pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

がん性疼痛に対するステロイド(コクランレビュー2015)

Corticosteroids for the management of cancer-related pain in adults. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Apr 24;4:CD010756.
背景:がん性疼痛の治療の中心はオピオイドだが、ステロイドは鎮痛補助薬としてしばしば併用される。脳転移や脊髄圧迫などのがん関連の合併症の管理や炎症性の痛みに対する鎮痛に効果的とされている。しかし、ステロイドは用量や投与期間に依存した幅広い副作用がある。

目的:がん性疼痛にステロイドは有益かを検討

選定基準:ランダム化もしくは前向きの比較試験
P:18歳以上のがん性疼痛のある患者
E:ステロイド
C:プラセボ、もしくは標準治療±支持療法
O:がん性疼痛の強度

<結果>
15試験が選定基準に合致(n=1926)
各試験の対象者数20~598名
使用されたステロイドは主にデキサメタゾン

15試験のうち6試験の解析より、
ステロイド1週間投与により痛みがやや改善
平均差MD:0.84(95%CI 1.38 to 0.30)エビデンスレベル低
痛みの評価は0~10点で評価、ステロイドにより10点満点のスコアが0.84点低下

有害事象については記載が不十分


がん性疼痛に対するステロイドの有効性・安全性を評価するにはデータ不十分といったところでしょうか。
理想的な投与量、投与期間、投与経路の確立が必要との結語です。

日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」において、
オピオイドで十分な鎮痛効果が得られない患者において、
①脊髄圧迫など神経圧迫による痛み
②炎症による痛み
③頭蓋内圧亢進に伴う頭痛
④臓器の被膜伸展痛
⑤骨転移
などの特定の状態においては副作用に注意しながらステロイドを投与(弱い推奨、エビデンスレベルとても低い)
となっています。
NCCNガイドライン2012では消化管閉塞についてもコルチコステロイドを推奨しています。


The role of corticosteroids in the treatment of pain in cancer patients. - PubMed - NCBI
Curr Pain Headache Rep. 2012 Aug;16(4):307-13
がん患者におけるステロイドの適応症と用量(table4)

臨床適応 推奨適応量
頭蓋内圧亢進Raised intracranial pressure デキサメタゾン(dexamethasone)8–16mg/day
脊髄圧迫Spinal cord compression デキサメタゾン16–32mg/day (8–16mg b.i.d.)
上大静脈閉塞Superior vena cava obstruction デキサメタゾン16–24mg/day(8mg b.i.d or t.i.d.)
腸閉塞Bowel obstruction デキサメタゾン8–16mg/day

Nonspecific

食欲不振Anorexia デキサメタゾン4mg; プレドニゾロン(prednisolone)10–20mg
吐き気・嘔吐Nausea and vomiting デキサメタゾン4–8mg
骨/神経因性疼痛Bone and neuropathic pain デキサメタゾン4–8mg

デキサメタゾンは高い効力、作用時間が長い、ミネラルコルチコイド作用が最小限であることなどにより、がん性疼痛の管理に良く用いられる(conclusionより)

日本だともうちょっと用量が少ないのかな?という気もします。
医学書院の「緩和ケアエッセンシャルドラッグ」では、目安は上記投与量のおおよそ半量となっていました。
医師会の「緩和ケアガイドブック2008年版」では、
疼痛,呼吸困難,嘔気嘔吐,食欲低下,全身倦怠感などに対して、
・ベタベタゾン4-8mg/d 3~7日間
効果がなければ中止
予後が3ヶ月以上なら、合併症を避けるため1〜5日間の短期投与を反復
予後が3ヶ月未満なら、効果の維持できる最小量に漸減(0.5〜4mg/日)
・あるいは、0.5mg/dより漸増する。
となっています。

<有害事象について>
immediate adverse effects(即座の、短期の):免疫抑制(カンジダ症を引き起こす)、高血糖、精神症状
Long-term effects:ミオパチーmyopathy、消化性潰瘍peptic ulceration、骨粗しょう症osteoporosis、クッシング症候群Cushing’s syndrome

・NSAIDsとの併用は胃出血リスクを15倍に増大(PMID:2012355 1991年の文献、古い)、併用をさけるか、胃保護薬を投与するべき。
・ビスホスホネートは高齢者や長期ステロイド治療を要する場合に考慮

582名のがん患者のうち181名に有害事象あり。ムーンフェイス(43%)、ミオパチー/筋力低下(34%)、紫斑病(31%)、口腔カンジダ(28%)、糖尿病の発症や悪化(17%)。(Acta Oncol. 2006;45(4):430-7.PMID: 16760179)

頻度は高くないが、デキサメタゾン誘発性しゃっくりの報告あり。等価用量のプレドニゾロンやメチルプレドニゾロンに切り替えることで改善(J Pain Symptom Manage. 2012 Mar;43(3):625-30 PMID: 21924583)。

※"Overview of Clinical Studies of Corticosteroids in Cancer Patients"にさまざまながん患者に対する経口ステロイドの有効性に関する文献が紹介されていますので詳しく調べたい方には参考になるかと思います。


最後にざっくり換算表を

成分名 商品名 生物学的半減期(血中半減期ではない) 等価用量
プレドニゾロン プレドニン 18-36hr 5mg
メチルプレドニゾロン メドロール 18-36hr 4mg
デキサメタゾン デカドロン 36-54hr 0.5mg
ベタメタゾン リンデロン 36-54hr 0.5mg

等価用量については糖質コルチコイド作用(抗炎症作用)に基づいているようです。
デキサメタゾン、ベタメタゾンはミネラルコルチコイド作用はほぼゼロです。
パッと見、こんなの覚えたくないわッ!て思いましたが、薬剤師なら暗記するまでもないですね。錠剤の規格を知っていればOKってことです。

ステロイドは本当にわけがわからない…。奥が深すぎますね。今後もちょこちょこ調べてみます。