Evaluation of eperisone hydrochloride in the treatment of acute musculoskeletal spasm associated with low back pain: a randomized, double-blind, pl... - PubMed - NCBI
J Postgrad Med. 2011 Oct-Dec;57(4):278-85
背景:エペリゾンは中枢性筋弛緩薬(centrally acting muscle relaxant)で、血管拡張作用を有し、痛みの反射経路を阻害する。
目的:腰痛に伴う急性筋骨格痙攣の患者におけるエペリゾンの有効性と忍容性を評価
研究デザイン:多施設プラセボ対照DB-RCT(インドの5つの整形外科センター)、有効性はper-protocol (PP) population、安全性はintention-to-treat (ITT) population
P:腰痛(low back pain)に伴う急性筋骨格痙攣(acute musculoskeletal spasm)の患者240名(18~60歳)
E:エペリゾン150mg/日(分3)
C:プラセボ
O:プライマリアウトカムは明確ではない
・finger-to-floor distance(FFD)
・Lasegue sign
・lumbar and dorsal hypermyotonia(腰部背部の筋緊張性痙攣)4点スケール(0~3点)点数が高いほうが悪い
・tenderness of paravertebral muscles(脊柱筋の圧痛)
・need for rescue medication(レスキュー用の痛み止めの服用回数)【→レスキューとしてアセトアミノフェン500mgの投与が許可されている。ちなみに、neuromuscular blocking agents, cholinergic drugs and cortiosteroidsは許可されていない】
・leg tendon reflexes(脚腱反射)
The subjective efficacy parametersとして、
・lumbar cinesalgia(腰の筋運動痛)0-100mm VAS
・sensory disturbances of lower limb(下肢の感覚障害)の有無
・pain in lower extremities(下肢の痛み)4点スケール(0~3点)点数が高いほうが痛みが強い
・Global Assessment of Response to Therapy (GART) 4点スケール(Excellent, Good, Average and Poor)
・Global Assessment of Tolerability to Therapy (GATT) 4点スケール(Excellent, Good, Average and Poor)
評価のタイミングは、1日目、3日目、7日目、14日目
試験期間:14日間
サポート:エーザイ("Acknowledgment")
※FFD
膝を曲げずに両手を地面に伸ばしたときの、指先から床までの距離(身体測定を思い出していただければ…)
※Lasegue sign(ラセーグ徴候)
別名:下肢伸展拳上検査(SLR;Straight leg raising test)
坐骨神経痛を誘発する試験
論文本文より、「他動的に仰臥位で片側の下肢を挙上、腰部の発現or腰痛増悪」
<患者選定基準>
・spondylosis deformans(変形性脊椎症)
・prolapsed disc(Prolapsed Disc (Slipped Disc). Back Pain. Slipped Disc Symptoms | Patient →prolapsedはslippedとも表現されるようです。いわゆる椎間板ヘルニアを指すのでしょうか…? table1に、intervertebral diskとの記載あり)
・muscle sprain(筋肉の捻挫?)
※それ以外の原因によるものは除外
試験完遂した225名のデータ(table1より)
平均年齢:41~42歳
平均身長/体重:157cm/60kg
診断は上記3種のみ。muscle sprainが約半数で最多。
<サンプルサイズ>
優位性をプラセボと比較して、20%以上の平均FFDの減少と定義
サンプルサイズは178名(power90%、α0.05)
脱落を考慮して240名の登録が必要
<結果>
エペリゾン120名→試験完遂112名
プラセボ120名→試験完遂113名
efficacy outcome(ベースライン→3日目→7日目→14日目)
エペリゾン(n=112) | プラセボ(n=113) | |
---|---|---|
FFD(mm) | 150.7→103.4→69.0→41.8 | 138.5→123.8→110.8→101.6 |
Lasegue sign陽性率 | 58%→51%→29%→19% | 62%→57%→52%→46% |
hypermyotonia筋緊張性痙攣(0~3点) | 1.5→1.0→0.7→0.4 | 1.7→1.5→1.3→1.2 |
tenderness圧痛の有無(%) | 85%→65%→32%→22% | 90%→86%→64%→55% |
lumbar cinesalgia腰の筋運動痛(0-100mm VAS) | 68→51→36→21 | 69→61→52→45 |
tinglingヒリヒリ感 | 37%→31%→20%→13% | 49%→48%→44%→38% |
numbnessしびれ | 30%→26%→17%→8% | 36%→33%→31%→27% |
paresthesia異常感覚 | 23%→17%→9%→4% | 29%→26%→24%→21% |
痛み止めレスキューの使用患者の割合
エペリゾン(n=112) | プラセボ(n=113) | |
---|---|---|
day3 | 24.1% | 64.6% |
day7 | 46.4% | 69.9% |
day14 | 35.7% | 73.5% |
有害事象(件数)
エペリゾン(n=112) | プラセボ(n=113) | |
---|---|---|
nausea吐き気 | 8 | 10 |
abdominal pain腹痛 | 4 | 7 |
headache頭痛 | 3 | 3 |
dizzinessめまい | 7 | 2 |
malaise倦怠感・不快感 | 1 | 3 |
vertigoめまい | 0 | 1 |
aphthous ulcersアフタ性潰瘍 | 0 | 1 |
vomitting嘔吐 | 0 | 1 |
dryness of mouth口渇 | 0 | 1 |
<感想>
急性腰痛に対するエペリゾンですが、意外と効くかもと思わせる結果です。
製薬メーカーのサポートありということで、きちんと批判的吟味をする必要がありそうです。
まず、プライマリアウトカム。はっきりと明記されていません。
仮説検証的といえるかどうかは微妙。ただ、どのアウトカムも改善傾向。
FFDは代用のアウトカムな気もしますが、圧痛や運動痛といったアウトカムも改善しています。
痛み止めレスキューの使用が減少している点からも、効いているのでは?と感じました。
ITT解析でない点については個人的にはあまり問題視しませんでした。
数名の脱落が解析対象となっていないことで、結果が大きく覆ることはなさそうだなと。
ちなみにPostgraduate Medical Journalというジャーナル誌のImpact factorは1.448。
うーん、どうでしょう。ポジティブな結果と捉えて良いのではないかと思うのですが、なにか見落としている点はありますでしょうか?
有害事象としては浮動性のめまいは増加傾向ですね。
眠気の報告がなかったのが意外でした。実薬・プラセボともに報告ゼロ。痛みがある状態なので眠気どころではなかったのかな?という気もします。
ちなみにエペリゾンはチザニジンより眠気が少ないかもしれません
↓トラマドールへの上乗せの比較試験。
Eperisone versus tizanidine for treatment of chronic low back pain. - PubMed - NCBI
Minerva Med. 2012 Jun;103(3):143-9.
トラマドール(100mg/日)服用の慢性腰痛患者60名(P)をランダム化し、エペリゾン(E)、チザニジン(C)を30日間投与し、有効性と忍容性を評価(O)。
有効性はVASで評価し、結果は両群においてsimilar
somnolence(眠気)がエペリゾン16.6%、チザニジン43.3%
有害事象による治療中断がエペリゾン5名、チザニジン9名(ともに30名中)
トラマドールに上乗せの試験なので、両群ともに眠気の副作用が多いですが、チザニジンよりエペリゾンのほうが眠気が少ない傾向にあるようです。