pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

ニフェジピンによる歯肉増殖

Prevalence and risk of gingival enlargement in patients treated with nifedipine. - PubMed - NCBI
J Periodontol. 2001 May;72(5):605-11.

背景:歯肉肥大(Gingival enlargement)はニフェジピンの既知の副作用である。この研究は有病率とリスクファクターを調べるために実施された

研究デザイン:cross-sectional study(横断研究)
ニフェジピン服用者65名(E)とニフェジピン服用なし(C)で歯肉肥大(O)を評価

歯肉肥大の評価指標:①vertical gingival overgrowth index (GO) in 6 points around each tooth ②horizontal MB index in the interdental area

vertical gingival overgrowth index:直訳すると、垂直歯肉過成長指数

ニフェジピン服用あり 服用なし
GO index 33.8% 4.1%
MB index 50.8% 7.5%

    

国内での発生頻度は?
ニフェジピンの長期服用患者における歯肉増殖の発現頻度調査
日本歯周病学会会誌 Vol. 38 (1996) No. 4 P 493-497
3年以上ニフェジピンを服用している42名を調査、2名に歯肉増殖あり
"考察"より、
別の報告(口腔衛生会誌, 40: 53-59,1990)では46名中5名(10.9%)
(口科誌, 40: 169-178, 1991)では、ニフェジピン服用の108名の6.5%にみられた。
総合的に評価すると、ニフェジピンによる発生率は5~15%。



国内のケースレポート
Ca拮抗剤ニフェジピンによると思われる歯肉増殖症の2例
日本口腔科学会雑誌 Vol. 39 (1990) No. 1 P 198-206
・2症例ともに口腔の清掃状態が不十分
・各種文献によるとニフェジピンによる歯肉増殖発生までの期間は1~9ヶ月、概ね1年以内
・ニフェジピンによる歯肉増殖の治療法は投与中止、ブラッシング、歯石除去、歯肉切除など。病状の程度によって治療法を選択(症例2では、歯肉増殖が改善されるまでニフェジピン中止。再投与後は歯肉増殖の再発なし)


薬物性歯肉増殖症は投与量などに依存するか?
薬物性歯肉増殖症の発症機序を探る
日本歯周病学会会誌 Vol. 44 (2002) No. 4 P 315-321
投与量や服薬期間との関連については、有意な相関がないという報告のほうが多い


"prevent drug-induced gingival enlargement"で文献検索
Prevention and treatment considerations in patients with drug-induced gingival enlargement. - PubMed - NCBI
Curr Opin Periodontol. 1997;4:59-63.
フェニトイン、シクロスポリン、シクロスポリンなどの薬によって誘発される歯肉増殖の最小限に抑える方法(can be minimized, but not prevented)
・elimination of local irritants 局所刺激物の除去
・meticulous oral hygiene 細心の口腔衛生
・regular periodontal recall 定期的な歯周のリコール  (※リコール:歯科の定期健診)


こちらは予防に関する文献ではなかったのですが…、
Regression of Calcium Channel Blocker--Induced Gingival Enlargement in the Absence of Periodontal Therapy. - PubMed - NCBI
J Tenn Dent Assoc. 2015 Fall-Winter;95(2):11-4; quiz 15-6.
CCBのジルチアゼムによる歯肉増殖の症例。
歯周治療(periodontal treatment)を開始する前に、別の降圧剤に変更可能かどうか内科医に相談するようアドバイス。といった記載があり、まずは薬を変更することを推奨しています。


個人的には遭遇したことのない有害事象なのですが、気づかない程度の軽度な例は意外と多いのかもしれませんね。
歯肉増殖のリスクのある薬を服用する場合は、ブラッシングにより口腔を清潔に保ち(必要に応じて定期的な歯科検診)、発症してしまった場合は、原因薬剤の中止・変更の検討を。といったところでしょうか。