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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

抗うつ薬のNNT/NNH

なんとなく見つけた文献なのですが、参考になるかも?ということでメモがわりにピックアップ

Vortioxetine for major depressive disorder: An indirect comparison with duloxetine, escitalopram, levomilnacipran, sertraline, venlafaxine, and vil... - PubMed - NCBI
J Affect Disord. 2016 May 15;196:225-33.
背景:Vortioxetineは大うつ病性障害(MDD;major depressive disorder)の治療薬として承認され、薬学的プロファイルは他の抗うつ薬とは異なる(※)とされている。Vortioxetineと他の抗うつ薬とのhead-to-headの比較研究は限られており、他の試験で得られたエフェクトサイズを用いた間接比較が効果の違いを識別するのに有効

※Vortioxetine:セロトニン(5-HT)再取り込み阻害、5-HT1A受容体作動作用、5-HT1B受容体部分的作動作用、5-HT3、5-HT1D、5HT7受容体拮抗作用など

データソース:プラセボと比較した抗うつ薬のshort-term double-blind trials

<検討薬剤>
vortioxetine
SSRI:sertraline,escitalopram
SNRI:venlafaxine,duloxetine
新規抗うつ薬:vilazodone,levomilnacipran(SNRIミルナシプラン光学異性体

<アウトカム>
有効性:レスポンスの定義は、the Montgomery-Asberg Depression Rating ScaleもしくはHamilton Depression Rating Scaleがベースラインから50%以上減少
安全性(忍容性):有害事象による服薬中止

<結果>
有効性(NNT;Number needed to treat)/忍容性(NNH;Number needed to harm) [vsプラセボ]

NNT(95%CI) NNH(95%CI)
duloxetine(n=8) 6(5-8) 25(17-51)
escitalopram(n=3) 7(5-11) 31(19-92)
levomilnacipran(n=5) 10(8-16) 19(14-27)
sertraline(n=1), 6(4-13) 7(5-12)
venlafaxine(n=4) 6(5-9) 8(7-11)
vilazodone(n=2) 8(6-16) 27(15-104)
vortioxetine(n=11) 9(7-11) 43(28-91)

 


<感想>
vortioxetineは有効性と忍容性のバランスがいいよーというのがこの文献の結論ですが、これは異なる臨床試験の結果の間接比較であるため解釈には注意が必要です。

個人的な経験として、セルトラリンがしばしば新規処方されるのですが、副作用による脱落はこんなに多くないように思います。有害事象による脱落NNH7となっていますが、該当試験が1つだけのようなので、たまたまですかね…。

ちなみにこのvortioxetineは国内未発売、武田薬品とLundbeck社の製品で2013年にMDDの適応でFDAより販売承認を取得しています。2015年にはうつ病に伴う認知機能に関する症状(集中力低下、判断力低下など)に対する効果を追加申請し、FDAに受理されたとのこと。
大うつ病治療剤Brintellix®の認知機能に関する臨床試験データ追記申請の米国FDAによる受理について | 2015年7月~9月 | ニュースリリース | 武田薬品工業株式会社

このような新しい機序の抗うつ薬があるとは知りませんでした。認知機能への作用というのは面白いですね。やはり他の抗うつ薬とは一味違った有効性があるのでしょうか。
他にも、国内未承認の抗うつ薬もけっこうあるんですね。ミルナシプラン光学異性体の製剤があるとは知りませんでした(需要があるかは別ですが…)。

抗うつ薬は忍容性も大事ですので、脱落NNHのデータも参考になります。ただ試験デザインなどでかなり数値に変動があるんじゃないかな?と思いました。有効性も、どのスコアを用いて評価するかによってかわってくると思います。MDD患者を対象としているといっても、被験者の組み入れ基準も試験によって違うので、その点も結果に影響するでしょう。

なのでやはりこの数値をそのまま鵜呑みにしてはいけないかなと思います。あくまで参考程度として捉えておくのが無難ではないでしょうか。



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