JAMA Network | JAMA | Effects of Nicotine Patch vs Varenicline vs Combination Nicotine Replacement Therapy on Smoking Cessation at 26 Weeks: A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2016;315(4):371-379
もっとも効果的に禁煙できる禁煙補助薬を同定することが重要である
目的:ニコチンパッチ、バレニクリン、併用(C-NRT;combination nicotine replacement therapy)の26週間の禁煙率を比較検討
研究デザイン:オープンラベルランダム化比較試験、ITT解析、
P:ウィスコンシン州のマディソン、ミルウォーキーで募集した喫煙者(そのうち65%はランダム化の前に参加を拒否)
E/C:①ニコチンパッチ(n=241) ②バレニクリン(n=424) ③C-NRT(ニコチンパッチ+ニコチントローチ)(n=421) ①~③禁煙カウンセリングを6回
O:26週後の7日間禁煙率(7-day point-prevalence abstinence)
治療期間:12週間
<患者特性>
平均年齢:48歳
女性:52%
人種:白人67%
喫煙本数:平均17本/日
<結果>
12か月のフォローアップが完了したのは84%
ニコチンパッチ(n=241) | バレニクリン(n=424) | C-NRT(n=421) | |
26週後 | 22.8%[55/241] | 23.6%[100/424] | 26.8%[113/421] |
52週後 | 20.8%[50/241] | 19.1%[81/424] | 20.2%[85/421] |
忍容性は概ね良好だったが、バレニクリンは鮮明な夢、不眠、吐き気、便秘、眠気、消化不良などの有害事象がニコチンパッチよりも高頻度
<感想>
バレニクリンとニコチンパッチの併用のエビデスンが出たのか!と思って読んでみたら、違いました…。
アウトカムの解釈に自信がないです。
The primary outcome was carbon monoxide–confirmed self-reported 7-day point-prevalence abstinence at 26 weeks.
self-reportedとなっていますが、呼気一酸化炭素って自分で測れるんですかね?
喫煙有無の自己申告と、呼気一酸化炭素で評価ということでしょうか…。
一酸化炭素のカットオフ値はアブストには載っていませんでした。
How low should you go? Determining the optimal cutoff for exhaled carbon monoxide to confirm smoking abstinence when using cotinine as reference. - PubMed - NCBI
Nicotine Tob Res. 2014 Oct;16(10):1348-55.
こちらでは3ppmをカットオフ値とするのが良いと書いてあります。ほんのわずかの喫煙も見逃すものか!という感じでしょうか。標準カットオフ8~10ppmでは偽陰性が高いとのこと。逆に厳しくしすぎて偽陽性となることもありそうな気もしますが。
http://www.houdou-kenpo.or.jp/health/image/health16_07.pdf
こちらは参考程度に。
0~6ppm:非喫煙者、7~10ppm:要注意範囲、11~15ppm:喫煙者
だいたい10ppmを超えれば喫煙者、そして数値が高くなるほどヘビースモーカー。
職場における喫煙対策のためのガイドライン(全文)
職場における喫煙対策のためのガイドラインでは、職場の空気は一酸化炭素濃度10ppm以下と規定されています
さて、JAMAの文献に戻りますが、バレニクリン、パッチ、パッチ+トローチの3群において、禁煙率に有意な差はなかったようです。
20%前後と禁煙率が低いのが印象的ですが、これは試験デザインの影響ではないかと思いました。
喫煙者を募集して臨床試験を行ったようですが、おそらく臨床試験の被験者はタダで禁煙治療を受けれるということですよね。
そもそも禁煙の意思が弱い集団だったのではないかなと。
実際、お金を払って禁煙治療を受けた患者さんの成功率はもう少し高くなると思います。
そうなると観察研究のデータも大事ではないかと思い国内の文献を探してみました。
禁煙治療実施のレトロスペクティブな解析結果。
禁煙治療におけるバレニクリンとニコチンパッチの治療成績の検討
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 Vol. 23 (2013) No. 2 p. 188-192
喫煙有無の評価は自己申告と呼気一酸化炭素濃度(カットオフは10ppm)
禁煙プログラム終了時点の禁煙成功率は、
バレニクリン51%(27/53)、ニコチンパッチ34%(21/61)
レトロなデータ解析なので、交絡もあると思います。これにより、バレニクリンのほうが有効とは断定できませんが、実際の禁煙治療の成功率はどれくらいなのか?という意味では参考になるデータだと思います(n数が少ないですが)。
禁煙補助に関する文献を読んだのは初めてでして、自分の中で考えはまとまってないのですが、
今回のJAMAの文献より、
①パッチとトローチを併用しても、より効果的とは言えない
②ニコチンパッチとバレニクリンの有効率に大きな差はない
③バレクレニンは吐き気や睡眠障害などの副作用はニコチンパッチより多い
という知見を得たという感じです。
自分は無治療で禁煙できたので、禁煙補助治療に関する興味があまりないんですよね…。
結局は意思の強さじゃない?と思ってしまいます。
喫煙によりどのようなメリット・デメリットがあるのかをきちんと考えてみると良いのではないでしょうか