pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

「うどん鼻スッキリ説」提唱!

新年早々風邪をひきまして、鼻症状がひどかったわけですが、風邪薬は服用しませんでした。
鎮静性抗ヒスタミン薬は眠くなりますし、第二世代はお値段が高い…。
カルボシステインなどの粘液溶解薬も鼻水の性状が変わり、なぜか逆に排出しにくくなって(←これは自分がヘンなんだと思います!)、あまり好きではないので完全放置でした。

風邪をひいたときは、温かいうどんなどを食べるわけですが、水蒸気を吸い込んでしまうせいか、大量に鼻水が出ます。
そのせいか、とても鼻の通りがよくなって、すっきりするんです。

「粘液溶解薬や去痰薬よりも温かいうどんを食べるほうが鼻がスッキリする説(略称:うどん鼻スッキリ説)」を唱える前に、そんな文献はないのかなと調べてみました。

The effects of a hot drink on nasal airflow and symptoms of common cold and flu. - PubMed - NCBI
Rhinology. 2008 Dec;46(4):271-5.
風邪やインフルエンザの症状、鼻の気流(nasal airflow)に対するホットドリンクの効果について。

介入:ホットフルーツドリンク
アウトカム:nasal airflowの主観的/客観的評価と、風邪/インフルエンザ(30名)の症状の主観的評価
研究デザイン:不明

<結果>
・nasal airflowの客観的な評価においては効果なかったが、主観的評価においては有意な改善あり。
・ホットドリンクは鼻水runny nose、咳cough、くしゃみsneezing、咽頭痛sore throat、寒気chilliness、疲労tirednessの症状緩和
・室温のドリンクは鼻水、咳、くしゃみを緩和

ホットドリンクの効果は、プラセボ効果の観点と、唾液分泌/気道分泌物の生理的効果で説明される


ということなんですが、研究デザインが不明でなんとも言えないですね。
「うどん鼻スッキリ説」はプラセボ効果なんでしょうか…?
こちらはホットドリンクということですが、ホットドリンクで大量の水蒸気に暴露されるんですかね。自分はホットドリンクは基本飲まないのでよくわからないのですが…。


こちらは風邪患者における、鼻症状や鼻の通気性に対する蒸気吸入の影響についての文献
Effects of steam inhalation on nasal patency and nasal symptoms in patients with the common cold. - PubMed - NCBI
Am J Otolaryngol. 1987 May-Jun;8(3):149-53.
研究デザイン:二重盲検ランダム化プラセボ対照比較試験
P:風邪患者62名
E:42~44℃のhot airを鼻から吸引 20分×2回
C:プラセボ療法の詳細不明
O:風邪症状スコアカード(毎日記録)、鼻の通気性(鼻の吸気・呼気のピークを測定)
<結果>
水蒸気(steam)の吸引は風邪の症状を軽減し、鼻の通気性を改善

ということですが、アブストのみで詳細不明。DB-RCTということですが、プラセボが何なのかわかりませんし、盲検化も危うい気がします。そもそも温かい蒸気を鼻から吸うのが介入群とすると、盲検化されたプラセボ治療って何なのでしょう??


こちらはコクラン。全文フリー!
Heated, humidified air for the common cold. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 4;6:CD001728.
背景:加熱/加湿した空気は風邪の患者に使用されてきた。理論的には水蒸気が痰などの粘液の排出を助けたり、熱が風邪ウイルスを破壊するのかもしれない(in vitroでそうであるように)。
目的:風邪の治療における水蒸気の吸引の効果を評価
P:風邪やウイルス性鼻咽頭炎
E:40~47℃の蒸気を吸引(空気を送る装置を使用)
C:30℃以下の温度の空気
O:風邪の臨床的重症度の軽減(鼻水、鼻づまり、くしゃみなど)
選定基準:RCT

評価者バイアス:「The two review authors independently reviewed」
出版バイアス:言語制限なし「We did not have any language or publication restrictions」、未出版は含まれていない、研究数が少なくFunnel Plotによる検討はされていない「We only included published studies. Funnel plots could not be constructed due to paucity of studies.」
元論文バイアス:figure1,2

<結果>
6つのRCTを選定

アウトカム:症状持続(Number of participants with persistent symptoms at the end of therapy)

介入 対照 オッズ比(95%CI) 異質性I2
Ophir 1987 6/32 23/30 OR0.1(0.04-0.27)
Tyrrell 1989b 23/45 23/39 OR0.73(0.31-1.72)
total OR0.31(0.16-0.6) I2=89%

 

Hendley 1994

アウトカム 介入 対照 オッズ比(95%CI)
症状スコアの改善なし 23/45 26/39 OR0.53(0.22-1.26)
鼻腔培養陽性(positive nasal wash culture) 8/10 9/10 OR0.47(0.04-5.19)

 

Mackin 1990

アウトカム 介入 対照 オッズ比(95%CI)
副作用(side effect) 11/31 3/34 OR4.73(1.46-15.3)
治療反応率(therapy did not help) 8/31 16/33 OR0.39(0.14-1.05)

Mackin1990で報告のあった有害事象は、立ちくらみ、鼻や唇の炎症、鼻や痰の増加(increased congestion)、装着したマスクの不快感など。


<結語>
水蒸気の吸引は一貫性のある利益を示していない。したがって、風邪の標準治療との比較したDB-RCTが行われるまでは、水蒸気の吸引療法は風邪に対するルーチンでの治療は推奨されない。



(コクランが選定したOphir 1987は、コクランの1つ前にとりあげたAm J Otolaryngol.1987の文献でした。先にコクランを読めばよかった…)
<感想>
症状軽減については、totalで有意差がついていますが、2つのRCTを統合しただけで異質性高。効果があったというRCTと効果がなかったというRCTがあるということですね。有意差がなかったTyrrell 1989bは対照群も水蒸気を吸引しているみたいです(介入が43度、対照が30度で装置を使用して吸引)。一方、Ophir 1987は、対照群は水蒸気の吸引ではなく、室温22~24度の空気を使用したようなので、差が出やすかったのではないかと。ちなみにTyrrell 1989bも論文の概略を見てみると、治療後の症状評価が"better"の割合は、介入群のほうが多くなっていて、Tyrrell 1989bもポジティブな結果といえるのでは?と思いました。

ということはやっぱり水蒸気を吸引するのは効くんじゃん!?と思ったのですが、「うどん鼻スッキリ説」を唱えている自分の感想ですので、バイアスがかかりまくっているかもしれません

有害事象については、これらの試験ではマスクを装着して吸引しているようなので、そのマスクの不快感があるようです。これは温かいうどんの飲食ではおこりません!鼻や唇の炎症もうどんでは起こらないでしょう。ただ、うどんが熱すぎて舌を軽く火傷することはありえますのでご注意ください(自分はしばしばあります!)。
鼻や痰の増加も副作用として記載されていますが、水蒸気によって一時的に起こるものではないかと。ただ、そのあと鼻がすっきりすると思うんですけどね…。


「うどん鼻スッキリ説」の検証のため水蒸気の吸引に関するエビデンスを探したのですが、コクランの結論は否定的で追加検証が必要ということでした。
まあ、結局のところ症状の自覚の問題なので、鼻がすっきりする!というのであれば水蒸気たっぷりの汁物を食べればいいし、一時的に鼻水がいっぱいでて嫌だとか、ぜんぜんすっきりしない!という方は食べなければいいと思います。
ちなみにカップラーメンとかでは駄目です。水蒸気がぜんぜん足りません。
アツアツの鍋焼きうどんがおすすめです(某和食チェーン店の鍋焼きうどんが美味い!)
ただ、うどん食べ過ぎは、炭水化物の取りすぎという懸念もあるのでご注意ください。


ちょっとふざけた感じになってしまいましたが、それなりに真面目に検証したつもりです汗
このように日常のちょっとした疑問や思い付きをPUBMEDで調べるのを習慣づけると良いのではないでしょうか。
ちなみに、うどん関連の食品会社やファミレスなどとのCOIはありません笑