0.89 to 1.42)
Decreased appetite 433(3) OR1.77(0.79 to 3.98)
Increased appetite 495(3) OR1.36(0.34 to 5.46)
Anxiety(不安) 397(3) OR1.17(0.45 to 3.02)

  

<感想>
まずはバイアスから
出版バイアスの検討としてFunnel plotにて出版バイアスはないという記載があるのですが、9つしかプロットがない点がよくわかりませんでした。含まれる研究数は31だと思うのですが…。primary efficacy outcome(黄体期のみ・継続の両方)を検討した研究のみ出版バイアスを検討したということでしょうか。

有害事象のNNHですが、やっぱり吐き気は多いですね。NNH7です。
倦怠感(NNH14)や無力感(NNH9)といった症状も比較的多いようです。
めまいはNNH25で他と比べると頻度低いのかも。

汗(NNH14)や振戦(NNH20)はセロトニンへの作用の影響でしょうか?気になる症状ですね。
セロトニン症候群については、以前↓こちらでちょっとだけとりあげましたが、いずれきちんと調べようかなぁとは思っています。
トラマドール/アセトアミノフェン配合錠(トラムセット)の副作用対策 - pharmacist's record

プラセボと比べて、頭痛や不安は群間差無し。
頭痛を生じた場合、SSRIによる可能性ゼロというわけではないですが、プラセボと差がないということで高頻度に誘発するものではないのかも(もちろんPMS患者に用いた場合は、です)。薬と無関係かも?他の原因はない?という検討も必要かと思います。
もともと、PMSの症状として頭痛や不安が認められるので、プラセボと差が出なかったという可能性もあったりするのでしょうか?

SSRI Antidepressant Medications: Adverse Effects and Tolerability. - PubMed - NCBI
Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 2001 Feb;3(1):22-27.
こちらを見ると、ちょっとだけ頭痛についても触れられています。
うつ病への使用より、強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)への使用のほうが頭痛の報告は多いとのこと。強迫性障害を有する患者は頭痛の頻度が多いことがあげらあれる。
・discontinuation syndromeとしても頭痛はみられる(他、dizziness, nausea, lethargy, anxiety, and agitationなど)。症状は軽度で、中止1週間以内にはじまり、3週間以内におさまる。
頭痛ついての記載はこれだけです。
うーん、なんともいえませんね…。


うつ病を対象とした解析だと多少変わってくるかもしれませんが、有害事象の頻度が意外と多いように感じました。
臨床試験では有害事象のモニタリングが徹底できていて、漏れなく拾い上げているという一面もあるのでしょうか。リアルワールドでは「性欲低下」といった副作用は医師・薬剤師に訴えにくい症状だと思います。

あと不思議に思ったのは、黄体期のみのSSRI服用でも効果がみられる点でしょうか。うつ病でのSSRIの使用では効果がでるのに時間がかかるという認識でしたが、PMSだと違うんですかね。


さて、このような感じで、薬のNNHを積極的に調べていこうと思っています。
添付文書の副作用発現率はベースラインとの比較がなくてアテにならないですからね…。


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