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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

整腸剤で抗生剤による下痢を防げる?(小児)

お子様に抗生剤が処方される際には、必ずと言ってよいほど整腸剤が処方されます。
下痢を防ぐことが目的ですが、その有効性はどの程度でしょうか。

コクランレビューがでています。
Probiotics for the prevention of pediatric antibiotic-associated diarrhea. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Dec 22;12:CD004827.
背景:抗生剤は頻繁に小児に処方される。抗生剤により腸内のバランスが変え、抗生剤関連下痢症(ADD;antibiotic-associated diarrhea)を引き起こす。プロバイオティクス(整腸剤)は腸内細菌叢の改善によりADDを防ぐことができる可能性がある

P:抗生剤を投与された0~18歳の小児
E:プロバイオティクス
C:代替予防法orプラセボor無治療
O:抗生剤使用により二次性の下痢
研究デザイン:RCTのメタアナリシス

<結果>
選定基準を満たしたのは23試験(n=3938)。そのうち分析されたのは22試験(n=3898)(試験が完了しなかった患者は分析に含まれなかった)

使用されたプロバイオティクス:Bacillus spp., Bifidobacterium spp., Clostridium butyricum, Lactobacilli spp., Lactococcus spp., Leuconostoc cremoris, Saccharomyces spp., orStreptococcus spp.
これらの株を単独もしくは併用で使用
11試験は単株。1~4株が多いが、中には7株、10株使用の試験も(10株てすごいですね!)。

バイアスリスクは10試験がlow、13試験はhighもしくはunclear

プロバイオティクス コンロトール リスク比 NNT 異質性
ADD発生 8%(163/1992) 19%(364/1906) RR0.46(95%CI 0.35 to 0.61) NNT10 I2=55%

エビデンスの品質は中等度(GRADE criteria)。

有害事象として発疹、吐き気、ガス、鼓腸、腹部膨満、腹痛、嘔吐、痰、胸痛、便秘、味覚異常、食欲低下などが報告されたが、
プロバイオティクス群とコントロール群において、リスク差はほとんどない(RD0.00[95%CI -0.01to0.01])

健康な小児に重篤な有害事象はなかったが、中心静脈カテーテルの使用や、バクテリアルトランスロケーション(腸内細菌が血流やリンパを介して体内に移行)に関連する障害を含むリスクを有する衰弱/免疫低下状態の小児において重篤な有害事象が認められている。


相対リスクが半減、NNT10ということで、意外と効いているなという印象です。
有害事象はプロバイオティクスとは関連なさそうなものばかりですね。ただし、重篤な有害事象もゼロではないということで、プロバイオティクスの安全性についての文献を探してみますと、全文フリーの文献がありました。こちらは小児のみの報告ではなく、成人が主です。

Probiotic use in clinical practice: what are the risks? - PubMed - NCBI
Am J Clin Nutr. 2006 Jun;83(6):1256-64
プロバイオティクスの関連が疑われる菌血症(細菌;bacteremia、真菌;Fungemia)の報告あり(table1,2)。

プロバイオティクスによる敗血症のリスクファクター(table3)

Major risk factors
衰弱状態や悪性腫瘍などの免疫低下
未熟児
Minor risk factors
中心静脈カテーテル(CVC;central venous catheter)
下痢や腸炎などの腸上皮バリアの障害
空腸瘻からの投与
プロバイオティクスに耐性の広域抗生剤の併用投与
高い粘膜付着性または既知の病原性の性質をもつプロバイオティクス
心臓弁膜症(Lactobacillusのみ)

 
「Risk factors for probiotic sepsis」の項目に健常者においてはプロバイオティクスの使用に関連した敗血症の報告はないと記載あり。
菌血症のリスクもあるようですが、重篤な疾患を抱えていない健常者においては心配なさそうです。

小児への抗生剤の投与そのものの有用性については議論の余地があるかもしれませんが、基礎疾患のない健康なお子様が抗生剤を投与される際の整腸剤のルーチン投与は有用かと思います。整腸剤は低薬価で、味も悪くないですしね(小さいお子様の場合、苦い粉を飲むのはかなりの負担ではないかと)。