骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2011年版によると、PTH製剤のテリパラチドは経口ビスホスホネートとの併用は推奨されていないようです。
ガイドラインに書いてあるから、ではなく、なぜ推奨されていないかを確認したくてPubmedで文献検索したところメタアナリシスがでていました。
アウトカムが骨折ではなく、resultでも骨折の差について触れていないようなので読むのをやめようかとも思いましたが…。
Parathyroid hormone plus alendronate in osteoporosis: a meta-analysis of randomized controlled trials. - PubMed - NCBI
Int J Clin Exp Med. 2015 Mar 15;8(3):3338-48
背景:アレンドロネートは骨吸収を抑制するのに対し、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤は骨吸収と骨形成の両方を促進。アレンドロネートとPTHの併用による骨密度(BMD;bone mineral density)に対する効果を評価するためメタナリシスを行った。
<選定基準>
・骨粗しょう症に対するPTHとアレンドロネートの併用療法の有効性を評価したRCT
・試験期間6か月以上
・介入群はPTH+アレンドロネート、対照群は別の治療
・患者;大腿骨頚部、股関節、腰椎の骨密度2SD以下のTスコア(※1)
(アブストラクトのみ、レビュー記事などは除外)
アウトカム:BMDの平均増加率(腰椎lumbar spine、大腿骨頸部femoral neck、股関節total hip、橈骨遠位端distal radius※2)
※1Tスコア:若年成人の平均BMDを0(基準値)として、標準偏差を1SDとして指標を規定した値
WHOの骨粗しょう症の定義
Tスコア≧-1 | 正常 |
Tスコア -1~-2.5 | 骨減少 |
Tスコア≦-2.5 | 骨粗しょう症 |
※2橈骨遠位端(とうこつえんいたん):手首の2本の骨の太い方(細い方は尺骨)。高齢者が転んで手をついたときに骨折しやすい部位
<各RCT(6RCT833名)のデータ>
Jadadスコア:3~4
被験者数:50~200名
平均年齢:50~70歳
[対照群の治療法]
・PTH(1-84)100μg/d
・PTH(1-34)テリパラチド20~40μg sc(皮下注射)/d
など。両群にCa剤やVD製剤を両群投与されているRCTもある
<結果>
PTH+アレンドロネート | 異質性 | |
---|---|---|
lumbar spine BMD(5RCT) | WMD = -0.83(95%CI -3.48 to 1.81) | I2=84.0% |
femoral neck BMD(5RCT) | WMD = -0.99(95%CI -2.04 to 0.07) | I2=88.7% |
total hip BMD(6RCT) | WMD = -0.06(95%CI -0.93 to 0.81) | I2=87.3% |
distal radius BMD(3RCT) | WMD = 2.45(95%CI 1.58 to 3.31 | I2=41.9% |
※Weighted mean difference(WMD):加重平均差。介入群と対照群の平均値の差。病気の発生率などのアウトカムではなく、検査の数値などのアウトカムで、測定尺度が同じ場合に用いられる。(測定尺度が違う場合はSMDを用いる)
<ディスカッション>
PTHとアレンドロネートの併用により、橈骨遠位端のBMDは増加したが、腰椎、大腿骨頚部、股関節のBMDは減少
併用療法のPTHの用量ごとのサブ解析では、PTH20μgでは腰椎のBMDが増加したが、40μgでは減少
このメタ分析では、アレンドロネートとのPTHの併用療法は、面積BMDの有意な増加はみられず、PTHとアレンドロネートの併用療法は推奨されない
対照群はすべてPTH製剤単独療法なので、PTHへのアレンドロネートの上乗せの効果の有効性を検討されています。
1つ1つのRCTが比較的小規模で、異質性も高いのですが、併用療法によるBMDの有意な増加は見られませんでした。
代用のアウトカムではありますが、併用療法を推奨するとは言えない結果です。
※この併用は10年以上前の時点で否定的だったようで、NEJMからも論文が出ています。
The effects of parathyroid hormone and alendronate alone or in combination in postmenopausal osteoporosis. - PubMed - NCBI
両薬剤の相乗効果は認められなかったという結論です。