pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

降圧剤のアドヒアランス良好vs不良

Medication Adherence and the Risk of Cardiovascular Mortality and Hospitalization Among Patients With Newly Prescribed Antihypertensive Medications. - PubMed - NCBI
Hypertension. 2016 Mar;67(3):506-12.
心血管疾患防止のための降圧剤のアドヒアランス(服薬遵守)の重要性は十分に解明されていない。
心血管疾患(虚血性心疾患(IHD;ischemic heart disease)、脳出血(cerebral hemorrhage)、脳梗塞(cerebral infarction))による死亡率に対する降圧剤のアドヒアランスの効果評価した。

対象:2003年~2004年に新たに降圧剤を服用開始した20歳以上の高血圧患者33,728名(韓国の国民健康保険のデータからランダムに抽出した3%のサンプルコホートを利用)

降圧剤の累積服薬遵守率により3群に分類
good adherence group(≥80%)
intermediate adherence group(50%-80%)
poor adherence group(<50%)

33,728名中670名(1.99%)が冠動脈疾患や脳卒中により死亡

good(≥80%) vs poor(<50%)
IHDによる死亡 HR1.64(95%CI 1.16-2.31)
脳出血による死亡 HR2.19(95%CI 1.28-3.77)
脳梗塞による死亡 HR1.92(95%CI 1.25-2.96)

<感想>
こんな研究もあるんですねー。
服薬遵守率が低い場合、食事療法などありとあらゆるDrの指示をきちんと守ってなかったりするんじゃないかというさまざまな交絡因子がありそうな気がするのですが、そのあたりはどうなんでしょうね。残念ながらフルテキストは見れません。

他にも似たような文献がないか探してみます

Drug adherence and the incidence of coronary heart disease- and stroke-specific mortality among 218,047 patients newly prescribed an antihypertensi... - PubMed - NCBI
Int J Cardiol. 2013 Sep 30;168(2):928-33
背景:ランダム化試験で降圧剤のアドヒアランスを良好に保つことが心血管疾患を防止しうることを示唆されているが、アドヒアランスが心血管疾患を減少させるかどうか十分に検討されていない。プライマリケアにおける降圧剤のアドヒアランスと心血管疾患の死亡率の関連性を評価した。

対象:2001年~2005年にはじめて降圧剤を処方された患者(香港のデータベースを使用)
フォローアップ:5年

降圧剤の累積服薬遵守率により3群に分類
poor adherence group(Proportion of Days Covered<40%)
intermediate adherence group(PDC 40%-79%)
high adherence group(PDC ≥80%)

<結果>
5年間で218,047人中3825人(1.75%)心血管死
各群の割合は、poor:intermediate:high=32.9%,12.1%,55.0%

high vs poor HR0.91(95%CI 0.85-0.98 p=0.012)
intermediate vs poor HR0.46(95%CI 0.41-0.52, p<0.001)


降圧剤のアドヒアランスは心血管死と関連しているとの結論ですが、もっともアドヒアランスが良い群は意外とリスク低下が軽度で、中間群が大幅にリスク低下という結果。アブストのみで全文読めないため、結果の解釈が難しいです…。


こちらはメタアナリシス。降圧剤だけでなく、心血管疾患治療薬について検討されています。
Adherence to cardiovascular therapy: a meta-analysis of prevalence and clinical consequences. - PubMed - NCBI
Eur Heart J. 2013 Oct;34(38):2940-8.

P:心血管疾患治療薬を服用している患者(18歳以上)
E:心血管疾患治療薬のアドヒアランス良好(80%以上)"good(defined as ∼ ≥ 80% adherence to CVD medications"
C:アドヒアランス不良(80%未満)"poor(less than 80%)"
O:心血管死、全死亡

1960~2012の文献をサーチ。言語制限なし。出版バイアスはBegg testとfunnel plotで評価
「Two investigators independently assessed literature eligibility」2名が独立して評価

<結果>
計44studyを同定(n=1,978,919)
33cohort、8nested case-control、3clinical trial(コホート研究が全体のn数の87%を占める)
平均フォローアップ期間は3.2年

各薬剤のアドヒアランス良好(80%以上)の割合

スタチンstatins(12 studies) 54%(41–67)
降圧剤antihypertensives(11 studies) 59%(42–77)
アスピリンaspirin (2 studies) 70%(49–91)
抗糖尿病薬antidiabetic medications(2 studies) 69%(59–78)

 
心血管疾患と全死亡

心血管疾患RR 全死亡RR
スタチン 0.85(0.81-0.89) 0.55(0.46-0.67)
降圧剤 0.81(0.76-0.86) 0.71(0.64-0.78)
ACEi/ARB 0.75(0.55-1.01) 0.74(0.69-0.8)
βブロッカー 0.83(0.71-0.98) 0.83(0.69-1.0)
CCB 0.91(0.82-1.01) 0.97(0.87-1.09)
配合剤Multiple agents 0.80(0.73-0.89) 0.49(0.23-1.05)
アスピリン 0.60(0.31-1.16) 0.45(0.16-1.29)
any CVD medication 0.80(0.77-0.84) 0.62(0.57-0.67)

https://d1vzuwdl7rxiz0.cloudfront.net/content/ehj/34/38/2940/F3.large.jpg
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figに異質性I2の記載はないですが、「Assessment of heterogeneity and publication bias」の項目に「P(heterogeneity) >0.05 for statins and antihypertensives」といった記載もあり、スタチンや降圧剤に関して異質性は問題ないようです。

出版バイアスの記述の部分、「There was no evidence of publication bias except for the studies reporting on adherence to statins and any CVD outcomes (PBegg <0.05), which indicated a possible lack of publication of smaller studies reporting null or negative associations between statin adherence and CVD outcomes 」スタチンの研究を除いて出版バイアスなし、スタチンとCVDアウトカムの負の相関を示す研究の不足の可能性を示したということでしょうか(←ちょっと翻訳に自信がありません。詳細はSupplementaryをご参照ください)

スタチンは多少服薬遵守率が悪くてもそんなに影響ないだろうと思っていましたが少々驚きました。
元論文のほとんどが観察研究であり、交絡因子の調整が充分だったのかどうかが気になるところです。アドヒアランスが悪い患者さんは、食事療法などもきちんと指示通り行っていないといったことも考えられますよね。

今回とりあげた文献は、観察研究ばかりですが、治療意識が低くて薬を用法どおり飲むことの重要性をまったく理解していないような患者さんに対して服薬指導する上では"使える"文献かなぁと思います。とくにスタチンは飲み忘れたり、薬を切らしたり、勝手に調節したりといった患者さんが多い印象です。用法守って飲んでいる人と、きちんと飲めてない人では、死亡リスクに影響するという報告があることを教えてあげたらきちんと飲むようになるかも?

まあ、そうは言ってもこれらは観察研究なので、アドヒアランスが悪い患者さんが、きちんと用法を守って服用する、という介入によりアウトカムが改善するかどうかはちょっと別問題なので、直結するかどうかはわかりません。そこが大事なのですが、そのようなエビデンスはあるのでしょうか。またの機会に探してみます。
薬剤師による介入でアドヒアランスが向上し、アウトカムが改善するのであればすばらしいですね。