pharmacist's record

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LTG vs CBZ 皮疹の頻度は? / 交差性は?

ラモトリギンといえば皮疹の副作用が有名です。
ラモトリギン(ラミクタール)による薬疹 - pharmacist's record
用法遵守も重要で、使用する際には医師・薬剤師ともに注意を払っていることと思いますが、抗てんかん薬の中でとりわけ発生率が高いの?という素朴な疑問が…。
カルバマゼピンなどもSJS/TENなどの重篤な皮膚障害が知られています。

↓高齢者を対象としたRCT
Multicentre, double-blind, randomised comparison between lamotrigine and carbamazepine in elderly patients with newly diagnosed epilepsy. The UK La... - PubMed - NCBI
Epilepsy Res. 1999 Oct;37(1):81-7.

研究デザイン:多施設DB-RCT
P:elderly patients with newly diagnosed epilepsy 150名(平均77歳)
E:lamotrigine (LTG)
C:carbamazepine (CBZ)
O:アブストラクトに明記なし

LTG:CBZ=2:1でランダム化
short titration period(用量を漸増するための短い期間と思われる)のあと、患者個別の用量設定で24週間、盲検化維持

<結果>

LTG CBZ
有害事象による脱落率 18% 42%
皮疹rash 3% 19%
眠気somnolence 12% 29%


アブストラクトしか閲覧できませんが、これだけ見ると、カルバマゼピンのほうが忍容性が低そうな印象。


高齢者におけるLTGの忍容性を調べた文献
The tolerability of lamotrigine in elderly patients with epilepsy. - PubMed - NCBI
Drugs Aging. 2001;18(8):621-30.
13の臨床試験のデータを解析
対象:65歳以上の高齢者208名

LTG単剤:100mg(range 75 to 500mg)、median duration24週
LTG併用(add-on):300mg(range 25 to 700mg)、median duration47週

LTG CBZ PHT(phenytoin)
drug-related adverse event 49%(72/146) 72%(38/53) 89%(8/9)
Rash 4%(6/146) 17%(9/53) 0%(0/9)
drug-related serious AE 5%(7/146) 8%(4/53) 11%(1/9)


LTGはCBZと比べて眠気(p=0.012)、皮疹(p=0.034)、頭痛(nonsignificant)などの発生率が約半分。

LTG推しの内容ですね。
2001年というとLTGを売り出そうという頃?(海外のwikiによると開発は1994年)
著者のCOIを調べたいなと思って、Author informationをクリックしたら"Glaxo Wellcome plc"と…。
試験の選定基準が確認できないのですが、都合のよい研究結果を集めてきただけなんてことはないですよねぇ…?


こちらは全部フリー
An international multicenter randomized double-blind controlled trial of lamotrigine and sustained-release carbamazepine in the treatment of newly ... - PubMed - NCBI
Epilepsia. 2007 Jul;48(7):1292-302. Epub 2007 Jun 11.

研究デザイン:多施設DB-RCT(プラセボ使用のダブルダミー)

P:Patients aged 65 years or older, who had experienced at least two unprovoked partial and/or generalized tonic-clonic seizures(非誘発性、部分的および/または全身性強直間代発作を2回以上経験した65歳以上の患者)
E:LTG (n=93) 初期量initial:25mg、維持量maintenance:100mg、最大量maximum:500mg
C:CBZ (n=92) 初期量initial:100mg、維持量maintenance:400mg、最大量maximum:2000mg
O:retention on the allocated treatment(割り当てられた治療の継続率)

試験期間:40週(4週間の漸増期間を含む)
資金提供:GSK

血中薬物濃度はinvestigatorは利用できないが、用量変更が必要かどうかの判断のため、undetectable検出不能(<0.4µg/mL LTG or< 0.1µg/mL CBZ) or high levels (>20µg/mL LTG or>12µg/mL CBZ)の場合には通知された。
プラセボ使用のダブルダミー試験とした理由は用量調節のため?違ったらすみません…)

<結果>

LTG CBZ
試験完遂率 73% 67%
20週以上けいれん発作なし 52% 57%
有害事象による脱落 14%(13/93) 25%(23/91)

皮疹による脱落は、LTG2名、CBZ8名

AEs reported during treatment and considered by the investigator to be at least possibly related to study drug

LTG(n=93) CBZ(n=92)
any AEs 51(55%) 51(55%)
Dizziness 13(14%) 9(10%)
Rash/skin reaction 5(5%) 12(13%)
Headache 10(11%) 10(11%)
Somnolence/sedation/hypersomnia睡眠過多 7(7%) 9(10%)
Asthenia無力症/fatigue 9(10%) 9(10%)
Nausea/vomiting 7(7%) 4(4%)
Diarrhea 4(4%) 5(5%)


ITT analysisとPP analysis

LTG(n=93) CBZ(n=91) LTG(n=68) CBZ(n=61)
Number of subjects seizure free throughout study 50(54%) 60(66%) 33(49%) 43(70%)


皮疹はCBZのほうが多いようです。眠気はそこまで差はなさそうですね。
ITTとPP解析の違いをみてみると、忍容性があれば、CBZのほうがけいれんをおさえる効果が高いのかもしれないと思いました。


やはり皮疹の頻度としてはCBZのほうが多いかも。
LTGはブルーレターが出たこともあり、LTGといえば皮疹に注意!というイメージが強く、それはそれで間違いではないのですが、古くから使用されているCBZだって要注意だよ、ということですね。

そして、もう1点。

てんかん薬の薬疹は交差反応を起こす可能性も高いので要注意。
Cross-reactivity of skin rashes with current antiepileptic drugs in Chinese population. - PubMed - NCBI
Seizure. 2010 Nov;19(9):562-6
てんかん薬による皮疹のCross-reactivity(交差反応)を検討しています。
中国の外来患者3793名を調査(telephone interviews)
対象薬剤は
carbamazepine (CBZ), valproic acid (VPA), phenytoin (PHT), phenobarbital (PB), clonazepam (CZP), oxcarbazepine (OXC), lamotrigine (LTG), gabapentin (GBP), topiramate (TPM), levetiracetam (LEV) and traditional Chinese medicine (TCM).

medical recordsをもとに患者に電話調査
明白な皮膚病変のないかゆみのみの症状は除外し、抗てんかん薬の投与以外に明白な原因が認められない発疹を薬疹と定義

<結果>
3793名中137名が薬疹の既往あり(男女比はほぼ同等)
137名中18名は2種以上の薬疹既往あり

患者 First rash Second rash Third rash Fourth rash Other drugs without rash
18歳男性 CBZ PHT LTG,TPM
50歳男性 CBZ PHT PB OXC TPM
6歳女性 CBZ LTG PHT,PB
8歳女性 OXC LTG TPM
28歳女性 CBZ PHT TPM
30歳女性 CBZ PHT
58歳女性 CBZ PHT TCM VPA
15歳男性 CBZ TPM VPA
16歳女性 CBZ LTG TPM
27歳女性 CBZ OXC VPA
18歳女性 LTG VPA TPM
40歳女性 CBZ LTG PHT TPM
21歳男性 CBZ PHT PB,TPM,TCM
35歳男性 CBZ OXC TPM LEV
41歳男性 CBZ PHT LEV GBP TPM
70歳男性 CBZ PHT TPM
39歳女性 CBZ LTG TPM
41歳女性 CBZ OXC VPA,LEV,TPM


CBZが多いですが、これは直接的にCBZで薬疹が多いとは限らず、単に使用頻度が多いという可能性もあります。
中国での各薬剤の使用頻度を調べないとなんともいえないですが、CBZ,LTG,PHTで薬疹が出たけど、TPM,VPAあたりは平気だったという例が多い傾向にあるようです(TPM,VPAによる薬疹の報告もありますが)。

こちらの図も参考になります。
Fig3
f:id:ph_minimal:20160601120350j:plain

<limitation>
"Not every rash was examined by a physician. There may have physician bias in making the determination of whether acertain rash was related to a given medication."
薬疹かどうかの判断にバイアスがあるかもしれない。

"Treatment selection bias may have served to equalize individual AED-rash rates patients with a documented history of AED-rash may preferentially be prescribed AEDs less often associated with rash(e.g.,LEV,GBP,TPM,orVPA)."
薬疹との関連性が低いとされるLEV,GBP,TPM,VPAなどを薬疹既往患者に優先的に処方されることで、薬疹発生率が等しくなる方向へ治療選択バイアスが働いているかもしれない(←すみません、翻訳に自信がありません)。

<結論>
てんかん薬は交差反応率が高い(とくにカルバマゼピンとフェニトイン)。
ラモトリギンと芳香族の抗てんかん薬(PHT,CBZ)の交差反応性は、他の芳香族の抗てんかん薬よりも低くなかった(not lower)。
もっと多くの症例を集めて評価する必要があるが、特定の抗てんかん薬を処方する際には注意が必要(とくにCBZ,PHTだが、それだけでなくLTG,OXCも)

ちなみにこの研究の著者にCOIはないようです。

調査にも限界があり、バイアスはありそうですが、有用なデータではないかと思いました。

製薬メーカーさんは自社製品の副作用データをきちんととっていることかと思うのですが類薬については正確に把握できないのではないかと思います(データを集めることができたとしても、自社製品の安全性を訴えたいというバイアスも生まれるでしょう)。
同系統の薬を全部ひっくるめての問題となる副作用のレビューはもっと世に出て欲しいですね。
(たくさん論文化されていることを自分が知らないだけかもしれませんが…)