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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

めまいが起きたら安静にしていたほうが良い?

耳鼻咽喉科

以前、ベタヒスチンが処方されている患者さんと話していて、
「サーシェンスと同じだ、と先生から言われたよ」と。

ここで平静を装いながらも大パニック

“サーシェンス”ってなんだ!!?

患者さんの口から効いたこともない医学用語が出てくると大混乱&勉強不足を恥じて死にたくなるのですがまったくわからない。

自分の聞き間違え?

あるいは患者さんがDrの説明を聞き間違えているのかもしれない。
患者さんはDrの説明を一所懸命聞こうとしますが、難しい言葉がたくさん出てくると、横文字を間違って聞き取っていたりすることもあるものです。

さて、
“サーシェンス”と似た響きの医学用語はなんかないのか!?
なにも思い浮かばない…。

無理…。

もうちょっと詳しく聞いてみると、耳に石があるとかなんとか…

ああ、なんだBPPV(良性発作性頭位めまい症)じゃないか。なんだよサーシェンスって…。と思っていると、「あのサッカーの人もそうなんでしょ?」と。

サッカー選手…?

あ!

「澤選手と同じ」!!!

サッカーに疎いのですが、澤選手がBPPVになったというのはなんとなく知っていましたのでようやく聞き間違いに気づくことができました。

さて、BPPVです。
めまいの原因としては最多ではないでしょうか

“めまい”というと疲れやストレスが良くないということで休養を、と指導する薬剤師もいるのではないかと思います。
めまいの原因はそれぞれで一概には言えないのでしょうけど、BPPVに限っては安静にするより、体を動かしたほうが良いといった話もちらほら。
文献を探してみます。

Efficacy of a home-based exercise program on benign paroxysmal positional vertigo compared with betahistine. - PubMed - NCBI
J Otolaryngol Head Neck Surg. 2008 Jun;37(3):373-9.
目的:良性発作性頭位めまい症(BPPV;benign paroxysmal positional vertigo)の患者に対する自宅ベースの運動プログラムの有効性をベタヒスチンと比較
研究デザイン:ランダム化比較試験
P:BPPVと診断された大学病院の外来患者38名(男性10名、女性28名 平均年齢46歳)
E:運動療法(Cawthorne-Cooksey exercises) 6回/日 4週間
C:ベタヒスチン24mg/日 1ヶ月
O:The Vertigo, Dizziness, Imbalance Questionnaire (VDI)、Vertigo Symptom Scale (VSS)  試験の開始時と2ヵ月後で比較

<結果>
運動療法もベタヒスチンともに、ベースライン時よりVDIスコア、VSSスコアが減少
試験終了時のスコアは運動療法のほうが優位(VDIスコアp=0.001、VSSスコアp=0.001)

<結論>
運動療法は、薬剤よりも優れた治療法であり、持続性・慢性のめまいに有効



<感想>
そもそもベタヒスチンがBPPVに効くのかどうかという問題はありますが(メニエール病によるめまいにベタヒスチンは有効? - pharmacist's record)、運動療法のほうが有効と結論しています。

肝心の運動療法(Cawthorne-Cooksey exercises)の内容です
Cawthorne-Cooksey Exercises for Dizziness
座った状態で、
・目線を「上下・左右」に動かす
・指先を見ながら、指を顔から約30cm⇔90cmに離す
・肩をグルグルと旋回させる
・身をかがめて、ペンなどの物を拾う動作
眼を開けた状態と閉じた状態で、椅子に座る⇔立ち上がるという動作を繰り返す

などなど、たくさん記載されているので省略します。

この動画も参考になります。
Home Vestibular Exercises - YouTube

特別な動作はなさそうなので日常生活の活動で代用できるかもしれません。
激しい動作はないようですが、めまい発作が起きている最中はしんどいですよね。ただ、めまい発作後、寝たきりで動かない絶対安静状態をずっと維持するよりは、無理の無い程度に体を動かすようにしたほうが良さそうです。この研究は1~2ヶ月という長いスパンで検討しているので、めまい発作対策としても有用かもしれませんね。

ただこの研究は、運動療法ということで盲検化ができず、かつ、たった38名の小規模なスタディなので、バイアスは大きいように思います。有効性が証明されたとまでは言えませんが、運動療法はお金がかかりませんし、やってみる価値はあるでしょう。患者さんが嫌がるなら無理強いするほどの治療法ではないような気がします。

運動していればBPPV発作は起こらないのであれば澤選手はBPPV発作を起こしたりしないでしょうしね。
またBPPV意外のめまいについてはCawthorne-Cooksey exercisesが有効かどうかはわかりませんので、その点もご注意ください。