pharmacist's record

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ヒアルロン酸点眼液0.1%vs0.3%

ヒアルロン酸点眼液は規格が2つありますが、途中から0.3%製剤が発売されたように記憶しています。
ふと、思ったのです…。臨床効果はどう違うのかと。

とりあえず、見てみますか、先発品の添付文書を。

臨床成績
二重盲検試験を含む臨床試験で、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、シェーグレン症候群、コンタクトレンズ装用等種々の原因に伴う角結膜上皮障害患者に対する成績は次のとおりである。
ヒアレイン点眼液0.1%改善率(%)〔改善以上〕:67.5(83/123)
ヒアレイン点眼液0.3%改善率(%)〔改善以上〕:64.6(51/79)

あれ???
添付文書だけ見てると、0.3%のほうが改善率がよいのかというとぜんぜんそんなことないですね。
用法用量は、「通常は0.1%製剤を投与し、重症疾患等で効果不十分の場合には、0.3%製剤を投与する」となってますが…。

よくわからないので、やっぱりPUBMEDですね。
困ったときのPUBMED

アブストしか読めないですが、こんな文献がひっかかりました。
Effectiveness of sodium hyaluronate eyedrops in the treatment of dry eye. - PubMed - NCBI
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2006 Jan;244(1):109-12. Epub 2005 Jun 28.

背景:ドライアイは成人人口の10~20%にみられるコモンな疾患。人口涙液(Artificial tears)は欠損する涙を補充することによって軽度~中等度のドライアイの症状を緩和する効果がある。ヒアルロン酸ナトリウムはviscoelastic rheology(粘弾性・流動性?)を目的として人口涙液の成分として提案されている

P:中等度のドライアイ13名
E:ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%、0.3% 両目に点眼(1回40μL)
C:0.9%生理食塩水 両目に点眼(1回40μL)
O:症状の強さと非侵襲性涙液層破壊時間(NIBUT;non-invasive break-up time)  
測定方法:measured at 5, 15, 30, 45, and 60 min, and then hourly, until 6 h after drop instillation)

※BUT(涙液層破壊時間):染色液で涙の安定性を調べる検査。目を覆っている涙がどのくらいの時間で乾燥しはじめるかを測定。5秒以下ならドライアイの可能性。(ドライアイ研究の最前線  日本薬理学雑誌 Vol. 135 (2010) No. 4 P 138-141 )

研究デザイン:randomized and double-masked、各被験者は約1週間のインターバルで試験を2回繰り返した(すべての製品を試験)。→クロスオーバー?

<結果>
生食よりもヒアルロン酸のほうが症状改善、BUT持続
その効果はヒアルロン酸0.3%>0.1% (p=0.04 for NIBUT)

<結論>
中等度のドライアイにおいて、ヒアルロン酸0.1%、0.3%は生食よりも、眼の刺激(ocular irritation)の症状を軽減し、NIBUTを延長させる。


<感想>
BUTというのはちょっと代用っぽいアウトカムですね。
一応、double-maskと記載されているので盲検化はされているようです。募集して集めた被験者数はとても少ないです。
BUTが延長するということは眼が乾燥しにくいということなのだろうとは思うのですが、アブストラクトには結果が詳しく書かれていないので、よくわからないです…。有効性の比較試験は、“定量的”に比較することが大事だと思うのですが、これだけでは“どの程度”有効性に違いがあったのかわかりませんよね(まあフルテキスト購入しろよって話なのですが…)。
ヒアルロン酸点眼液の濃度の違いによる有効性を比較したもっと良い文献はないですかね…。
眼科のエビデンスは未知の領域なので機会があればまた漁ってみたいと思います。