ぼんやりとツイッターのTLを眺めていたら、BMJのアカウントがRTした論文が目に飛び込んできてしまいました。
Loneliness and social isolation as risk factors for coronary heart disease and stroke: systematic review and meta-analysis of longitudinal observat... - PubMed - NCBI
Heart. 2016 Apr 18. pii: heartjnl-2015-308790.
フルテキストはこちらからいけます
Loneliness and social isolation as risk factors for coronary heart disease and stroke: systematic review and meta-analysis of longitudinal observational studies -- Valtorta et al. -- Heart
Lonelinessという単語にドキッとしたあと、risk factors for coronary heart disease and strokeと続く論文タイトルがグサッと突き刺さりました笑
研究デザイン:メタアナリシス
P:18歳以上(アジア人25%含)
E:孤独感や社会的孤立(loneliness and/or social isolation)あり
C:孤独感や社会的孤立なし
O:CHD/strokeの発生(再発は除く)
follow up range:3~21年
言語制限なし
出版物の種類/出版日の期間に制限なし
バイアスリスクの評価はFig2
Funnel plotで視覚的に評価→統計的有意性の領域で欠落している可能性あり。
<結果>
CHDを評価:11文献
strokeを評価:8文献
報告数:4628 CHD and 3002 stroke events
どうやって孤独感や社会的孤立を評価したのか?については、
「Assessment of loneliness and social isolation」の項目を参照
lonelinessを評価:3文献(例「毎日孤独を感じるか?」など)
social isolationを評価:18文献
それぞれ評価方法が異なっている
CHD/strokeの評価
・医療記録や死亡診断書で確認
・医師/看護師によるtelephone interviews
・自己申告
などさまざま。
Pooled estimate of the relative risk(all study)
CHD(n=11) | stroke(n=8) | |
---|---|---|
孤独/社会的孤立 | RR1.29(1.04 to 1.59)I2=66% | RR1.32(1.04 to 1.68)I2=53% |
暴露やアウトカムのinformation biasのリスクの高い文献や、交絡リスクの高い文献を除外したRRも算出されているが(table2)、数値の変動はほとんどない印象(strokeでは統計的有意差がなくなるのもあり)。
<結論>
調査結果は社会的関係性の欠如がCHD/strokeを発症するリスクと関連していることを示唆
高所得国において、孤独や社会的孤立をターゲットとした介入がCHD/strokeによる死亡を防止することができるかどうかの研究が必要とされる。
<感想>
Fig3,4のForest plotで視覚的に見てみると異質性がありそうですね。
CHDは、risk ratioがほぼ真ん中の研究が約半数。脳卒中のほうが異質性はやや低いですがそれでもI2が53%です。
孤独や社会的孤立の評価方法が同一ではないので、その点の問題はありそうですが、exposureの情報バイアスが高い文献を除外したrelative riskも有意差あり(table2)となっています。
このメタアナリシスで断言できるかは微妙ですが、孤独や社会的孤立は心血管イベントリスク上昇の傾向にあると言えそうです。
結論でも述べられているとおり、孤独を解消する介入によってリスクが減少するかどうかはさらなる研究が必要だと思います。
つづいてこちら。
Social isolation, loneliness, and all-cause mortality in older men and women. - PubMed - NCBI
Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Apr 9;110(15):5797-801.
孤独と社会的孤立について調査していますが、対象が高齢者で、アウトカムがall-cause mortality
時間の都合上、フルテキストは目を通さず、結果だけ見ると、
社会的孤立 | HR1.26(95%CI 1.08-1.48 for the top quintile of isolation) |
孤独 | HR0.92(95%CI 0.78-1.09) |
こちらでは意外にも“孤独”は死亡との関連がなかった模様。
どのように評価したのかわかりませんが、高齢者を対象としており、自分が孤独であると訴える傾向にあるかもしれないなと思いました。“孤独”を過大評価しているかもしれないなと。勝手な偏見かもしれませんが…。
その一方で社会的孤立は有意に死亡リスクが高いのは興味深いです。孤独という自己評価より、社会的孤立という客観的な状況のほうが有意な関連があるのかもしれません(社会的孤立に関しては主観だけでなく客観的な評価も加味されるのではという勝手な推測ですが)。
たしかに、ご高齢の方は、一人で家に篭っているよりアクティブに活動している方のほうが元気に余命を過ごされるようなイメージがあります。
こちらの文献は結果しか見ていないので見当違いな意見かもしれませんが汗。
というわけで、孤独感が予後にどう影響を与えるかについての疫学研究を2つとりあげましたが、ややリスク上昇の傾向にあるようです。
死亡リスクについては、家族がいるより一人暮らしのほうが死亡リスクが高いだろうな、とは思います。寂しいからというより、倒れても救急車を呼んでくれる人がいないというのも一因かと。
自分は仕事を休みたくて休みたくてしょうがないのですが、とりあえず仕事をしているうちは、社会的孤立という状況にはない、という見方もできるかもしれません。まあほどほどに休みたいですけどね。週当たりの勤務時間と心血管イベントとの関連を見た文献もありましたし(みなさん、定時で帰りましょう! - pharmacist's record)。
仕事引退してから一気に孤独感が増すというのはあるかもしれないですね。家族がいるならまだしも独身や死別により一人暮らしだと、人と接することが急に少なくなりますので、趣味にあったコミュニティに参加するといった活動が健康維持に繋がるかもしれません。
孤独と心血管疾患/死亡という絶望的なテーマを取り上げましたが、高齢者の社会活動を支援するような仕組みが、健康に貢献するかもという考え方もできます。何事も前向きに考えていきたいですね。