pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

禁煙! きっぱり辞めるvs徐々に辞める

Gradual Versus Abrupt Smoking Cessation: A Randomized, Controlled Noninferiority TrialGradual Versus Abrupt Smoking Cessation | Annals of Internal Medicine
Ann Intern Med. Published online 15 March 2016 doi:10.7326/M14-2805
背景:多くの禁煙ガイドラインで事前減量無しで(突然;abruptly)辞めることを推奨しているが、多くは徐々に(gradual)禁煙というケースが多い。
研究デザイン:RCT、非盲検化
P:タバコ中毒の喫煙者(ほとんどが白人)n=697
E:"gradual-cessation" 徐々に禁煙する(禁煙前に2週間で75%、徐々に減量;reduced smoking gradually by 75% in the 2 weeks before quitting)
C:"abrupt-cessation" 突然の(事前減量なしの)禁煙
O:禁煙(プライマリは4週間、セカンダリは6ヶ月)

<結果>

gradual徐々に abrupt突然に relative risk(95%CI)
At 4 weeks 39.2% 49.0% RR0.80(0.66 to 0.93)
At 6 months 15.5% 22.0% RR0.71(0.46 to 0.91)


というわけで、徐々にタバコの本数を減らしていって禁煙するより、すっぱり禁煙したほうが禁煙成功率が高いという結果でした。
これがこのテーマの唯一の研究であれば、徐々に辞めるより突然辞めるほうがよいと言えるだろう、となりますが、逆の結果の論文がないかどうか調べておく必要はあるでしょう。


検索してみたらコクランレビューがありました。筆頭著者(Nicola Lindson氏)が同じですね。
(2012年版もあるようですが、全文は2010年版しか見れないので2010年版を。どちらもn=3760でresultの記載内容に差はないようですので)
Reduction versus abrupt cessation in smokers who want to quit. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2010 Mar 17;(3):CD008033
背景:禁煙の一般的な方法は指定の日に突然辞めることとされているが、失敗する人もいる。代替的アプローチとして、禁煙前にタバコを減らす方法がある。成功率に差があるかどうか評価することは重要である。

研究デザイン:RCTのメタアナリシス(準ランダム化も含む)
P:禁煙を望んでいる成人
E:"reduction"禁煙前にタバコの量を減らす
C:"adrupt"禁煙前にタバコの量を減らさない
O:禁煙開始後、少なくとも6ヶ月以上経過後の禁煙率(禁煙の検証には呼気一酸化炭素などを指標とした)
(6ヶ月以上フォローアップしていないtrialは除外したと記載あり)

評価者バイアス:1人の著者が文献を検索し、2名の著者が独立してレビューに含める文献を吟味(Selection of studiesの1行目~ )
元論文バイアス:risk of bias table(fig1)で評価(→weightが高いtrialは概ね良好と言えそうです)

選定の基準
1.ランダム化or準ランダム化の記載があるか?
2.参加する喫煙者は禁煙を望んでいるか?
3.禁煙方法が"reduction"、"adrupt"を含む少なくとも2つ以上の群があるか?
など全6項目の基準を元に選定

<結果>
アウトカム:Abstinence(禁煙)

各study reduction adrupt weight risk ratio(95%CI)
Flaxman 1978 9/32 9/16 5.9% 0.50(0.25-1.01)
Hughes 2009 12/297 21/299 10.3% 0.58(0.29-1.15)
Jerome 1999 43/415 39/296 22.5% 0.79(0.52-1.18)
Gunther 1992 12/55 14/55 6.9% 0.86(0.44-1.68)
Riley 2005 21/227 19/196 10.1% 0.95(0.53-1.72)
Curry 1988 16/65 19/74 8.8% 0.96(0.54-1.70)
Etter 2009 32/154 31/160 15.0% 1.07(0.69-1.67)
Cinciripini 1995 20/65 17/63 8.5% 1.14(0.66-1.97)
Cummings 1988 35/662 23/615 11.8% 1.41(0.85-2.36)
Roales-Nieto 1992 2/7 0/7 0.2% 5.00(0.28-88.53)
total 202/1979 192/1781 100% 0.94(0.79-1.13)

(RRが1を超えたらFavours reduction to quit)
異質性I2=14%


RR0.94ということで、事前減量無しの突然の禁煙のほうがわずかに有利ですが、ほとんど同等という結果です。
1つ目に取り上げたAnn Intern Medの結果を踏まえても、大差はないなという印象ですね。
徐々に減らすか、指定日にピタッと辞めるか、患者本人の意向に沿って決めていただいてもいいじゃないかと思います。

自分だけかもしれませんが、なんとなく徐々に減らしていったほうが成功するんじゃないのかな!という印象がありました。タバコを辞めたい方もそんな印象があるんじゃないでしょうか。
「禁煙するなら、やっぱり少しずつ減らしていったほうがいいよね?」そんな質問をいつか受けることがあるかもしれません。
その場合には、これまでの研究結果を元に、「徐々に減らしても禁煙成功率がアップするわけではないので無理に少しずつ減らすといった方法をとる必要はありませんよ」とお答えできそうですね。「もちろん、少しずつ減らしていくほうがうまく禁煙できそうだな!と思われるなら徐々に減らすのもアリです」とも。
(多くの文献が徐々に禁煙のほうが成功率が低いという結果なら、きっぱり辞めたほうがいいと答えるかもしれませんが、コクランを見ると微妙ですので^^;)

結局、どっちでもいいのかよ!と言われそうですが、この「どっちでもよさそうだということがわかっている」ことが重要ではないかと思います。(もちろんエビデンスは日々更新されますので、今後、続々とスパッと辞めたほうが成功率が高いという文献が出てくれば、そちらを支持する側へ傾いていくことになります)

ちなみに、自分は1度目の禁煙はスパッと辞めて、2~3ヶ月で失敗。あれは忘れもしない、大好きだったけど閉店してしまった西麻布のelevenで喫煙者の友達からの誘惑に負けて吸いました笑。あの頃は楽しかった…。
2度目のチャレンジはなんとなくスパッと辞めて、またいつでも吸ってやろうと思ってましたがなぜか吸わないまま続いています。なぜでしょうね?こればかりはよくわかりません。いまだに家にフィリップモリスの未開封のタバコがありますが捨てられず…。
またそのうち吸い出すかもしれませんね。