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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

AMPC vs AMPC/CVA(親知らず抜歯)

感染症 抗菌薬 歯科・口腔外科

Efficacy of amoxicillin and amoxicillin/clavulanic acid in the prevention of infection and dry socket after third molar extraction. A systematic re... - PubMed - NCBI
Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2016 Mar 6:0.
背景:第三大臼歯(third molar;親知らず)の手術においてアモキシシリン(AMPC)やアモキシシリン(AMPC)/クラブラン酸(CVA)の予防的投与は物議をかもしながらも日常的に使用されている。

研究デザイン:DB-RCTのメタアナリシス
P:親知らず抜歯患者
E:予防的投与 ①AMPC ②AMPC/CVA
C:プラセボ
O:ドライソケット、感染症の発生率

<選定基準>
患者の年齢/性別は問わず親知らず抜歯患者が対象
スプリットマウスデザイン(split-mouth designs)は除外せず

※スプリットマウスデザイン:同じ患者の口腔において左右(介入と対照)に異なった治療を行って比較する研究デザイン

評価者バイアス:Two researchers independently performed the searchesの記述あり

出版バイアス:言語制限無し。2015年6月までに出版された文献が検索対象(trials published up to June 2015ということで未出版は対象外と思われる)。Funnel plotで検討(Fig3)、not absolutely symmetrical(対称的ではない)とし、出版バイアスがあるかもしれないということで、対応する定量分析を実施。confirming the lack of publication bias(出版バイアスはないことを確認)との記載あり。

元論文バイアス:ランダム化や盲検化についてRisk of biasを評価している(Fig1)


<結果>
検索でヒットした75文献のうち65文献が除外(除外理由はtable1)
10報のDB-RCT文献を選定(数十名の小規模RCTから数百名の規模のRCTが含まれる)

①AMPC(7RCT)

AMPC(n=606) プラセボ(n=561) RR(95%CI) NNT
dry socket and/or infection 14/606(2.3%) 27/561(4.8%) RR0.563(0.295 to 1.08) I2=0.00% NNT40(22 to 274)


②AMPC/CVA(3RCT)

AMPC/CVA(n=466) プラセボ(n=364) RR(95%CI) NNT
dry socket and/or infection 13/466(2.8%) 47/364(12.9%) RR0.215(0.117 to 0.395) I2=0.00% NNT10(7 to 16)


有害事象(5RCT ①、②混在)

AMPC,AMPC/CVA(n=741) プラセボ(n=596) RR(95%CI) NNH
有害事象(generally mild and short) 136/741 85/596 1.188(0.658 to 2.146) NNH26

<結論>
健康な患者において、親知らず抜歯によるドライソケット/感染の予防的投与としてAMPCを推奨する根拠無し。
AMPC/CVAに関してはNNTを考慮すると有効であったが、感染率そのものが低いこと、有害事象、コントロール群における重篤な合併症が少ないことから、ルーチンでの投与は正当化されない。


<感想>
結果だけみると、おおっ!AMPC/CVAはNNT10か!自分も親知らず抜歯の際には服用したいな!と思いましたが、結論はなかなか手厳しくルーチン投与は正当化されないとのこと。

ふーむ。自分が患者だったら飲みたいですけどね。
有害事象の内容にもよりますが、下痢程度の有害事象であれば、親知らず抜歯後に感染やらドライソケットやらで痛みが続くほうが辛いと思うので、そちらのリスクを下げたいと自分は思います。


ちょっとほかの文献も探して見ます。
Efficacy of postoperative prophylactic antibiotic therapy in third molar surgery. - PubMed - NCBI
J Clin Diagn Res. 2014 May;8(5):ZC14-6.
使用した抗生剤はAMPCとMNZの併用。結語として、無症候性第三大臼歯手術における抗生物質の術後ルーチン使用に利点は見出せなかったとのこと。
4point VASで評価した痛みの度合いは、抗生剤投与群も無治療群もほとんど差がなかったようです(table3)
ランダム化はされてますが、プラセボ対照ではない(無治療との比較)という点は差し引いて考える必要はあるとはいえ、痛みの持続も変わらなかったようです。


コクランレビューもでています。こちらは親知らずに限定せず、抜歯を対象としているようです。
Antibiotics to prevent complications following tooth extractions. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Nov 14;11:CD003811
DB-RCTのメタアナリシス
抗生剤vsプラセボ
感染:RR0.29 (95% CI 0.16 to 0.50)、NNT12
ドライソケット:RR 0.62 (95% CI 0.41 to 0.95)、NNT38
痛み:MD -8.17 (95% CI -11.90 to -4.45)
発熱:RR 0.34 (95% CI 0.06 to 1.99)
腫れ(swelling):RR 0.92 (95% CI 0.65 to 1.30)
開口障害(trismus):RR 0.84 (95% CI 0.42 to 1.71)
有害事象(mildで一過性):RR 1.98 (95% CI 1.10 to 3.59)
という結果。(※痛み~開口障害はすべて抜歯7日後の比較)

感染のリスクが高い患者は、抗生剤予防的投与のベネフィットは高くなるが、健常者に対してはリスクとベネフィットを考えて慎重に検討する必要があるという結語。


抜歯時の抗生剤の予防投与は、典型的な健康成人の風邪に対する抗生剤ルーチン投与と比較すれば有用ではないかな?というのが率直な感想。

AMPC/CVAはNNT10ですからまずまずの有効性だと思うのですが、オーグメンチン®の添付文書をみたら、歯科領域の適応病名が載っていないので、AMPC/CVAは国内では保険適応的に処方は難しいかもしれませんね。

となると、やはり歯科領域は第三世代経口セフェムの独壇場なのでしょうか。よく処方される印象ですが、感染症レジデントマニュアルでは、歯科領域感染症の治療薬として、セフェムの名はまったくありません。AMPC、AMPC/CVAやMNZ、CLDM、DOXYあたりが名を連ねています。このギャップはなんなんでしょうね…。

一応、第三世代の経口セフェムの文献を探してみたいと思います。
Pubmedで「tooth extraction third oral cephalosporin]など様々なワードで検索したところ、それらしい文献のヒット無し。
セフタジジム(CAZ)とAMPC/CVAの文献(Amoxicillin and clavulanic acid vs ceftazidime in the surgical extraction of impacted third molar: a comparative study. - PubMed - NCBI Int J Immunopathol Pharmacol. 2012 Jul-Sep;25(3):771-4)はありましたが、CAZは静注です。感染症に疎い自分の素朴な疑問として、緑膿菌をカバーするCAZをこんなことで使用していいの?と思いました。

抜歯とセフェム…。もっと探せば何か見つかるかもしれませんが、時間の都合上ここまでとさせていただきます。深追いして時間の無駄で終わりそうな予感がするので笑