pharmacist's record

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がんによる消化管閉塞にステロイドが有効?

がんによる悪性消化管閉塞(malignant bowel obstruction)に対してステロイドが有効かもしれないという報告。

Corticosteroids for the resolution of malignant bowel obstruction in advanced gynaecological and gastrointestinal cancer. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD001219.
研究デザイン:RCTのメタアナリシス
P:advanced gynaecological(婦人科) and gastrointestinal(消化管がん)cancerによる消化管閉塞
E:コルチコステロイド
C:プラセボ
O:resolution of obstruction(閉塞の再開通)and death at one month

<結果>
3つの未発表のDB-RCTと、7つのスタディ(前向き・後ろ向き)が適合
RCTのみをもとに解析
・1ヶ月死亡率は有意差無し
・閉塞の再開通について統計的に有意でない傾向にあり、NNT6(3-∞)

<結語>
dexamethasone6-16mg静脈内投与にて腸閉塞の再開通の可能性があるかもしれない。
副作用の発生率はきわめて低く、死亡率には影響を与えなかった。


<感想>
日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」では消化管閉塞の痛みに対してステロイドは“弱い推奨”
アブストには記載がありませんが、ガイドラインによると消化管閉塞の再開通の定義は、「嘔吐や蠕動痛などの症状の消失、軽食の摂取が可能、排ガスあるいは蠕動の存在」だそうです。
ステロイドにはいろんな使い方がありますね。